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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科78巻3号

2024年03月発行

文献概要

特集 第77回日本臨床眼科学会講演集[1] 原著

心因性視覚障害による調節障害に対して近用眼鏡,被写界深度延長眼鏡が有効であった15歳女子の1例

著者: 松浦一貴1 寺坂祐樹1 今岡慎弥1 宮島泰史2

所属機関: 1野島病院眼科 2伊藤光学工業株式会社

ページ範囲:P.366 - P.370

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要約 目的:心因性視覚障害による調節障害に対して近用眼鏡,被写界深度延長(EDOF)眼鏡が有効であった1例を報告する。

症例:15歳,女性。主訴は羞明,近見時の不快感。遠方視力は右1.2(矯正不能),左0.7(1.2×cyl−0.50D 180°),近方視力は右0.6(1.0+1.00D),左0.4(1.0+1.50D),動的量的視野は正常。他覚的屈折値は調節麻痺剤の使用の前後で著明な差なし。眼位,瞳孔反応に異常なし。輻湊も可能であった。その他の眼科一般検査に異常なし。9歳の頃には心因性視覚障害として大学病院眼科に通院していた。当時の視力は右(0.04),左(0.04)。求心性視野狭窄を認めた。現在,進学校での勉強,友達関係もスムースとはいえない。ケラトメータによる調節値は右3.32D,左3.64Dであり,40歳台の値であった。心因性視覚障害による調節障害と診断し,近用眼鏡(加入度は+1.25D)を処方した。外斜視はなく輻湊が良好であるためプリズムは加入していない。さらに,遠方〜中間距離の視機能改善のためにEDOF眼鏡を追加処方した。現在,日常生活にはEDOF眼鏡,学習などの作業時には近用眼鏡と使い分けている。

考按:本症例は幼少時に心因性視覚障害と診断されている。この児なりの成長によって,視力,視野は改善したが調節機能の低下は残存し,高校生になって近見作業の時間や負担が増加することで不自由が強くなった。心因性視覚障害が調節障害をきたすことはあまり周知されていないが,積極的に検査を行い解決策を提案することでquality of lifeの改善を得た。

参考文献

1)宮島泰史・加藤一寿・大沼一彦:被写界深度延長レンズExtended Depth of Field設計.視覚の科学37:142-144,2016
2)江川佳孝:色収差を利用した被写界深度拡大技術.光学40:528-533,2011
3)常盤純子・石川奈津美・山本莉奈・他:片眼性の調節痙攣が疑われた心因性視覚障害の一例.日本視能訓練士協会誌43:257-262,2014
4)梶野圭子・川村 緑・加藤純子:心因性視力障害と調節について.日本視能訓練士協会誌15:32-37,1987
5)島宗智恵・伊藤由香・長谷川明菜:調節痙攣と内斜視を呈した心因性視覚障害の1例.眼臨紀3:266-269,2010
6)野口清子・生田由美・久保田伸枝:内斜視を主訴とした調節痙攣の治験例.日本視能訓練士協会誌29:243-247,2001
7)石田博美・岡田美幸・平中裕美・他:鳥取大学における小児の心因性視覚障害の統計的研究.日本視能訓練士協会誌36:95-102,2007
8)黄野桃世・山出新一・佐藤友哉・他:心因性視覚障害の調節特性.眼臨医報86:165-169,1992
9)恒川幹子:若年者における近見障害.日本視能訓練士協会誌8:27-32,1980
10)野上豪志・佐藤 司・新井田孝裕・他:オートレフラクトメータARK-1sを用いた他覚的調節力の再現性と自覚的調節力との比較.眼臨紀13:130-133,2020

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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