icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科8巻12号

1954年12月発行

雑誌目次

連載 眼科圖譜・7

東大式マグネツト義眼台(摘出用)手術順序

著者: 中泉行正

ページ範囲:P.1145 - P.1146

 本義眼台は通常の全理没式義眼台の適応症に使用し得る
 使用した永久磁石鋼は戦後長足の発達をとげた永久磁石界の最高峰を行く新「MK鋼」であつて其の性能は残留磁気(Br)11.000〜12500ガウス

綜説

前房隅角視診法

著者: 金田招重

ページ範囲:P.1147 - P.1155

1.前房隅角視診法の理論と実際
 角膜の屈折率を1.37とするとその臨界角は約46°となり前房隅角からでる光線は大部分角膜表面で全反射してしまう。それで普通の状態では前房隅角をみることが出来ない(第1図)。前房隅角をみるためには角膜の上に屈折率が角膜に等しい物質を密着させて前房隅角からの光線が角膜を通過しうるようにしなければならない。そのためには昔から色々な方法が考えられている。例えばわが国において水尾氏1)は眼球を下転させて下眼瞼を少しくひき,下方結膜嚢に食塩水を満して下方隅角からの光線を外にみちびいて下方隅角の観察を行つた(第2図)。対称をえらぶならばこの方法は可成り有用と考えられるが,絶えず食塩水を追加しなければならないこと,また下方隅角以外の隅角の観察がむつかしく,しかもみとめられる隅角像が明瞭でない等の欠点があるためあまり応用されていない。わが国ではこの他に小柳氏2)が一種の隅角鏡を試作されて隅角所見について簡単な記載をされた。水尾,小柳両氏のこの業績は前房隅角視診法発展の歴史上からみると初期のものに属し,その着想はすぐれていたのにその後の進展をみなかつたのは惜しい。
 現在では種々の前房隅角視診用の接眼レンズ或は接眼プリズムが作られている。例えば第3図のような接眼レンズ(Koeppe氏やTroncoso3)氏の接眼レンズはこの型に属する)が作られている。

銀海餘滴

コーチゾン製藥会社健保

著者: 中泉

ページ範囲:P.1155 - P.1155

 コーチゾンは残念ながらまだ日本では出来ない。いつれ其内に国内で製産される様になるだろうが只今は輸入よりしかたがない。普通我々の手に入る製品は米国メルク社米国アプジヨン杜,独逸シエーリング社の三社である。この製品を比較して見ると20c,c,瓶入を4000円以上で買つたのでは健保では医師が損をする事になる。東京の普通の価格3300円で買入れて使用して丁度一パイ一パイで利益にはならない。所が之を2600円で買入れて使用すると丁度健保の計算通りの利益になる。即ち厚生省は2600円として計算したものらしい。我々が上記の三社の製品を買入れて見ると2600円で買えるのは普通では独逸シエーリング杜製品である。効力については学者の実験に待つので三社同効力としての話である。又使用して見て独逸品は1/4の結膜下注射針でつかえないという利点がある粒子が他に比してこまかいらしいのである。

ナタフ氏の日本紀行(A)

ページ範囲:P.1164 - P.1164

ナタフ氏がフランスへ帰つて二つの新聞記者へ語つた記事
 数ヵ月前ナタフ博士が使節として日本へ旅立たねばならないということを聞いたのは,全く偶然の事だつた。謙遜な人物である彼は,そのことを最も親しい友人にさへも洩らさなかつた。そして彼は鉦も大鼓も鳴らさずに出発し,再びその様にして数日前帰つて来た。そして我々がチユニスの,とある街角で彼に出会つたのも又偶然のことだつた。そして彼は,今度は既に彼の旅行についてよく知つていた我々の質問から,のがれることが出来なかつた。昨日我々は,彼のアパートのベルが繰返し訪問者を告げ,電話のベルがひつきりなしに鳴りたてる中で,質問の矢を放つた。
"先ず博士,貴方は日本に何をしに行かれたのですか?"

洋書だより —Wolff—The Anamoty of the Eye and Orbit, 1954,他

ページ範囲:P.1184 - P.1184

 すでに版を重ねること4回に及ぶ本書は,第四版で画期的な改訂を行ています。著者の此の分野に於ける研究は,数多の図譜を用いて,あますところなく述べられ,その大部分は原色を用いて解説されているので,必ず読者の御期待に沿いえるものと確信しています。主な内容は次の通りです。

グラフ募集

著者: 中村康

ページ範囲:P.1196 - P.1196

 「グラフ」頁の原稿の募集をします。あまり一度に集ると,載せられなくなるので,一応其内容指示をした通信を戴きたいと思います。そして1〜2ヵ月位前に原稿を送つていただくことにします。又当方から御発表の論文について,御依頼するものもありましよう。眼で見る診断,治療で,臨床に主体を置き,1ヵ年分位を集めては,図譜とし単行本としたいと思います。掲載原稿には薄謝を呈します。

