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特集 第77回日本臨床眼科学会講演集[1] 原著
心因性視覚障害による調節障害に対して近用眼鏡,被写界深度延長眼鏡が有効であった15歳女子の1例
著者: 松浦一貴1 寺坂祐樹1 今岡慎弥1 宮島泰史2
所属機関: 1野島病院眼科 2伊藤光学工業株式会社
ページ範囲:P.366 - P.370
文献購入ページに移動症例:15歳,女性。主訴は羞明,近見時の不快感。遠方視力は右1.2(矯正不能),左0.7(1.2×cyl−0.50D 180°),近方視力は右0.6(1.0+1.00D),左0.4(1.0+1.50D),動的量的視野は正常。他覚的屈折値は調節麻痺剤の使用の前後で著明な差なし。眼位,瞳孔反応に異常なし。輻湊も可能であった。その他の眼科一般検査に異常なし。9歳の頃には心因性視覚障害として大学病院眼科に通院していた。当時の視力は右(0.04),左(0.04)。求心性視野狭窄を認めた。現在,進学校での勉強,友達関係もスムースとはいえない。ケラトメータによる調節値は右3.32D,左3.64Dであり,40歳台の値であった。心因性視覚障害による調節障害と診断し,近用眼鏡(加入度は+1.25D)を処方した。外斜視はなく輻湊が良好であるためプリズムは加入していない。さらに,遠方〜中間距離の視機能改善のためにEDOF眼鏡を追加処方した。現在,日常生活にはEDOF眼鏡,学習などの作業時には近用眼鏡と使い分けている。
考按:本症例は幼少時に心因性視覚障害と診断されている。この児なりの成長によって,視力,視野は改善したが調節機能の低下は残存し,高校生になって近見作業の時間や負担が増加することで不自由が強くなった。心因性視覚障害が調節障害をきたすことはあまり周知されていないが,積極的に検査を行い解決策を提案することでquality of lifeの改善を得た。
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