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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科78巻8号

2024年08月発行

文献概要

特集 第77回日本臨床眼科学会講演集[6] 原著

両眼性複視を伴った特発性眼窩筋炎に対して下直筋後転術が奏効した1例

著者: 川久保慧1 忍田栄紀1 町田繁樹1

所属機関: 1獨協医科大学埼玉医療センター眼科

ページ範囲:P.968 - P.973

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要約 目的:眼窩を中心とした原因不明の良性かつ非感染性炎症性疾患である特発性眼窩炎症のうち,外眼筋の炎症が病態と考えられるものを特発性眼窩筋炎という。今回筆者らは,慢性期の特発性眼窩筋炎に対して罹患眼の下直筋後転術が奏効した症例を経験したので報告する。

症例:75歳,男性。両眼性複視を認め,前医で頭部MRIを施行したが原因不明のため獨協医科大学埼玉医療センター眼科に初診となった。前眼部,中間透光体,眼底ともに炎症を含め特記事項はなかった。交代プリズム遮閉試験による眼位検査で左眼固視にて20△右下斜視,ヘス赤緑試験で右眼の上転障害を認めた。眼窩部MRIおよび血液検査から原因不明の特発性眼窩筋炎と診断した。治療に際して患者は副腎皮質ステロイド内服加療を希望しなかったこと,また第1眼位で上下斜視を認めたことから手術適応と判断し,右眼下直筋に対して下直筋後転術を実施した。手術直後,軽度の複視症状は残存するも眼球運動は改善しており,手術2か月後には複視症状は消失した。

結論:本症例の経過から慢性期の特発性眼窩筋炎に対して斜視手術は複視症状を改善させる可能性がある。

参考文献

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7)大野新一郎・岡本紀夫・三村 治:多彩な眼症状を示した特発性眼窩炎症の1例.日眼会誌115:142-146,2011
8)神前あい:甲状腺眼症の診療の手引き—眼科専門医からみた眼症治療の実際—.日本甲状腺学会雑誌12:62-68,2021

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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