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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科9巻11号

1955年11月発行

雑誌目次

図譜

黄斑部疾患図譜(5)

ページ範囲:P.1283 - P.1284

解説
黄斑部変性
 黄斑部変性に色々のものがある。
1)蜂巣状黄斑変性
2)家族性黄斑変性

連載 眼科図譜・16

涙嚢部疾患

著者: 中村康

ページ範囲:P.1285 - P.1286

 涙嚢疾患は通涙液の障碍が起るので,主訴は流涙症である。此時の疾患は涙道のアトニー,壁腫張,涙道の狭窄,涙道の閉鎖が主である。アトニー及壁腫張の時は,通水は良いが涙液が昇道によく流出さないので,涙嚢部を圧追すると水溶液,粘液様液が小涙管から少し許り流れ出る。涙道が閉鎖しても,これが涙液で満たされて,水腫となる事は尠いものである。所謂慢性涙嚢炎と言うのは,涙嚢に蓄つた涙液の中に発炎菌の培養されたもので,涙嚢は外観上膨隆が見受けられる様に膨れているものでない。けれども稀に膨れて,之を押すと,一部小涙点から徐々に排膿し,縮小する。けれども此涙嚢部の腫瘤は,すべて涙嚢水腫かと言うとそうではない。稀ではあるが,涙嚢部の結核,梅毒であることがある。結核性潰瘍の場含,其処に分泌物があつた場合,螢光顕微鏡で分泌物中の結核菌検査を行うと,チール・ネルセン氏法に比較し,遙かに容易に結核菌を発見する。

綜説

Aqueous Veinの研究—第4篇 角膜房水靜脈に就いて

著者: 呉基福

ページ範囲:P.1287 - P.1291

緒言
 Schlemm氏管から直接又は間接に派出され,鞏膜を貫ぬいて上鞏膜にあらわれる静脈にして其の管腔内に房水流を含むAscher氏のAqueousVeinは房水の排出に最も重要なる経路をなすものである。しかし房水の排出経路はAscher氏のAqueous Veinのみではない事がWeinstein (1950)氏等によつて主張されて来た。此のciliaryvenous plexusからの可能的房水排出に就いては別篇に於て詳論する積りであるが正常であれ病的であれ此等以外に尚房水の排出経路はないものであろうかというのが本研究の対象である。
 正常角膜内には房水静脈が存在していない。しかし一度角膜に炎症が起り角膜に血管が新生された場合には角膜内に房水静脈が発見される。本篇はAscher氏の房水静脈と全然関係のない角膜房水静脈の形態及び其の発生に就いて述べる積りである。

臨床実験

結核性視神経乳頭炎の一例

著者: 陳昆曉

ページ範囲:P.1293 - P.1294

緒論
 結核性視神経乳頭炎は比較的稀な疾患である。著者は臨床上検眼鏡及其治療経過から見て結核性視神経乳頭炎と診断した一例を茲に報告する。

結膜炎,トラコーマのクロロマイセチン軟膏使用成績

著者: 岩下正晃

ページ範囲:P.1294 - P.1297

 ペニシリン,テラマイシン,オーレオマイシン等一連の抗生物質が結膜炎,トラコーマに効果ある事は衆知の所である。クロロマイセチンについては,その抗菌スペクトルが広範囲で,スピロヘータよりグラム陽性,陰性,菌,リケツチア,比較的大型のビールス迄及び細菌性結膜炎は勿論,トラコーマにも有効である事は早くより認められているのであるが,その使用効果については細菌性結膜炎へはともかく,トラコーマに対しては一様ではない。しかしながら適当の濃度を充分に使用すればオーレオマイシン,テラマイシン同様有効である事を新潟大学,三国教授等は報告している。
 私は今回三共製藥の好意により1%眼科用クロロマイセチン軟膏を使用する機会を得たので,教室の外来患者の内,結膜炎18例,トラコーマ13例,流行性角結膜炎3例,につき実験した成績を臨床的に他覚的処見の推移及び分泌像の推移につき報告する。

