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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科78巻9号

2024年09月発行

文献概要

特集 第77回日本臨床眼科学会講演集[7] 原著

白内障術後不満に対し眼内レンズ入れ替えが奏効した視覚依存性前庭障害の1例

著者: 森井香織12 明石梓2 三浦真二2 大塚斎史2 窪谷日奈子2 徳永敬司2 長谷川実茄2 藤原りつ子2

所属機関: 1森井眼科クリニック 2あさぎり病院眼科

ページ範囲:P.1103 - P.1108

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要約 目的:白内障術後の不満症例とされたが,視覚依存性前庭障害であり,自覚屈折度数を術前の値に戻すことで前庭障害の軽減が得られた症例を経験したので報告する。

対象と方法:79歳,女性。202X年に他院で両眼白内障手術を施行後,両眼の浮遊感,見えにくさを訴えた。術後視力は右1.0(矯正不能),左1.2(矯正不能)と良好であり,術後不満症例とされ,あさぎり病院眼科を紹介受診した。浮遊感,めまいの訴えが強く,重心動揺検査を行ったところ,開眼時密集度49.46,面積ロンベルグ率2.52,速度ロンベルグ率(ラバー負荷)3.11と異常高値で,ニューラルネット判定は異常確率100%であり,視覚依存性の強い前庭障害であると判定された。術前の自覚屈折度数は両眼とも−2.0D程度で,通常は眼鏡装用していなかったことから,自覚屈折度数の変化に伴い視覚での補正が難しくなり,前庭障害が悪化したと考え,屈折度数を−2.0Dとして両眼内レンズの入れ替え手術を行った。

結果:術後屈折度数は右0.2(1.2×−2.0D()cyl−1.0D 96°),左0.2(1.2×−1.75D()cyl−0.75D 87°)で,自覚症状は著明に改善し,重心動揺検査でも開眼時密集度44.73,面積ロンベルグ率0.61,速度ロンベルグ率(ラバー負荷)1.65と改善を認めた。

結論:視覚依存性の高い前庭障害を有する患者の術後屈折度数の決定は,術前屈折度数と異なる状態にすると,前庭障害を悪化させる可能性がある。このような症例については,眼内レンズを入れ替え,屈折度数を術前に戻すことが有効であることを示唆している。

参考文献

1)時田 喬:重心動揺検査—その実際と解釈.アニマ株式会社,東京,2008
2)岩﨑真一・藤本千里:重心動揺計 ラバー負荷検査—理論と実際.アニマ株式会社,東京,2010
3)Fujimoto C, Murofushi T, Chihara Y et al:Assessment of diagnostic accuracy of foam posturography for peripheral vestibular disorders:analysis of parameters related to visual and somatosensory dependence. Clin Neurophysiol 120:1408-1414, 2009
4)Massion J, Woollacott MH:Posture and Equilibrium. In:Bronstein AM, Thomas B, Woollacott MH et al(eds):Clinical disorders of balance, posture and gait(2nd ed). 1-19, Arnord, London, 2004
5)岩﨑真一:重心動揺検査によるめまい・平衡障害の診断:ラバー負荷検査と周波数解析を用いて.Equilibrium Research 77:271-279,2018
6)平衡訓練の基準の改訂ワーキンググループ:平衡訓練/前庭リハビリテーションの基準—2021年改訂.Equilibrium Research 80:591-599,2021
7)Staab JP, Eckhardt-Henn A, Horii A et al:Diagnostic criteria for persistent postural-perceptual dizziness(PPPD):Consensus document of the committee for the Classification of Vestibular Disorders of the Bárány Society. J Vestib Res 27:191-208, 2017

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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