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特集 第77回日本臨床眼科学会講演集[7] 原著
白内障術後不満に対し眼内レンズ入れ替えが奏効した視覚依存性前庭障害の1例
著者: 森井香織12 明石梓2 三浦真二2 大塚斎史2 窪谷日奈子2 徳永敬司2 長谷川実茄2 藤原りつ子2
所属機関: 1森井眼科クリニック 2あさぎり病院眼科
ページ範囲:P.1103 - P.1108
文献購入ページに移動対象と方法:79歳,女性。202X年に他院で両眼白内障手術を施行後,両眼の浮遊感,見えにくさを訴えた。術後視力は右1.0(矯正不能),左1.2(矯正不能)と良好であり,術後不満症例とされ,あさぎり病院眼科を紹介受診した。浮遊感,めまいの訴えが強く,重心動揺検査を行ったところ,開眼時密集度49.46,面積ロンベルグ率2.52,速度ロンベルグ率(ラバー負荷)3.11と異常高値で,ニューラルネット判定は異常確率100%であり,視覚依存性の強い前庭障害であると判定された。術前の自覚屈折度数は両眼とも−2.0D程度で,通常は眼鏡装用していなかったことから,自覚屈折度数の変化に伴い視覚での補正が難しくなり,前庭障害が悪化したと考え,屈折度数を−2.0Dとして両眼内レンズの入れ替え手術を行った。
結果:術後屈折度数は右0.2(1.2×−2.0D()cyl−1.0D 96°),左0.2(1.2×−1.75D()cyl−0.75D 87°)で,自覚症状は著明に改善し,重心動揺検査でも開眼時密集度44.73,面積ロンベルグ率0.61,速度ロンベルグ率(ラバー負荷)1.65と改善を認めた。
結論:視覚依存性の高い前庭障害を有する患者の術後屈折度数の決定は,術前屈折度数と異なる状態にすると,前庭障害を悪化させる可能性がある。このような症例については,眼内レンズを入れ替え,屈折度数を術前に戻すことが有効であることを示唆している。
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