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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科9巻12号

1955年12月発行

雑誌目次

附録

眼科健保点数早見表

ページ範囲:P.1355 - P.1355

図譜

黄斑部疾患図譜(6)

著者: 中村康

ページ範囲:P.1359 - P.1360

解説
ⅩⅥ)黄斑星芒状白斑
黄斑部に現われる白斑は イ)黄斑部星芒状白斑 ロ)黄斑部不規則白斑 ハ)黄斑部輪状白斑 を大別する。従来星芒状白斑は蛋白尿性網膜炎(現在の高血圧性網膜症)と診断する目標とされたが,類似の白斑は色々な場合に生ずる。即ち神経再発症,乳頭炎,網膜剥離,網膜出血網膜結核等に見られる所見であるから,直ぐに高血圧性網膜症と即断してはいけない。全身の症状を参考にすることが大切である。

連載 眼科図譜・17

眼窩腫瘍

著者: 中村瘍

ページ範囲:P.1361 - P.1362

眼窩の腫瘍には 1)原発性眼窩腫瘍 2)転移性眼窩腫瘍 3)周囲組織より眼窩を侵襲して来た眼窩腫瘍とがある。何れも眼球突出を主体とし炎衝症状を伴わない。眼窩内に於ける新生物の所在によつて眼球突出の方向及び眼球運動方向に制限が現われる。

綜説

小児全身麻酔に於ける根本問題に就いて

著者: 玉井達二

ページ範囲:P.1363 - P.1368

はしがき
 眼科領域における全身麻酔に関し,整形外科医の私が筆を取る事は随分変つている様であるが,眼科領域でも整形外科領域でも,全身麻酔が小児に非常に多く用いられ,小児の全身麻酔に関する研究が必要になつている点で,私がこの事を述べても,あながち妙ではないと考え筆を取つたのである。
 扨,小児の全身麻酔を施行した事のある人々は,成人の場合に比して危険なものであるという気持を持つて居ると思う。そして或る人々は極力これを避けんとして,小児に精神的,肉体的苦痛を強制している。ところが一方では非常に簡単に考えて,何等の麻酔に必要な臨床検査,処置を行わずにこれを行つている人々がある。これらの人々は何れも偏し過ぎると云わねばならない。

臨床実験

唾液腺内分泌ホルモンの著効を奏した 眼—咽頭—口内乾燥症

著者: 小原博亨

ページ範囲:P.1369 - P.1372

1.緒論
 眼—咽頭—口内乾燥症(Gougerot-Sjogren Syn-drom)は眼科領域に於てはKeratoconjunktivitisSiccaとして現われ,尚,其の本態は明かで無く,従つて,其の療法も本症の原因に対する考え方により種々の方法が有るが,私は最近,唾液腺内分泌ホルモンparotinを使用してKeratoconjun-ctivitis Siccaのみならず,亦,咽頭—口内乾燥症にも著効を收めたので報告する。

所謂授乳弱視に就いて

著者: 酒谷信一 ,   多木喬郞

ページ範囲:P.1372 - P.1376

緒言
 吾国の眼科史を嘗ては脚気弱視をとり巻いて東京大学河本・島薗教授一派と京都大学市川教授船川氏その他の間に華麗な論争の色彩で飾つた吾国特有の慢性球後視神経炎の問題は,その本態が確証されないまゝに今尚種々の混迷と誤解の影を引いている。授乳弱視に関しても,その本態的概念の確立を目ざして井街謙氏が"授乳性球外視神経炎"と云う名称を提唱した事を考うる時1),授乳弱視について追究する場合も自らこの慢性球後視神経炎の問題に突き当るのである。飜つて,井街譲教授が慢性球後視神経炎の本態に蜘網膜炎の存在を重要なものとした事より考えて2),授乳弱視に於ても蜘網膜炎の存在を同様に想定せられるのであつたが,当教室に於て難治な経過を辿つた授乳弱視と考えられる2症例に開頭術を施行したところ,癒着性蜘網膜炎を認め術後急速な症状の好転をみたのである。この事は,所謂授乳弱視の本態に蜘網膜炎の存在するものゝある事を確証するもので新知見として此処に報告する。

栃木県に於ける高度視力障碍の原因別調査成績

著者: 室本亀吉

ページ範囲:P.1377 - P.1382

Ⅰ.緒言
 人生最大の不幸の一つである失明を防止することは,個人的にも社会的にも緊要な問題であるが,此の為めには失明原因に就ての基礎的の資料を必要とする。従来失明の原因に関する報告は屡屡発表されているが,此等の報告は往々にして症状別或は原因と症状とを混合した分類によつている為めに真の原因を統計的に把握することが困難である場合が多い。余は此の見地から,最近5年間に栃木県に於て,自ら検診した失明及びその前過程たる高度視力障碍眼を原因別に分類し,その性別,視力障碍の程度,障碍年齢及び更に同一原因による両眼障碍等に就て調査したので,その成績を報告する次第である。
 本調査は視力(矯正し得るものは矯正視力)0.1未満で,症状が固定し,視力改良の見込なき男824名,1,341眼,女550名,918眼,計1,374名,2259眼を対象とした。両眼視力障碍者でもその1眼が0.1以上の視力を保有する場合には他眼のみを対象とし,又手術其の他の治療によつて0.1以上の視力を望み得る眼,例えば老人性白内障の如きは本調査より除外したことは勿論である。又量的視力測定不能の乳幼児では光覚の存する程度以下の例を撰んだ。

