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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科78巻7号

2024年07月発行

文献概要

特集 第77回日本臨床眼科学会講演集[5] 原著

汎網膜光凝固後で交感性眼炎の診断が困難であった1例

著者: 渕野仁志1 永田竜朗1 髙田実乃梨1 浅野利彰1 近藤寛之1

所属機関: 1産業医科大学眼科学教室

ページ範囲:P.881 - P.886

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要約 目的:汎網膜光凝固(PRP)後で交感性眼炎の診断が困難であった1例を経験したので報告する。

症例:患者は61歳,女性。全身既往歴として糖尿病,高血圧症があり,過去に両眼の糖尿病網膜症や白内障に対して手術を受けたことがあった。左眼の視力低下を自覚し近医を受診した。糖尿病黄斑浮腫と診断され,ステロイドテノン囊下注射を施行ののち経過観察とされていたが,左視力が(0.8)から(0.15)と低下したため当科を紹介受診した。

所見:初診時視力は右0.1(0.15),左0.2(0.2)で,左眼は前眼部に軽度の炎症細胞を認めた。眼底は,両眼全周性にPRP後の凝固斑を認めた。蛍光眼底造影検査では,両眼ともに早期相では蛍光漏出を認めず,後期相では蛍光漏出は認めたが,そのほかに有意な所見はなかった。光干渉断層計(OCT)検査では両眼に漿液性網膜剝離,網膜下フィブリン,脈絡膜肥厚を認めた。追加の問診で頭痛,耳鳴りを自覚していることがわかり,髄液検査では細胞増多を認めた。内眼手術歴があるため,交感性眼炎と診断し,ステロイドパルス療法を行った。治療開始後39日目の時点で左視力は(0.2)から(0.9)まで改善し,OCT検査では漿液性網膜剝離などの所見は認めなかった。

結論:PRP後であるため交感性眼炎の診断に苦慮した。PRPによる凝固斑が過剰凝固し,網膜光凝固による所見がマスクされていたためであると考えるが,これまでにPRP後で交感性眼炎の診断に苦慮した報告はなかった。

参考文献

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2)藤本 武・園田康平:自己免疫疾患と眼.Pharma Medica 26:47-51,2008
3)坪井孝太郎・中井 慶:OCTによるぶどう膜炎(脈絡膜)の評価.眼科58:1194-1199,2016
4)日本糖尿病眼学会診療ガイドライン委員会:糖尿病網膜症診療ガイドライン(第1版).日眼会誌124:955-981,2020
5)Read RW, Holland GN, Rao NA et al:Revised diagnostic criteria for Vogt-Koyanagi-Harada disease:report of an international committee on nomenclature. Am J Ophthalmol 131:647-652, 2001
6)杉田 新・奥 洋子・上田寿美子・他:糖尿病性網膜症に合併した原田病の1例.日眼紀36:882-886,1985
7)津田メイ・尾辻 剛・木村元貴・他:増殖糖尿病網膜症に原田病が合併した1例.臨眼63:1359-1363,2009
8)浅野利彰・渡部晃久・近藤寛之:網膜下に増殖性病変を生じたVogt-小柳-原田病の1例.眼科63:769-774,2021
9)石子智士・柳谷典彦・北谷智彦・他:走査レーザー検眼鏡に内蔵した微小視野計による網膜光凝固斑の感度.臨眼51:65-68,1997

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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