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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科78巻9号

2024年09月発行

文献概要

特集 第77回日本臨床眼科学会講演集[7] 原著

涙管通水検査と涙道内視鏡検査の一致率:上下交通の意義について

著者: 頓宮真紀1 加治優一1 松本浩一1 松本雄二郎1

所属機関: 1松本眼科

ページ範囲:P.1159 - P.1164

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要約 目的:流涙を主訴とし涙管通水検査(LST)を行うことになった症例で,同一術者によるLSTと涙道内視鏡検査(DE)所見の一致率,および上下交通の意義について検討した。

対象と方法:症例は当院で2022年10月〜2023年3月にDEを予定した患者142名178眼で,術前にLSTを,その後にDEを行い,必要なら涙管チューブ挿入を行った。涙道閉塞・狭窄部位をLSTで予測し,DEで結果を確認した。

結果:LSTで予測した閉塞・狭窄部位と,DEで確認した閉塞・狭窄部位との一致率は76.6%で,既報とほぼ同様の結果であった。閉塞・狭窄部位は涙小管・総涙小管・鼻涙管上部・鼻涙管下部に分類し,それぞれの一致率は涙小管75.9%,総涙小管87.5%,鼻涙管上部78.9%,鼻涙管下部52.4%であった。また閉塞部位の推定に有用であると予測した上下交通については,閉塞部位ごとに大きな違いを認めた。上下交通を総涙小管閉塞では100%,鼻涙管上部閉塞では97%認めた。一方,鼻涙管下部閉塞では47%,涙小管閉塞では20%に認めた。各群を比較すると,総涙小管と鼻涙管上部の比較以外は,すべての群間で有意差を認めた。

結論:LSTは,流涙の術前検査としてある程度有用である(正確性76.6%)。上下交通の有無で比較すると,総涙小管と鼻涙管下部,鼻涙管上部と下部では有意差があった。上下交通の程度を示すGradeだけでは,総涙小管閉塞と鼻涙管上部閉塞の鑑別はできないが,LSTの際,上下交通の有無と割合の両者に注目することで,より病変部位の予測の精度が上がる可能性がある。

参考文献

1)Shapira Y, Juniat V, Macri C et al:Syringing has limited reliability in differentiating nasolacrimal duct stenosis from functional delay. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol 260:3037-3042, 2022
2)Nakamura J, Kamao T, Mitani A et al:Accuracy of the lacrimal syringing test in relation to dacryocystgraphy and dacryoendoscopy. Clin Ophthalmol 17:1277-1285, 2023
3)鎌尾知行:涙道.眼科手術33:177-182,2020
4)Olver J:Colour Atlas of Lacrimal Surgery. 2-3, Butterworth-Hinemann, Oxford, 2001
5)Beigi B, Uddin JM, McMullan TFW et al:Inaccuracy of diagnosis in a cohort of patients on the waiting list for dacryocystorhinostomy when the diagnosis was made by only syringing the lacrimal system. Eur J Ophthalmol 17:485-489, 2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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