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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科78巻7号

2024年07月発行

文献概要

特集 第77回日本臨床眼科学会講演集[5] 原著

下方視時複視を生じる甲状腺眼症に対してmini-tenotomyを施行した1例

著者: 平田万紀子12 杉田江妙子2 曽我部由香1 鈴間潔3 都村豊弘1

所属機関: 1三豊総合病院眼科 2香川県済生会病院眼科 3香川大学医学部附属病院眼科

ページ範囲:P.849 - P.854

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要約 目的:正面視で複視や眼位異常を伴わない斜視の症例は,通常,手術適応とならない。今回,正面視で正位,下方視のみ8プリズム(以下,PD)左眼上斜視を生じる甲状腺眼症に対してmini-tenotomyを施行したので,報告する。

症例:41歳,男性。既往歴にバセドウ病があった。左眼下転障害による下方視での複視を主訴に三豊総合病院眼科を受診した。MRIで両眼上直筋,下直筋に腫大と炎症所見があり,甲状腺眼症と診断された。近見26PD左上斜視があった。ステロイドテノン囊下注射を右2回,左3回施行した。2年後,MRIの炎症所見は改善し,眼位は近見下方視8PD左上斜視で安定していたが,下方視のみ複視と頸部痛を自覚した。下方視での膜プリズム眼鏡を使用開始したが,眼痛,頸部痛,気分不良の訴えがあり,使用を中止した。手術目的にて香川県済生会病院眼科を紹介受診した。局所麻酔下で左眼上直筋mini-tenotomyを施行した。上直筋の中央1/2筋腹を切開した。近見下方視の眼位は術後11日目では8PD左上斜視で改善がなかったが,術後1年目には2PDまで改善し,下方視での複視や頸部痛の改善がみられた。また,膜プリズムの試用でさらに自覚症状の改善を認めた。

結論:下方視のみ複視のある甲状腺眼症の微小斜視の症例で,mini-tenotomyによって症状が軽減する可能性が示唆された。

参考文献

1)Harrad R:Management of strabismus in thyroid eye disease. Eye(Lond) 29:234-237, 2015
2)Write KW:Mini-tenotomy procedure to correct diplopia associated with small-angle strabismus. Trans Am Ophathalmol Soc 107:97-102, 2009
3)日本肝臓学会:B型肝炎治療ガイドライン(第4版).資料3 免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン.2022
4)Nguyen TV, Park DJ, Levin L et al:Correction of restricted extraocular muscle motility in surgical management of strabismus in graves' ophthalmopathy. Ophthalmology 109:384-388, 2002
5)Yim HB, Biglan AW, Cronin TH:Graded partial tenotomy of vertical rectus muscles for treatment of hypertropia. Trans Am Ophthalmol Soc 102:169-175:discussion 175-176, 2004
6)荒川あかり・古森美和・飯森宏仁・他:術中調節糸法で下直筋後転鼻側移動術にファーデン法を併用した1例.眼臨紀14:215-219,2021
7)Jefferis JM, Raoof N, Burke JP:Prioritising downgaze alignment in the management of vertical strabismus for thyroid eye disease:principles and outcomes. Eye(Lond) 34:906-914, 2020

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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