特集 第77回日本臨床眼科学会講演集[7]
原著
梅毒性ぶどう膜炎36症例の臨床的検討
著者:
木下悠十
,
松島亮介
,
若月慶
,
野中椋太
,
菅原莉沙
,
朝蔭正樹
,
前原千紘
,
坪田欣也
,
臼井嘉彦
,
毛塚剛司
,
後藤浩
ページ範囲:P.1073 - P.1081
要約 目的:当院で経験した最近の梅毒性ぶどう膜炎の臨床像と予後を検討する。
対象と方法:過去11年間に東京医科大学病院眼科で診断された梅毒性ぶどう膜炎の患者背景,臨床像,治療と予後について,診療録をもとに後ろ向きに検討した。
結果:症例は計36例,平均年齢は41.4±11.4歳,男性が30例(83%),両眼発症例は17例(47%)で,human immunodeficiency virus(HIV)陽性例は11例(31%)であった。前眼部炎症は24例(67%),硝子体混濁は21例(58%),視神経乳頭の発赤は13例(36%)にみられた。フルオレセイン蛍光眼底撮影を施行した26例中,網膜静脈炎は23例(88%),動脈炎は19例(73%)にみられ,羊歯状の蛍光漏出も6例(23%)で確認された。黄斑浮腫は5例(19%)にみられた。急性の斑状網膜病変(ASPPC)は6例(17%)に,視神経炎の合併例は3例(8%)にみられた。治療はアモキシシリン水和物内服が25例(69%),ベンジルペニシリン点滴静注が7例(19%),ミノサイクリン塩酸塩内服が2例(6%)に行われ,ステロイド内服は5例(14%)で併用されていた。最終視力はおおむね良好で,32例(89%)が0.8以上に改善した。
結論:梅毒性ぶどう膜炎は多彩な眼所見を呈するため,定型的でないぶどう膜炎症例に対しては積極的に血清梅毒検査を行うべきである。一方,ASPPCのように特徴的な眼底所見を示す場合もある。いずれの場合も可及的早期に診断と治療を行うことによって良好な視機能の維持が期待できる。また,HIV感染併発例が多いことに留意する必要がある。