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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科8巻6号

1954年06月発行

綜説

トラコーマに關する實驗的研究

著者: 荒川淸二1

所属機関: 1東大伝染病研究所

ページ範囲:P.659 - P.666

文献概要

 トラコーマ(以下トと略す)は古く紀元前2500年に於て埃及の医者Pepi Ankhが明確に記載しているというから,随分古くから知られた病気らしい。わが国でも胞肉生瘡というのは明かにトであるという。又これが伝染性疾患であることも今日一般に認められている。しかしその本態的,病原的な研究については明確であるとはいゝ難く,トの定義についても大体の処は一致しても,細部になると必ずしも一致しないのが現状である。例えば後述する包括体性結膜炎とトに対する諸家の意見のごときである。けれどもその病原の正確なる把握なくしては,当否についての判定は困難であつたし,その鍵を握る病原の研究は適当な実験動物乃至はその駆使の方法が見出されていなかつたので,一応停滞していたやうにも思はれる。
 他方この病原が濾過性のウイルスであることはThygeson (1935)がト患者の材料を平均孔径0.6μのGradocol膜を通過せしめた濾液を人間に接種発病せしめたことでも明であるし,Halberstat-ter及びProwazek (1907)によつて,はじめて記載された封入体乃至その構成物とされる基本小体の研究その他の免疫学的研究などによつて,大体鼠蹊淋巴肉芽腫症(当時の伝研所長宮川教授の下で恩師矢追博士が中心となつて遂行された仕事に敬意を表し,今日鸚鵡病も含めて之等の病原はMyagawanellaと称されていることは世界周知のごとくである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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