腸チフスワクチン予防接種後に現われた特発性葡萄膜炎(原田型)と考えられる治験症例

著者: 松山道郞 ,   上田富美惠

ページ範囲:P.1297 - P.1299

 腸チフスワクチン接種後に出現する眼疾患に就ては,眼瞼ヘルペス,角膜ヘルペス,虹彩毛様体炎,全動眼神経麻痺,調節麻痺,その他の報告が見られ萄葡膜炎の例は倉知氏の1例あるのみであるが吾々は最近本ワクチン接種後2回目に突発した高度の葡萄膜炎の症例を経験し種々治療の結果認むべき効果を見たのでここに報告し御批判を受けたいと思う。

有害光線の輻輳機に及ぼす影響

著者: 佐伯讓

ページ範囲:P.1300 - P.1304

緒言及目的
有害光線のうち赤外線及紫外線の眼に及ぼす影響については紫外線は眼瞼,皮膚,結膜,角膜,水晶体等に依つて吸收され,眼底に達する光は可視光と赤外線である。水晶体は最も強く紫外線を吸收する能力がありVogtに依ると赤外線は75〜80%は虹彩に2%は硝子体前面に,7%は網膜に達すると云う。水晶体にて吸收される赤外線の量は角膜,虹彩を透過せるものの3%であると云われる。又紫外線については所謂電気性眼炎,赤外線については赤外線白内障が知られているが,眼機能的方面については富田氏が赤外線に依る屈折性遠視性変状及調節力減退を招来すると述べて居られるが輻綾機能方面については報告が少く,中村教授は今回有害光線被曝者の比較輻輳力の検討を命ぜられた。而してその目的を要約すれば主として
1)有害光線被曝前後の影響如何

瞼疾患のクロロフイール軟膏による治療

著者: 上崎博

ページ範囲:P.1304 - P.1305

 眼瞼疾患の治療については,既に幾多の報告があり,最近に於ても,マグナマイシン1),ビタミンB2軟膏2)4),その他3)の文献が見られる。而るに,猶治癒し難い難疾もある。私は最近クロゝフイール軟膏(サクロフィール)を併用し,効ありと思はれたので報告する。この軟膏は銅クロゝフイリンNaで,残念乍ら抗菌作用は少いが,この点については,三村氏はクロゝフィールZnにすると抗菌作用が強くなるという。軟膏を結膜嚢内に点入すると一時的に強い刺戟があるが,他に副作用を認めない。

Glaukomflecken(Cataracta disserninata Subepithelialis glaucomatosa acuta)の4例

著者: 曲直部正夫

ページ範囲:P.1306 - P.1309

 Vogtが1923年その一例を始めて経験し,1930年Glaukomflecken詳言するとCataracta disse-minata subepithelialis glaucomatosa acutaなる名称でZurichの学会に発表した所の新しい水晶体溷濁は其の性質上興味あるものとして識者に認められその存在は最早や確固たるものとなつて来た。然し今日迄それに関連する報告は西洋では僅か数人の報告があるのみで我国に於ても鹿野信一(昭18),三宅寅一(昭28)の報告があるに止つている。
 私は昭和21年斯かる例に始めて遭遇した。当時は,其の何物であるか了解に苦しみ或は手術の結果惹起された水晶体の偶発的傷害ではないかと不安に駆られた事があつた。

再び高血圧性眼底病変としての所謂「乳頭浮腫」の語義に就て

著者: 加藤謙

ページ範囲:P.1310 - P.1315

 曩に,私は高血圧性疾患にみられる所謂「乳頭浮腫」に就て記し(臨眼,9巻3号),papilledemaの語義が曖昧であつて,Choked disk (又はdisc)と全く同一と解すべきか否かは疑問であり,又従来本邦で用いられてきた欝血乳頭(欝積乳頭)と,近時屡々用いられる「乳頭浮腫」との関係も,これを全く同一の語義をもつものと見做してよいか否かは疑問であり,少しく検討を加えた方がよいのではないかとの疑義を述べ,両者を区別するとすれば,その差異を形態的変化の程度に求めた方が便利ではなかろうかとの見解を記した。
 このような疑義と見解に対して,私は大要次のような批判を受けた。

