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連載 眼科図譜・16
涙嚢部疾患
著者: 中村康1
所属機関: 1日本医科大学眼科教室
ページ範囲:P.1285 - P.1286
文献購入ページに移動 涙嚢疾患は通涙液の障碍が起るので,主訴は流涙症である。此時の疾患は涙道のアトニー,壁腫張,涙道の狭窄,涙道の閉鎖が主である。アトニー及壁腫張の時は,通水は良いが涙液が昇道によく流出さないので,涙嚢部を圧追すると水溶液,粘液様液が小涙管から少し許り流れ出る。涙道が閉鎖しても,これが涙液で満たされて,水腫となる事は尠いものである。所謂慢性涙嚢炎と言うのは,涙嚢に蓄つた涙液の中に発炎菌の培養されたもので,涙嚢は外観上膨隆が見受けられる様に膨れているものでない。けれども稀に膨れて,之を押すと,一部小涙点から徐々に排膿し,縮小する。けれども此涙嚢部の腫瘤は,すべて涙嚢水腫かと言うとそうではない。稀ではあるが,涙嚢部の結核,梅毒であることがある。結核性潰瘍の場含,其処に分泌物があつた場合,螢光顕微鏡で分泌物中の結核菌検査を行うと,チール・ネルセン氏法に比較し,遙かに容易に結核菌を発見する。
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