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特集 第77回日本臨床眼科学会講演集[3] 原著
急性片眼性眼瞼下垂と眼球運動制限を伴った抗SOX1抗体陽性の傍腫瘍性神経症候群の1例
著者: 塩谷悠斗1 今井彩乃1 鈴木悠大1 井上由貴1 大野明子1 春日憲太郎2 北園美弥子2 高森幹雄2
所属機関: 1東京都立多摩総合医療センター眼科 2東京都立多摩総合医療センター呼吸器・腫瘍内科
ページ範囲:P.615 - P.621
文献購入ページに移動症例:82歳,男性。突然の眼瞼下垂,複視により,同日当科受診した。右眼瞼下垂,右眼内転,上転障害がみられたが,瞳孔不同はなく,対光反射も保たれていた。右眼は浅前房,左眼は眼内レンズ挿入眼であるほか,眼内に特記所見はなかった。右動眼神経不全麻痺を疑い,頭部単純MRI検査を施行したが異常はみられなかった。症状に日内変動はなく,神経診察にて四肢の神経学的異常あり,精査目的で入院となった。体幹部造影CTで右肺下葉の腫瘤および右肺門・縦隔リンパ節の腫脹を指摘,気管支鏡下生検で縦隔肺門部型小細胞肺癌の診断となった。この間に右眼瞼下垂と眼球運動障害の増悪がみられた。初診から39日後に化学療法(カルボプラチン,エトポシド)を開始,7日目より右眼瞼下垂が改善した。経過からPNSが疑われ,血液検査で抗SOX1抗体陽性が判明した。化学療法6コース終了時点で自覚症状は消失,ヘス赤緑試験もほぼ正常範囲内に戻り,瞼裂高の左右差もみられなかった。
結論:抗SOX1抗体は小細胞肺癌,および自己免疫性小脳変性やランバート・イートン筋無力症候群との関連が強く,抗SOX1抗体陽性のPNSでは片眼性動眼神経麻痺の報告はない。片眼性動眼神経麻痺を疑った際には,傍腫瘍性神経症候群も鑑別に挙げる必要がある。
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