眼瞼内反症の超短波凝固手術に就いて

著者: 鈴木志賀子

ページ範囲:P.1316 - P.1318

はしがき
 眼瞼内反症の矯正手術として眼瞼又は瞼板前面をパクラン焼灼又は電気焼灼する方法は,已に古くCzermak,菅沼等の記載するところであるが,近来のヂアテルミー電気凝固手術でも之が応用される様になつた。即ち外国ではHartmann (1942)が始めて内反応に用い更に外反症にも応用している。Safar (1953)のヂアテルミー手術書によると下眼瞼の手術では皮膚を針状極又は球状電極で凝固して有効とされ,パクランや電気焼灼手術に代つて用いられるという。然し本邦では眼瞼内反症に対する簡易凝固手術は大橋教授によつて記載されている外には殆んど報告がない。
 大橋教授はヂアテルミー及び超短波の両方で行つているが,電極は若い人では一般に球状電極よりも針状電極の方が瘢痕が少なくてよいと云い,その術式も始めは超短波凝固を瞼縁に沿い一列に行つたが,その後の改良式では三列の密集凝固がよいと言う。

新局所麻酔剤Xylocaineの使用経験—第1篇 眼科手術領域に於ける応用

著者: 浅山亮二 ,   坂上英 ,   宮崎栄一

ページ範囲:P.1318 - P.1328

1.緒言
 Xylocaineは1943年ストックホルム大学有機化学研究所に於てLofgrenによつて初めて合成され,その藥理学的研究並びに臨床試験は,本研究の協力者である Lindquistが自らの身体を実験に供した英雄的行為1)によつて遂行され,1946年新しい局所麻酸藥として医学界に紹介されたのである。
 Xylocaineの藥理及び毒性についての基礎的研究はGoldberg (1947)によつて行われ,更に最初の広汎な臨床試験成績は1948年Gordhによつて発表され,以来一般外科,歯科,産婦人科,耳鼻咽喉科,泌尿器科領域等に於て本剤の優秀性を認める論文が相次いで発表されるようになり,眼科領域に於いても,Bjork2)(1950),M.Doret3)(1950),D.A.Russell & J.S.Guyton4)(1954)等によつてXylocaineの使用経験が報告され,何れもその局所麻酔剤としてProcaineを凌駕する優秀な特性を有していることを認め,又表面麻酔剤としても充分応用し得るものであることを述べている。

臨床講義

表層角膜炎の治療(1)—第5回四国眼科学会シンポジウム

著者: 水川孝

ページ範囲:P.1329 - P.1335

1.分類
 先ず,表層角膜炎とは如何なるものをさすかから論ぜねばなりませんが,Kurzes Handbuch d.Ophthalmogieに於て,F.Schieck教授はDie Epithelerkrankungender Corneaの章に於て,
1) Keratits punctata Superficialis (Fuchs)

私の経験

表層角膜炎の治療に就て

著者: 入野田公穗

ページ範囲:P.1337 - P.1340

 表層角膜炎と一般に称せられて居るものには二型あり即ち瀰蔓性表層角膜炎と点状表層角膜炎であるが執れもその罹患部は角膜上皮層及びボーマン氏膜,角膜実質前層に限られる。しかし乍らその原因は多種で,瀰蔓性表層角膜炎は眼瞼疾患,急性並に慢性結膜炎,トラコーマ,鞏膜炎,虹彩毛様体炎等と共に併発することも多いが,それのみが単独に発症することも尠くない。又点状表層角膜炎は結膜炎に併発することが屡々で,微生物特にビールス感染と関連性を持つことが多いのは周知の事である。
 而して之等の疾患に就ては,その原因に対する治療が根本的なことであり,多種類の原因による症例箇々が夫々その治療法を異にするのは勿論であるが,従来之等疾患の治療法は区々で一定せるものが無かつた。

