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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科78巻6号

2024年06月発行

文献概要

臨床報告

心因性視覚障害における視覚関連基礎スキルアセスメント(WAVES)の応用:続報

著者: 唐下千寿1 松浦一貴2 今岡慎也2 井上幸次3

所属機関: 1鳥取大学医学部視覚病態学分野 2野島病院眼科 3日野病院眼科

ページ範囲:P.683 - P.691

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要約 目的:心因性視覚障害(PVD)では高次中枢における視覚認知の低下が疑われるが,一般眼科での評価は難しい。学習障害や自閉スペクトラム症では視覚の問題の頻度が高い。筆者らは,視知覚や視覚認知の評価のために開発されたWide-range Assessment of Vision-related Essential Skills(WAVES)をPVDに応用し,検討を行った。

対象と方法:WAVESは複数の図形の相互関係,位置や角度などの認知,複合的な図形の識別能力などを判定する9つの基本検査と4つの補助検査からなる。野島病院,鳥取大学医学部附属病院でPVDが疑われた15例(女13例,男2例:7〜12歳)を対象としてこのWAVESを行った。

結果:初診時には15例すべてで視知覚が低下していた。長期経過を追えた11例では,視力,視野の回復後に視知覚が改善した者が4名,視知覚の改善が不完全な者が6名であった。後に自閉スペクトラム症と診断された1例では,求心性視野狭窄およびWAVESは回復したが,経過を通じて視力が不安定であった。

結論:PVDには,①ストレスによる一過性の視知覚障害を呈した症例と,②生来よりの学習障害や視知覚障害を併せもっており中〜高学年になって問題が表面化した症例とが混在する。WAVESは,PVDなど眼科検査で評価の難しい高次視機能障害の診断の一助になりうると期待される。

参考文献

1)宇賀貴紀・藤田一郎:錯視のメカニズム.臨床科学33:348-356,1997
2)松浦一貴・寺坂祐樹・今岡慎弥・他:心因性視覚障害における視覚関連基礎スキルアセスメント(WAVES)の応用.臨眼73:429-437,2019
3)奥村智人・三浦朋子:「見る力」を育てるビジョン・アセスメントWAVESガイドブック.学研教育出版,東京,2014
4)後藤多可志・宇野 彰・春原則子・他:発達性読み書き障害児における視機能,視知覚および視覚認知機能について.音声言語医学51:38-53,2010
5)府川昭世・井梅由美子・近藤俊明・他:発達に課題をもつ子どもへのフロスティッグプログラムによる早期介入の効果.東京未来大学研究紀要7:135-146,2014
6)Eden GF, Stein JF, Wood HM et al:Differences in visuospatial judgement in reading-disabled and normal children. Percept Mot Skills 82:155-177, 1996
7)Mammarella IC, Pazzaglia F:Visual perception and memory impairments in children at risk of nonverbal learning disabilities. Child Neuropsycholo 16:564-576, 2010
8)奥村智人・若宮英司・鈴木周平・他:Reading disorder児における衝動性眼球運動の検討.脳と発達38:347-352,2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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