クロカメムシによる眼障碍に就いて

著者: 山地良一

ページ範囲:P.1382 - P.1386

緒言
 稲の害虫クロカメムシは,その体液が眼に入ると,かなり強い自覚症状と共に,眼瞼,結膜,角膜を侵襲して障碍を与える為に,屡々注目されて来たものである。
 文献を繙いてみると,樋渡氏の2例を最初として,森氏の1例,浜崎氏の3例,岡宗,安岡両氏の4例,大石氏の2例,唐木氏の8例,大場氏の5例(中2例は大石氏例と同じ)め計23例(重複例は省く)の報告があるが,樋渡氏はこの他にも10余例の経験があると述べている。又,之以外にも未発表の経験例又は医師の診察を乞わなかつた例もかなり多数ある事が想像される。

黄降汞軟膏による眼瞼皮膚炎の1例

著者: 山地美惠子

ページ範囲:P.1386 - P.1388

はじめに
 水銀製剤によつて眼瞼皮膚炎が惹起されることは,かなり以前から注目されており,黄降汞軟膏,オキシシアン水銀,昇汞等がその原因として報告されている。この中,黄降汞軟膏は眼科医にとつて最も関係の深いものであり,使用する頻度も亦大きなものである。然し,黄降汞軟膏によつて眼瞼皮膚炎を起した報告例は,斎藤氏の2例の他,田村,工藤,神沢,唐木,長又氏等の症例があるのみで,僅かに数例を出でない様である。この中,唐木氏の例を除き,凡て眼科医による黄降汞軟膏の点入によつて起つている。唐木氏の例は結膜炎に対して点眼用軟膏(オプト,黄降膏)使用後,眼瞼皮膚炎を起したものである。
 私は今回,眼瞼掻痒に対して,藥局の薦めによつて2%モチダ式黄降汞軟膏を自ら眼瞼皮膚に塗布した事によつて惹起された眼瞼皮膚炎の1例に遭遇したので茲に報告する。

新局所麻酔剤キシロカインの使用経験(2)—第二篇 表面麻酔について

著者: 浅山亮二 ,   坂上英 ,   宮崎榮一 ,   森寺保之

ページ範囲:P.1389 - P.1398

 前報で新局所麻酔剤キシロカインの浸潤及び伝達麻酔効果について述べたが今回は局所表面麻酔剤としての効果を動物及び人体実験臨床実験より観察併せて従来の麻酔藥との比較を試みたのでその成績を発表する。

眼科領域におけるハイドロコーチゾンHydrocortisone(Cortril)の臨床使用成績

著者: 池田一三 ,   宮沢稔

ページ範囲:P.1398 - P.1402

 副腎皮質ホルモンの一種であるコーチゾンは,A.C.Woods等によつて始めて眼疾患の治療に用いられた後,数年を出ずして,わが眼科領域では日常臨床に不可欠の藥剤となつている。その理由としてはこのものの抗炎症作用が非常にすぐれていることは勿論,眼局所に用いて全身投与(内服,筋注)時に見られる副作用を避けうること及び局所的使用により極めて経済的であることが挙げられる。コーチゾンのリウマチ性疾患に対する卓効が発見された当時(1949年),今世紀前半における治療医学上の4大発見の1つとして,インシユリン,ズルフオンアミド,ペニシリンの発見と並び称せられたが,その後に示された本剤の臨床的応用効果の発展は,ますますその感を深からしめるものがある。
 このようにコーチゾンは誠に治療医学に一転機を画する藥剤であるが,なおその作用は完壁とはいえない。そこで少しでもより強力なホルモンへの探究が進められ,すでに幾種かの新らしい強力なステロイドが発見,創造され,そのうちあるもの(たとえばプレドニゾン,プレドニゾロン)はアメリカで実用化されようとしている1)。しかしこれに先がけて,すでにコーチゾンと共に知られており,その糖質コルチコイドとしての作用において勝るといわれるハイドロコーチゾンの普及も漸次見るべきものがあつて,わが国でも三井・山下2),筒井3),鴻4),倉知5),井後・松田6)等諸氏の報告がある。

