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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科78巻6号

2024年06月発行

文献概要

臨床報告

大腸癌術後にみられた皮質盲の1例

著者: 冨士本成美1 尾崎弘明1 木場亜紀子1 副島園子1 内尾英一1

所属機関: 1福岡大学医学部眼科学教室

ページ範囲:P.677 - P.682

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要約 目的:大腸癌術後患者において発症した明らかな高次脳機能障害を有さない皮質盲の1例を経験したので報告する。

症例:67歳,男性。横行結腸癌に対して腹腔鏡下結腸切除術を施行された。1か月後に視力障害を家族に指摘され,福岡大学病院眼科を紹介され受診となった。初診時視力は右(0.08),左(0.1),眼圧は右19mmHg,左16mmHgであった。前眼部および眼底には明らかな異常はなく,両眼ともに下方の非特異的な視野欠損を認めた。失語や失認,失行などの高次脳機能障害は認められなかった。頭部単純CT検査で後頭葉に低吸収域を認めたために頭部MRI検査(拡散強調画像)を施行したところ,両側後頭葉に急性期脳梗塞を認めて皮質盲と診断された。視力障害の自覚に乏しいことからアントン徴候は陽性であった。原因としてアテローム血栓性脳梗塞を認め,アスピリン内服とヘパリン持続点滴で加療された。治療後に右眼の視野欠損は軽度改善したが,視力改善はみられなかった。

結論:失語や失認などの高次機能障害を認めない稀な皮質盲を経験した。非特異的な視野異常や視力障害がみられる場合には,積極的に頭部MRI検査(拡散強調画像)を行うべきである。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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