臨床実験

小白斑を併發した網膜色素變性症の1例

著者: 坂梨仁宏

ページ範囲:P.1157 - P.1159

 網膜色素変性症と白点状網膜炎との間に近似関係が存在すると論ぜられて居るが,日本に於ては夫を証明する症例が少い。私は網膜色素変性症の家系に現われた,眼底周辺部に比較的多数の小白斑と少数の黒色の色素斑を併発した幼児の一例を経験したので,此れに就て考察を加え報告しようと思う。

所謂星型白内障について

著者: 宮田典男

ページ範囲:P.1161 - P.1164

 星形或は星芒状白内障(Cataracta stellata)については古くより記載があり,Ammon,Hessなどは漠然と先天性の前極又は後極の星芒状の溷濁に対して用いて居る様であり,Vogtは細隙燈による研究などより先天縫合白内障の別名の如くその名称を使用しているのである。この様に古くは先天性のものに対してのみその名称を使用してい等る様であるが,本邦における小川,小口,桑名氏の報告は何れも後天性のものと考えられ近来星芒状溷濁のある白内障はすべて先天性,後天性,或はその部位の如何を問わずすべて星形白内障と呼ばれる様になり,その定義は非常に漠然としているのである。私は最近臨床的に所謂星形白内障と考えられる3例を経験し組織的に検索する機会を得たのでこれについて多少の考察を加えたいと思う。

中心性網膜炎に対するKallikrein (Bayer)の効果に就て

著者: 三国政吉 ,   荊木良夫

ページ範囲:P.1165 - P.1172

 中心性網膜(脈絡膜)炎(増田)は我々日常屡屡遭遇する疾患で,その臨床所見に就ては増田氏に始まり長谷川,北原氏等の詳細な観察があるし又病理組織学的所見に就ては最近生井(昭23),上岡氏(昭24)等の報告がある等従来我国で多くの研究を見る疾患である。
 然し本症治療に就ての研究は誠に寥々たるもので試みに我国現行教科書に就て見ても全身療法としてはヨード剤,サルチル酸剤の内服,カルシウム剤の注射或は灰白軟膏の塗擦,ピロカルビン発汗療法等の記載を見るに止まり,又局所療法としては高張食塩水の結膜下注射,光線保護眼鏡の装用等今尚旧態依然たる記述に接ずる有様である。又近年抗ヒスタミン剤やコーチゾンの効果に就ての記載も散見されるが,私共の経験ではその効果は殆んど疑問である。

家兎網膜に対する眼球貫通燒灼術知見補遺

著者: 加藤謙

ページ範囲:P.1173 - P.1176

 網膜剥離の裂孔が,黄斑部又はその附近に現われた症例の治療は,臨床医を悩ますものの1つであるが,その理由は,(1)手術野(眼球後極附近の鞏膜)の露出が可成り困難である上に,(2)手術野の上に得られる空間は,とかく狭隘であつてDiathermie針状電極の操作が不自由であり,又(3)黄斑部網膜の特に重要な機能を成るべく保存するためには,凝固穿刺による網膜の破壊変性の範囲を,なるべく制限し,而も所望の裂孔閉塞に成功しなければならないが,これがための穿刺部位決定は必ずしも容易でない,等の事情によるものであろう。
 このような事態を克服しようとして,眼球前方からこれを貫通(transbulbar)し,眼球内に凝固針(電極)を挿入して,直像検眼鏡で眼底を観察しながら,穿刺焼灼を行う方法が考えられ(Mamoli,1937),Dellaporta (1951)1)はこれを詳細に再検討したが,本邦では久保木—桑原(1953)2)によつて,この方法による手術成績の一端が報告せられている。

コバルトフィルターと細隙燈による角膜縁部の柵状像の観察

著者: 齋藤薫

ページ範囲:P.1177 - P.1179

 細隙燈検査によれば角膜上下縁に接する球結膜に2条の平行した色素線を伴う白色柱状構造が見られるが,フオクト(1930)は之を柵状像Palis-adenと命名した。組織学的研究に依れば,この柵状像は上皮細胞層に嵌入した結締織の索状隆起であつて,マンツ氏隆起と称されるものと一致し本態的に同一物である(樋渡,松岡氏)。之に関する文献として,外国ではブサカ,我が国では樋渡,松岡,国友氏等の生体顕微鏡的,或は組織学的業蹟があるが,最近大橋教授は紫外線に依る前眼部の詳細な所見を生体顕微鏡的に研究し,角膜縁弦月部の色素,柵状像は,フイルターUG1では燃える様なルビー色に見えるが,境界が不明瞭であり,BG1,BG12では明瞭な類紫色として認められると記載されている。余は強拡大(100×)単眼生体顕微鏡を用いて,柵状像の観察をなし,光源として普通光線の外にコバルト光線を使用して検査の正確を期した。又結膜下に0.5%メチレンブラウ溶液を注入して,色素と柵状像の関係を弱拡大(20×)双眼顕微鏡下に検索し,更に1部組織標本に就ても検討したので文献に追加したいと思う。

