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特集 第77回日本臨床眼科学会講演集[5] 原著
下方視時複視を生じる甲状腺眼症に対してmini-tenotomyを施行した1例
著者: 平田万紀子12 杉田江妙子2 曽我部由香1 鈴間潔3 都村豊弘1
所属機関: 1三豊総合病院眼科 2香川県済生会病院眼科 3香川大学医学部附属病院眼科
ページ範囲:P.849 - P.854
文献購入ページに移動症例:41歳,男性。既往歴にバセドウ病があった。左眼下転障害による下方視での複視を主訴に三豊総合病院眼科を受診した。MRIで両眼上直筋,下直筋に腫大と炎症所見があり,甲状腺眼症と診断された。近見26PD左上斜視があった。ステロイドテノン囊下注射を右2回,左3回施行した。2年後,MRIの炎症所見は改善し,眼位は近見下方視8PD左上斜視で安定していたが,下方視のみ複視と頸部痛を自覚した。下方視での膜プリズム眼鏡を使用開始したが,眼痛,頸部痛,気分不良の訴えがあり,使用を中止した。手術目的にて香川県済生会病院眼科を紹介受診した。局所麻酔下で左眼上直筋mini-tenotomyを施行した。上直筋の中央1/2筋腹を切開した。近見下方視の眼位は術後11日目では8PD左上斜視で改善がなかったが,術後1年目には2PDまで改善し,下方視での複視や頸部痛の改善がみられた。また,膜プリズムの試用でさらに自覚症状の改善を認めた。
結論:下方視のみ複視のある甲状腺眼症の微小斜視の症例で,mini-tenotomyによって症状が軽減する可能性が示唆された。
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