文献詳細
臨床報告
文献概要
要約 目的:筆者らが以前に報告した右皮殻出血後の半側空間無視に伴う左同名半盲の2例では,正中より左側にも不安定な反応があった。このたび,前回の症例とは異なり,黄斑分割する同名半盲をきたした半側空間無視の2例を経験した。
症例:症例1は37歳,男性(右頭頂葉皮質下出血)。症例2は65歳,女性(右頭頂葉皮質下出血)。線分二等分試験,時計描写試験において半側空間無視のパターンを呈し,黄斑分割する左同名半盲を認めた。発症2か月後には半側空間無視は回復し,同名半盲も改善した。
考察:半側空間無視は右脳病変により左に発症する。右視野と左視野の相応する部位に同時に視覚刺激を与えた際に,一側を検出できない“視覚消去現象”がみられるが,正中をはさまない2つの指標に対しても,相対的に左側の指標が意識されにくい。左側の視野検査のときは中心を固視しつつ,より左方の指標を検索するが,相対的に左方の指標は感知されにくいため,左同名半盲様となる。半側空間無視には,正中に関係なく左側を無視する対象依存性と,正中より左側のみを無視する主体性の2パターンがある。以前の症例は,正中より左方の指標にも不安定な反応があり,対象依存性である。今回の症例は,正中より左方では全く反応がなく,主体性と思われる。
結論:半側空間無視に伴う,異なる2つのパターンの同名半盲を経験した。右脳病変後に,黄斑分割する左同名半盲,または左右の同一性が低い左同名半盲を認めたときは,半側空間無視の関与が疑われる。
症例:症例1は37歳,男性(右頭頂葉皮質下出血)。症例2は65歳,女性(右頭頂葉皮質下出血)。線分二等分試験,時計描写試験において半側空間無視のパターンを呈し,黄斑分割する左同名半盲を認めた。発症2か月後には半側空間無視は回復し,同名半盲も改善した。
考察:半側空間無視は右脳病変により左に発症する。右視野と左視野の相応する部位に同時に視覚刺激を与えた際に,一側を検出できない“視覚消去現象”がみられるが,正中をはさまない2つの指標に対しても,相対的に左側の指標が意識されにくい。左側の視野検査のときは中心を固視しつつ,より左方の指標を検索するが,相対的に左方の指標は感知されにくいため,左同名半盲様となる。半側空間無視には,正中に関係なく左側を無視する対象依存性と,正中より左側のみを無視する主体性の2パターンがある。以前の症例は,正中より左方の指標にも不安定な反応があり,対象依存性である。今回の症例は,正中より左方では全く反応がなく,主体性と思われる。
結論:半側空間無視に伴う,異なる2つのパターンの同名半盲を経験した。右脳病変後に,黄斑分割する左同名半盲,または左右の同一性が低い左同名半盲を認めたときは,半側空間無視の関与が疑われる。
参考文献
1)石合純夫:失われた空間.15-25,医学書院,東京,2009
2)田中智章,今岡慎弥,松浦一貴,他:リハビリ後に回復,代償機能を得た半側空間無視の2例.臨眼71:241-246,2017
3)Walker R, Findlay JM, Young AW, et al:Disentangling neglect and hemianopia. Neuropsychologia 29:1019-1027, 1991
4)前田真治:半側空間無視.高次脳機能研究28:214-223,2008
5)Ota H, Fujii T, Suzuki K, et al:Dissociation of body-centered and stimulus-centered representations in unilateral neglect. Neurology 57:2064-2069, 2001
6)馬場育子,仲泊 聡,北原健二:半側空間無視による黄斑分割の可能性.日視能訓練士協誌29:265-270,2001
7)石合純夫:半側空間無視の代償と回復.失語症研究16:134-142,1996
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