結膜及び毛樣体血管に関する臨床的研究(其の4)—高血圧症に於ける前毛様体血管径計測成績に就て

著者: 伊藤淸

ページ範囲:P.1181 - P.1184

 現今,高血圧症の診断,経過,予後判定上網膜血管の諸観察は臨床上欠くべからざる一手段であつて,其の業績も多数報告されている所であるが,球結膜血管の諸変化に就いては極めて其の報告も少なく特に前毛様血管径口径を数量的に観察したものは内,外を問わず大橋,堀田氏の報告を見るのみである。私は本態的高血圧症及び頭蓋内高血圧症に於ける前毛様体血管径を生体測微計測し興味ある成績を得たので茲に報告する。

臨床講義

眼科領域よりみた高血圧症—第4回四国眼科学会シンポジウム

著者: 水川孝

ページ範囲:P.1185 - P.1196

 戦時中並に終戦直後少なかつた高血圧症が最近極めて増加した様に思えます。それは死亡率の第1位を占めていた結核が卒中にその位置をゆづつた事実よりみても明らかです。吾々眼科医も高血圧症による眼病変をみる機会が多くなつて居る様ですが,昨年の日眼総会で植村教授に眼血圧に就いての特別講演を聞いてから,本問題に関心を持つ様になつたためのみとは思えません。
 漸次増加しつつある高血圧症の診断治療に眼科専門医としても熱意を向けることが必要と思います。幸本日は三国教授のこれに関聯した網膜血管径計測よりみた各種眼疾患の治療について御講演を願い,大いに役立つことと感謝しています。

私の経験

バルカン博士のゴニオトミーを見る

著者: 佐藤勉

ページ範囲:P.1197 - P.1199

日時および場所:1954年10月1日,サンフランシスコ,セント・ジヨセフ病院(St Joseph Hospital)
 ゴニオトミー(隅角切開)という手術は誰も知るように緑内縁の眼圧を下げるために隅角を切開する手術である。バルカン博士(Otto Barcan)によれば,これは先天緑内障を救う手術であつて80%が眼圧正常化の目的を達すると云う。もしこの言葉が正しいならば,従来我々が満足すべき方法を持たなかつたこの部門に対する劃期的の処置と云えよう。

談話室

色盲表に就いて

著者: 馬島鏡三

ページ範囲:P.1200 - P.1201

 色盲表については,古くはスチルリング氏表ナーゲル氏表等がある。日本に於ては明治43年頃森鴎外先生が陸軍省医務局長時代,医務局に居られた小口先生が,態々独逸からこれ等の色盲表を取り寄せられ,之を基本として改案され,平仮名記号の日本固有の色盲表を,陸軍衞生材料廠で印刷させられたのが,日本に於ける色盲表の始めである。此小口氏色盲表に就いて1言申し添えて置き度いことがある。それは従来色盲表が文字を記号として居るため,文字を解せざる者の色盲検査には,当時先生もほとほと手を焼かれた様子,そこで考えられたのが,花弁型の色標を使つて迂曲線を作り,コヨリでこれを辿らせる仮性同色表を作られたことで,其図案も面白く美術的に作られている。先生御所持の色盲表の間には,いつも此コヨリが23本宛はさんであつたことを,今も記憶して居る。此迂曲線の考案者が,小口先生であることは余り多く知られて居ないらしい。惜しむらくは,先生の色盲表は,長い年月の間,陸軍省で,例の極秘のいかめしいハンコが押され,凡そ民間人の吾々とは縁遠い存在に置かれてあつたもので,自然此色盲表も,軍関係者以外には知られて居なかつたものである。此色盲表が市販され出したのは,余程後々のことであつた様に記憶する(大正10年以後)。石原先生が色盲表を作り始められたのが大正5年頃の様子で,其の後に小口先生が色盲表を作られたように思われるのも無理のないことである。

見たり,聞いたり,喋つたり(Ⅳ)

著者: 中村康

ページ範囲:P.1202 - P.1203

40)ニユーヨーク中央公園
 〔ニユーヨーク市にて〕土一升,金一升の地価の高いと思われる賑つ市の中央に立派な公園があります。此中に植物園,動物園があります。公園の中央の池のほとりに立つて周囲を見まわすと一連の高層建築がパノラマの様にはりめぐらし其谷の中に立つている様な気がします。一角恐らく南西端と思うのですが(方角が一寸見当がつきません)自然史博動物館があります。此は大陸別の室があつて其大陸に生棲する動物,植物が剥製又乾燥されて自然のまゝに見る如く陳列されて居ます。一区劃が6〜8畳室位で数にして幾百と言う程でしよう。其外に鉱物,魚類,人類すべて同様であります。大古から今日までの人間の生活様式の変化が又示されている。之は一日みていても隅から隅まで見るわけに行かないでしよう。次に又美術館があります。之は絵に多少の心得ある人は必ず訪ねて御覽なさいと申上げたい。シカゴも良かつたけれども又ニユーヨークのものはニユーヨークで見事な絵が陳列されています。度々書くようですが入場料は無料です。

--------------------

臨床眼科 第8巻 総索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?