前線通過と緑内障発作

著者: 佐野邦利 ,   飯田昌春

ページ範囲:P.1402 - P.1403

 気象病の見出し方として,最近数量的,客観的な方法が用いられる様になり,各方面で数多くの業績が為されている。私共は,前線と緑内障発作との関係を,相関分折法りにより,検索したので,その結果を記載したい。
 昭和21年1月より,昭和25年12月に至る5ヵ年間に,名大へ来院した(発作日の明らかな)急性緑内障患者70例中,前線との距離が600km以内の44例を対象とした。

硝子体の細隙灯顕微鏡的所見—第一編 前部健常硝子体

著者: 陳昆暁

ページ範囲:P.1403 - P.1418

第1章 緒論
 1911年Alver Gullstrand氏がNernst灯を用いて生体に於て硝子体の正常及び病的状態を検査し,硝子体の種々の深さに於て数層の膜を見る事が出来,又これらの膜が網構造を形成して常に前額面の方向に拡がるといい1914年Erggelet氏は更にこれを研究して硝子体は釘にかけられた布の如く平行なる皺襞を有する膜状を呈するものであるといつた。その後Redslob.Koby.Vogt.Bedell,Koeppe, Meesman.日本に於ては1938年河本正一,1941年落合文平,1950年下田重正,1950年山根浩諸氏の尊敬すべぎ業蹟が発表された。併し乍ら健常硝子体の細隙灯顕微鏡的所見に関する報告は僅かに河本及び下田両氏のみで,而も一方は散瞳状態,一方は無散瞳状態且限られた年令に於ける検査でその成績も区々である。
 著者は藪に於て前部硝子体の細隙灯顕微鏡観察を行い次の如き成績を得たので之を報告する次第である。

銀海余滴

バックナンバーのお知らせ

ページ範囲:P.1388 - P.1388

 只今下記の巻・号が在庫しております。御希望の方はどうぞ御申込み下さい。
Vol.2 No.2

日本トラホーム予防協会会告

ページ範囲:P.1441 - P.1441

 全理事監事の役員会を開催して次の様な事を申合わせた。
寄附行為の改正

臨床講義

点眼藥の処方について

著者: 弓削経一

ページ範囲:P.1419 - P.1425

 点眼藥は藥を結膜嚢内で働かせるもるのと眼球内へもちこんで働かせるのとの2つの目的をもつている。後者の目的のためには角膜透過が特に考慮せられねばならない。一般に点眼藥がそなえておるべき必要な条件として,次の様なものが数えられる。
 a.藥がよくきくこと b.なるべく刺戟性がないこと c.組織をいためないこと d.藥が安定であること e.藥が細菌その他に汚染せられないこと

私の経験

眼精疲労の検査法及び治療法

著者: 梶浦睦雄

ページ範囲:P.1427 - P.1430

Ⅰ.緒言
 普通健康人では物を見ると云う事は意識下にある,然し何等かの障害があつて,為に無理に視機能を明快にしようと云う意識した努力をする時に起つて来る全身特に眼の症候群を称して「眼精疲労」と云える。それ故眼精疲労と云うのは決して一つの病名ではなく,唯単に症候群に対して与えられた名称である。
 従つて眼精疲労はその原因が甚だ多く,且つ複雑で,一つの原因のみの事もあるが,2つ,3つの原因が組合されて居る事も多い。そこで診断は甚だ難かしい事が多く,真の原因を決めるには,確実に且つ系統的に考えて,然る後にそのよつて来る根本を考慮して適切な治療を行なわねばならない。

談話室

第17回国際眼科学会見聞記(Ⅱ)

著者: 神鳥文雄

ページ範囲:P.1431 - P.1434

 15日,雨天。午前中Grand Ballroomにて原発性緑内障の宿題報告討論会,Empire roomで眼の透明体のシンポジユーム其の二(水晶体と硝子体)あり。
原発性緑内障の会

トラホーム予防協会会誌

和歌山県下学校トラコーマの近況

著者: 安藤純

ページ範囲:P.1437 - P.1441

 和歌山県民のトラコーマ(以下「ト」と略す)罹患率は嘗て昭和26年全国都道府県中第1位を占めた事がある。この「ト」高罹患率県としての意味で,県下学校「ト」の近況を二,三の資料を基に報告し,御参考に供する次第である。

トラコーマ診断の個人差に就いての資料

著者: 西田富美

ページ範囲:P.1442 - P.1444

Ⅰ.罹患率の巾について
 トラコーマの検診成績は,一般に,検診医に依りかなりの差異があり,たとえ,同一集団を同時に検査しても診断成績に基ずく平均罹患率には,医師によりかなりの分布がみられるものである。
 大阪の北部の農村に於ける小・中学校及び大阪市内の某学院高等部及び中学部男生徒のトラコーマ検診に於て,各眼科專門医の間にみられたトラコーマ羅患率の差違は第1表の通りである。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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