硬性白内障手術後の視力の良否

著者: 瀨戸糾

ページ範囲:P.1341 - P.1341

 弁状摘出後の視力は角膜縁の切り口の状況が最も関係あるものと私は思う。本問題に就ては諸兄にも種々意見もあらんも,硬性白内障の手術では,角膜弁切開創が,左右両側の刺入点と刺出点とが対照的であるか,非対照的であるか,又それより上方に切り上ぐる切創が正しく一線に切れて居るか,或はぎざぎざに切れているかにあると思う。角膜切開弁創が対照的である為めには,先づ第一に刺入点と刺出点とが対照的である事が最も大切な重要な条件である。刺入点と刺出点とが不幸にも対照的にあらずとせんか,夫れより作らるゝ角膜弁切開創縁を左右に於て対照的に取り戻さんとして,線状刀の匁の方向を一寸変更するも及ばず必ず非対照的となるものである。第二には成書が教うるが如くして,角膜弁の切開は刀が往復或は往復半で完了す可きである。斯かる切創がより一線に近く切れているから視力もよく,往復を重ねる程視力は悪しかるべし。先輩中村辰之助博士は私の医局時代「老人性白内障も1.0の視力を得らるゝものである」と云われた事がある。眼球中の水晶体のみが病的である場合,此の水晶体を上手に摘出すれば,凸鏡装用で1.2〜1.5の視力を得ても不思議でない筈であるに思い付き,爾来私は硬性白内障の手術毎に上述の第一,第二の諸点に最大の注意を配りつゝ回を重ねる内に0.9〜1.2位の視力を得るものもあるに至れり。尤も硬性白内障手術後の視力を左右する条件には種々ある。

談話室

診療「メモ」より

著者: 佐藤邇

ページ範囲:P.1343 - P.1344

 開業をして居ると,時々変つた病気や現象を認めるが,暇,設備等の関係から之を深く調べる事が出来ない。何かの参考になるかと思つて書いて見たが,文献を調べる余暇が無いので,記載するに値いせぬものかも知れぬ。

集談会物語り

神奈川眼科集談会

著者: 荻野紀重

ページ範囲:P.1345 - P.1345

1.歴史
 本会のそもそもの始りは県下の熱心な開業諸家,特に今井良平(小田原),内海栄(川崎),佐藤邇(横浜),福田恒一(鶴見)諸氏及び大熊教授(横浜医大)が中心になつて創立されたものである。
 第1回は昭和27年9月2旧,横浜医大に於て開催され以後年4回の予定で行われている。地理的に見て県下各地から参集するには横浜が好都合でもあり,又此地域に多数の会員が集中している関係もあり以後も引続き横浜医大に於て会場を引受けて開かれている。

日本トラホーム予防協会会誌

法令

ページ範囲:P.1347 - P.1351

「トラホーム」子防法
 曩きに公布せられたる「トラホーム」予防法は愈々勅令第413号を以て大正8年9月1目より之を施行する旨去月23日官報を以て公布せられ,又同時に内務省令第13号を以て「トラホーム」予防法施行規則も同日より施行する旨発布せられたり。

三井助教授のトラコーマ急性発病説の実際値と理論値に対する疑義

著者: 西田富美

ページ範囲:P.1351 - P.1353

 先づ三井博士の採られたであろうと考えられる計算方法で,三井博士の数値を計算すると次のようになる。(4〔週)+8(週))÷2=6週=1.5ヵ月…大人の平均急性期(1+3)÷2=2=0.5………小児の平均急性期1.5/600=1/400,0.5/600=1/1200,1/400>1/600>1/1200,

テトラサイクリン油性懸濁液点眼によるトラコーマ治療及びハイドロコルチソン併用の効果

著者: 三井幸彦 ,   山下喜一 ,   花房淳 ,   蓑田良司 ,   鈴木昭久 ,   緖方鐘

ページ範囲:P.1353 - P.1356

 抗生物質油懸濁液によるトラコーマ治療に就ては,田野1),萩原・杉浦2,3),井上4),筒井5)の等によつて研究され軟膏に劣らない効果が期待されている。
 トラコーマ治療にコルチソン類を抗生物質と併用することに対しては,,生井はポンヌスの治療に良効を認めたという。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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