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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科8巻7号

1954年07月発行

雑誌目次

社会保健眼科診療報酬点数表(Ⅱ)

ページ範囲:P.749 - P.749

連載 眼科圖譜・2

1.結膜デルモイド—5歳男,他

著者: 中村康

ページ範囲:P.753 - P.754

 本例は生後直ちに左眼角膜の下方に小さい淡黄色の円形の隆起物のあるのに気ずいた。其儘にして置いた処最近急に大きくななり充血を増したので診を求めて来る。
 治療は角膜及び鞏膜彎曲にそうつて剥いだら角膜に白班を残して消失した。

綜説

緑内障の治療(その2)—原発性緑内障に就て

著者: 赤木五郞

ページ範囲:P.755 - P.761

Ⅱ 手術的療法
 緑内障に対する手術的療法として種々の術式が考案されて居るが,之を大別すれば次の4種に分けられる。
 1.前房隅角の閉塞を除去する方法(虹彩切除術) 2.眼内に新しい房水排出路を作る方法(毛様体剥離術) 3.眼外に新しい房水排出路を作る方法(鞏角膜管錐術・虹彩嵌置術,虹彩捻転術) 4.房永生産を抑制する方法(毛様体「ヂアテルミー」毛様血管「ヂアテルミー」)

臨床実験

緑内障統計特に本症發病より失明に到る期間に就ての統計的觀察

著者: 魵澤甲造

ページ範囲:P.763 - P.769

 原発性緑内障に関する統計的観察に就ては19世紀末葉に於けるSchmidt Rimplerの報告以来,既に多数の報告に接している。然るに未だ手術の施否に依る遠隔的視力状態の觀察に就ては内外を通じて皆無の様に思われる。今回私は其の点に注目し本症患者の発病より初診迄の期間に於ける資料より種々の統計的觀察を試み,多少の成果を得たので茲に報告する。

緑内障の網膜電流に就て

著者: 廣瀨東一郞

ページ範囲:P.770 - P.774

 最近我が国を始め諸外国に於て,とみに緑内障問題が取上げられ,其の研究は各種様々なる方面より検討され亦論争されつゝあるも,未だ尚其の本態の究明並びに早期診断に幾多の難点を残している。
 著者も亦茲に種々なる点に興味深い問題を投じつゝある各種緑内障を,網膜活動電流研究の一端として比較検討する機会を得たので,其の実驗成績並びに結果の大略を述べたいと考える次第である。

Laurence-Moon-Biedle症候群症例追加

著者: 宮澤稔

ページ範囲:P.774 - P.776

 先にLaurence-Moon-Biedle症候群(以下LMBと略記)の1例を本誌1)に発表したが,今回再び本症候群の1患者を神経科よりの紹介により見る機会を得たのでこゝに迫加報告する。

歴史的に見た球後視束炎と軸性視束炎

著者: 桑島治三郞

ページ範囲:P.776 - P.779

1)批判に応えて
 多発硬化症と球後視束炎との問題に関連して,とくに,わが国のいわゆる軸性視神経炎について私見をのべて以来1)〜4),私の許に批判や質疑ないし注意などを含めて,色々の意見が寄せられる。その一部については返答しているが,なかには匿名もしくは無記名のものがあつて,返答しようにもできない場合もある。
 それらの主旨は一様でないが,大体つぎのような点が特に指摘されている。

無謀なる切腱術症例

著者: 廣石恂

ページ範囲:P.780 - P.783

 切腱術(鞏膜固定をしない単純切腱術)は斜視手術中,術式が簡単な良法であるとされ,従来最も屡々行われているのである。然し乍ら私は此の切腱術程無謀で危険な術式は無いと思う。その事実は後に述べる症例が率直に物語つている。此の術式がDiffenbach,.Graefe等に始まつて数十年来,手術教科書斜視篇の第1頁に掲げられ,広く行われ乍ら,何故之に対する検討が殆ど加えられなかつたのであろうか。偶然にも等しい手加減によつて斜視が矯正出来ると得々としていた事は寧ろナンセンスである。然し此の術式の適応を厳密に検討し,侵襲を加うべき筋と侵襲量を術前に決定する為に我々に与えられていた手段は余りにも貧弱であつたのである。
 私は最近この全く無謀なる切腱術の結果招来した数例の不幸な患者を経驗し,私の考案したEle-ctro-oculogram (眼球電位図E.O.G.)を用いて其の病変の状態を解明し得たので,之等に就て簡単に記し,并せて切腱術の適応乃至手術的価値に対し聊か私見を述べたいと思う。(日眼57巻,2号及び7号参照)。

