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臨床実験
所謂授乳弱視に就いて
著者: 酒谷信一1 多木喬郞1
所属機関: 1神戸医科大学眼科学教室
ページ範囲:P.1372 - P.1376
文献購入ページに移動緒言
吾国の眼科史を嘗ては脚気弱視をとり巻いて東京大学河本・島薗教授一派と京都大学市川教授船川氏その他の間に華麗な論争の色彩で飾つた吾国特有の慢性球後視神経炎の問題は,その本態が確証されないまゝに今尚種々の混迷と誤解の影を引いている。授乳弱視に関しても,その本態的概念の確立を目ざして井街謙氏が"授乳性球外視神経炎"と云う名称を提唱した事を考うる時1),授乳弱視について追究する場合も自らこの慢性球後視神経炎の問題に突き当るのである。飜つて,井街譲教授が慢性球後視神経炎の本態に蜘網膜炎の存在を重要なものとした事より考えて2),授乳弱視に於ても蜘網膜炎の存在を同様に想定せられるのであつたが,当教室に於て難治な経過を辿つた授乳弱視と考えられる2症例に開頭術を施行したところ,癒着性蜘網膜炎を認め術後急速な症状の好転をみたのである。この事は,所謂授乳弱視の本態に蜘網膜炎の存在するものゝある事を確証するもので新知見として此処に報告する。
吾国の眼科史を嘗ては脚気弱視をとり巻いて東京大学河本・島薗教授一派と京都大学市川教授船川氏その他の間に華麗な論争の色彩で飾つた吾国特有の慢性球後視神経炎の問題は,その本態が確証されないまゝに今尚種々の混迷と誤解の影を引いている。授乳弱視に関しても,その本態的概念の確立を目ざして井街謙氏が"授乳性球外視神経炎"と云う名称を提唱した事を考うる時1),授乳弱視について追究する場合も自らこの慢性球後視神経炎の問題に突き当るのである。飜つて,井街譲教授が慢性球後視神経炎の本態に蜘網膜炎の存在を重要なものとした事より考えて2),授乳弱視に於ても蜘網膜炎の存在を同様に想定せられるのであつたが,当教室に於て難治な経過を辿つた授乳弱視と考えられる2症例に開頭術を施行したところ,癒着性蜘網膜炎を認め術後急速な症状の好転をみたのである。この事は,所謂授乳弱視の本態に蜘網膜炎の存在するものゝある事を確証するもので新知見として此処に報告する。
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