瞳孔の形に就いて—その1 蛙

著者: 山地良一

ページ範囲:P.783 - P.787

 色々な動物の眼を見ますと,瞳孔の形が様々なのに一驚します。円形,楕円形に始まつて,矩形正方形,不正形と仲々種類が多い様です。之等の種々な形は眼と云う光学系にどんな影響を持つているのでしようか。或いは合目的性の立場からは論じられない様なものもあるでしよう。
 或る夏の夕方に水田の辺りを散歩している時,眼に止つたのは殿様蛙でした。農村に育つた私は幼時の夏の幾日かを蛙を友達にして遊んだ思い出を持つておりますが,蛙遊びの中で幾度繰返しても飽きなかつたのは「蛙釣り」と云う遊びでした。この遊びは前に神谷氏が紹介しておられますから,長い草の柄の先につけた草の実を動かせて蛙がそれに跳びついて喰べる所を釣り上げる遊びだと云う事だけを申し上げましよう。気紛れにもこの「蛙釣り」を始めた私はやがて次の様な事に気がつきました。それは,蛙の跳びついてくる頻度が全くの偶然ではなくて,草の実を動かす方向,草の実の蛙の眼からの距離等に深い関係を持つている事なのです。だんだん詳しく調べておりますとそれが蛙の瞳孔の形とも関係のある事がわかつて来ましたので,次にお話し致したいと思います。

結膜炎に対するサイアジン點眼液の應用

著者: 靑柳恒之

ページ範囲:P.787 - P.789

 サルフア剤の各種結膜炎に対する治療成績は,此処20年来続々と発表され枚挙に暇ない程であり,各々良結果であつたと報告されているが,近時稍々其の影が,薄すれて来たかの如き感を与える。著者は最近国内に於いて製造されたサルフアイソキサゾール点眼液を少数例ではあるが各種結膜炎に使用して見たので,以下其の成績について述べて見たい。

眼外傷の統計(第I報)

著者: 筧香代子 ,   古橋文子 ,   坂靜代

ページ範囲:P.791 - P.794

 眼外傷の統計に就ては各教室,工場等に於て種種の発表があるが,私達は昭和21年から25年迄の5年間の眼外傷の統計学的觀察をしたので報告する。

Erythromycinによるトラコーマ治療

著者: 花房淳

ページ範囲:P.795 - P.796

 エリスロマイシン Erythromycin (Ilotycin,Erythrocin)は1952年Mc Guire1)等によつて最初に報告された抗生物質で,broad spectrumantibioticの1つである。
 前回私共は少数例の急性期トラコーマの実験において,本抗生物質がトラコーマ病原体に対して有効であり,且つ実用的効果があるということを報告した2)。鴻等は1.0%アイロタイシン軟膏を1日1-3回点入するとP氏小体は3〜5日で消失し,TrⅠには著効,TrⅡ及びTrⅢにも有効であると述べ3),又401人のトラコーマ患者の集団治療(1.0%軟膏,1日1〜2回,2〜5週間)を行い,67%の治癒率をえたと報告している4)

伊那地方に於ける虹彩紋理型の研究特に紋理型の遺傳に就て

著者: 山崎尚忠

ページ範囲:P.797 - P.806

 虹彩は胎生学上,外及び中胚葉に由来し,両者の完全にして平衡なる発育によつて初めて完成される。即ち前者より色素上皮層散大筋及び括約筋等が,後者より瞳孔膜,及び虹彩実質が形成される。従つて虹彩表面に於ける分割輪,窩孔及び皺嚢等の形態解剖学的性状は胎生期に於ける瞳孔膜の発育状態又は退化の時期並びに程度等により,個人的又は人種的に千差万別の様相を呈するものと予想されるにも拘らず,之に関する研究業績は実に微々たるもので,白色人種に関してはHesch,Weininger,Frank,Eskehund,Schwangerle,及びFreerksen,有色人種に就ては僅かに権,早野福島,長村等の報告があるのみである。
 又虹彩の色に就ては,岡本,小口,福島及び城大解剖吉野等の報告があるが,何れも予め準備された色紙との比較によるものである。最近教室の邸林淵氏及び膝田氏は日本人の虹彩紋理の分類に関する新らしい便利な方式を発表して種々な成績をあげ,藤田及び小宮両氏は,日本人虹彩の色調に就て研究し,8歳以上のものでは大略5968Aを主波長となす濁褐色である事を見出して居る。又,瞳孔縁より発する瞳孔膜遺残に就ても,邱ならびに藤田氏等は新らしい見解を発表した。

銀海餘滴

過剰酸素供給早産児に発生する盲

著者: 森島生

ページ範囲:P.769 - P.769

 早産児の生命を救うため用いられる酸素が過剰に供給されると早産児に水晶体後面繊維膜増成(Retrolentalfilroplasia)の根源となり,それが幼児の盲の第一の原因となる。併し,之等の幼児に対する正常視力は生後最初の2週間,孵竈生活を為す間,嚴重に制限した酸素濃度によつて確保されることが出來た。之は酸素欠乏で死せんとしつつある幼児の危険を救う手段の内の注意すべき事柄である。
 此は紐育市にあるBellevue病院早産児部でDr.Lan-wan, Dr.Guy, Dr.Jancis氏等の研究の上本年月下旬報告されたものである。幼児としては2〜4磅の早産児で合計研例について約一カ年間に亙り研究されたのである高い濃度の酸素を与えられた36名につき其内8名は治療し得られる両眼盲となり,6名は治療し得られる盲となり,2名は片眼に有用な視力を有していた。残り28名群は呼吸困難が起つた時にのみ酸素供給を行い,此群には一名も眼疾患を起さなかつた。以上の幼児たちは殆んど同じ孵竈で処方も同じくそれにVitamin療法を受け酸素供給のみ前記の通り実施した。

バラッケ眼科研究所1954年度懸賞論文募集規定

著者: 井上正澄

ページ範囲:P.789 - P.789

 1.応募資格は40歳以下の研究者で眼科專門論文を募集する。応募者の国籍に制限なく演題の範囲を制限せず。
 2.論文は1954年11月30日までに到着のこと。日本よりは航空便1週間位,普通便1ヵ月位を要する。

コーチゾンの使用範囲拡大中央医療協議会で決定

ページ範囲:P.806 - P.806

 第13回中央社会保険医療協議会は4月30日厚生省で総会を開催されて,かねてから懸案の社会保険結核予防法における結核の治療指針,社会保険における抗生物質療法の基準,診療報酬点数の一部改正(5月27日の同協議会総会に決定し別項参照)等について審議された結果,診療報酬の一部改正を除く下記の案件は,それぞれ採択され,直ちに厚生大臣に答申され,そのまま裁決されたが,これが実施期日については,診療報酬点数の一都改正と併せ審議し決定されることとなつた。大凡7月1日より実施の運びである。
1.社会保険結核予防法における結核治療指針の一部改正について

バックナンバーのお知らせ

ページ範囲:P.808 - P.808

 只今(6月10日調)下記の巻・号が在庫しています。御希望の方はどうぞ御申込み下さい。

国際眼科学会

著者: 中村文平

ページ範囲:P.815 - P.815

 第17回国際眼科学会が今年9月9日から11日までカナダのモントレールで,続いて9月12日から17日まで米国ニューヨークで開催せられる。
 国際眼科学会は,古くはスイスのルツエルン,伊太利のナポリで開かれた事があるが,近年では第13回が和蘭のアムステルダムで,第14回がスペインのマドリッドで,第15回が埃及のカイロで,第16回が英国ロンドンで,開かれ,今度の第17回が上述の様にモントレールとニューヨークで開かれる。

臨床講義

Horner症候群(Horner's syndrome) H.sches Syndrom (又はH.scher Symptomenkomplex)に就て(眼窩尖端骨折に因るH.症候群)

著者: 浅山亮二

ページ範囲:P.807 - P.808

 交感神経の瞳孔支配,ひいては交感神経の眼球支配を如実に物語る材料として此症候群の症例を紹介する。之は,又H.眼瞳孔症候群H.S' oculo-pupillary Syndrome;H.sches oculo-pupillareSyndrom又は,Horner-Claude-Bernard症候群とも呼ぶ。頸部交感神経麻痺に由来する症候群である。
 先ず症例に就いて述べる。

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仙台に於ける第58回日眼総会に列して

著者: 今泉龜撤

ページ範囲:P.810 - P.815

まえがき
 第58回日眼総会は春足遲い陸奧のこととて,例年より1ヵ月遅れた5月3,4,5日の3日間清流広瀬川を距てて新緑の青葉城を仰ぐ新装完備した仙台市公会堂で開催された。
 思えば仙台は筆者の半生を過した土地である。戦災で潰滅的打撃を受けて8年,漸く東北の古都の貫録をとりもどして来た仙台に,晴れの日眼総会を迎えたことは正しく感無量である。しかし惜しまれてならないのは,この盛会を見ずして去る2月25日忽然として逝去された小柳名譽教授のことである。この機会に出来得れば一目でもお目にかかりたいと思われた老会員は,嘸残念がられたことと思う。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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