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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科9巻5号

1955年05月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・10

種痘に伴う眼傷

著者: 中村康

ページ範囲:P.745 - P.746

1.眼瞼副痘Vaccinia
 大人に来ることは稀で乳幼児に診るものだが本例は自分の小供の第一期種痘についで母親が罹患したものである。
 25歳,家婦。

綜説

世界保健機構技術報告(No.59)

ページ範囲:P.747 - P.754

此の報苦は国際的な専門家の綜合された意見を述べてあるのであって,世界保健機構(WHO)の決定或いは欧策を必ずしも代表しているわけではない。

臨床実験

眼外傷の統計(Ⅱ報)

著者: 筧香代子 ,   古橋文子 ,   坂靜代

ページ範囲:P.755 - P.757

 先に昭和21年から25年迄の5年間の眼外傷患者1088名に就て,眼外傷と一般眼疾患との比較並に性別,眼外傷を起す物体の種類,眼外傷と性別,眼外傷を起す物体の種類からみた左右別,年令別,眼外傷と季節,等に就て観察報告した。本回それに続いて外傷物と職業の関係。外傷物と受傷後の視力。外傷物の種類と部位,眼外傷を惹起した動機,眼外傷の症状及び続発症の各々に就て観察したので報告する。

下眼瞼内反症に就いて

著者: 原東亜

ページ範囲:P.758 - P.759

 その時,私は若い婦人を処置台にのせ,角膜異物を摘出すべく,コカインの点眼麻酔を行つていたのであるが,看護婦と,投藥窓口から顔を覗かせて熱心に語り合つている中年の男との対話がとつても可笑しかつたので,まず私の患者が噴きあげるように笑いだし危く処置台から転げ落ちそうになつた程であつた。男が言つた。
 「おらア能登島のもんでございみすが,前田のとおとに聞きみしたら,ここもとに毛の生えん藥があるちうこつで,へえ,どうかおらにもちよつこし分けてくさる訳にやいきみすまいか?」

極めて初期から観察した網膜中心静脈不全閉鎖

著者: 林皜

ページ範囲:P.759 - P.761

 網膜中心静脈血栓症に関する文献は枚挙の遑がない。併し中心静脈が不完全に閉鎖され,而も極く初期から経過を観察した例は至つて稀の様である。私は最近本症の極めて初期から観察し,而も認むべき原因なく再三出血を見たが,その後歯牙の異常を発見し,抜歯施行後急速に軽快した例を経驗したので茲に報告する次第である。

試案防護眼鏡—附・工場技工の角膜異物の原因

著者: 小原博享

ページ範囲:P.763 - P.765

 労働安全衞生規則第133条"研磨盤による金属の乾燥研磨,ピスコース紡糸作業,炭酸含有清涼飲料水のびん詰其の他,作業の性質上物体の飛来による危険があるときは,飛来防止の設備を設け,又は適当な保護具を備えなければならない。労働者は作業中前項の保護具を使用しなければならない"と規定してあるが,その規定にも拘らず,私共は毎日研磨盤(旋盤),金属の切削等に因る角膜異物患者に遭遇する。此の異物患者の原因を調査すると防護眼鏡が有るにも拘らず使用による不快感,苦痛,視障害のため労働者は之を使用し得ないか,たとえ之を用いたとしても防護眼鏡としては極めて不完全な只の度の無い所謂素通しの眼鏡を用いて居るに過ぎないからである。私は従来の防護眼鏡の欠点を除き労働者が安易に使用し得る保護眼鏡を試作したが労働災害予防に幾分なりとも貢献し得れば幸と考え敢えて茲に報告する次第である。

小口氏病に対する頸動脈毬レ線照射に就いて

著者: 倉田和美

ページ範囲:P.767 - P.770

 小口氏病は周知の通り明治40年に小口教授に依り始めて其の特異な症状が発表せられ,以来幾多の報告並びに討論がなされて来た。併し其の光神を増強し様と試みたものは極めて尠ない。
 最近上岡氏は小口氏病の第I型に対し,レ線間脳照射を試み良好な成績を得られている。私共は今回偶然に小口氏病第I型の患者を得たので,之に対しレ線頸動脈毬照射を試みた所,些か乍ら効果を認め得たので,此処に其の成績を報告し,諸賢の御批判を仰ぎ度いと思う。

骨盤端位分娩時の臍帯の圧迫に因る角膜実質溷濁

著者: 小原博亨 ,   戸谷いさ ,   須知仁

ページ範囲:P.770 - P.771

 私共は鉗子分娩に因る角膜実質の溷濁の一例に遭遇して之は鉗子分娩に因る止むを得ざる眼障害であると患者の両親を納得させたが助産婦にとつては鉗子に因る眼障害と云う事は患家に対する自己の立場からも甚だ不満に思つて居たのかも知れないし,亦,疑問を持つに到つたのかも知れないが,其の後,間も無く前記助産婦により扱われた正規分娩(鉗子分娩で無の意)ではあるが角膜実質の溷濁有る例に遭遇して前記助産婦に因り正規分娩でも角膜実質溷濁が来るから前記角膜溷濁は鉗子に因るもので無いと暗々に主張された。私共は正規分娩でも斯る事が有り得ると説明したが,其の機転の解明に苦しんで居たが,第140回名古屋集談会で吉田義治教授は骨盤端位分娩の際には臍常の圧迫に因り特異の角膜溷濁が起り得る事を明かにされたが,私共の例も全く吉田教授の例に一致するのて今迄報告されて居る骨盤端位の鉗子を使用しない場合の眼障害に対するWeckerBockの場合と異る事を報告する。

慢性軸性視神経炎の眼症状知見補遺—第1篇動視標に対する視認力

著者: 土屋春雄

ページ範囲:P.772 - P.776

 吾人が眼科学に於て視力と称するものは,視標が静止し,測定距離が一定し,一定したる条件に於て眼の分解能力を数値的に示したものである。斯かる検査が眼科学に於て持つ意味は基礎的である故に重要ではあるが,斯くの如く限定せられたる条件下に単なる分解能力だけを見るということは決して実生活に於ける「眼の働き」(視能:伊東教授,「視力」文部省学術研究会議第9部第7斑報告書77頁,昭22)を全的に表現するものではない。実生活に於ては斯かる分解能力よりも形態の認識が重要である。眼科学に於ては,視能を内容的に分析して或は視力,或は視野,或は光神,色神,屈折,調節,両眼視機,輻輳,開散等に区別して居るけれども,畢竟それは何れを一つ取つても基礎的のものではあるが,其の一つから視能を推定することは出来ないものである。故に,視能の観点から眼の働きを測定しようとすれば,之等の基礎的要素の二つ或は三つを同時的に結合して,一種の組合せ式に部分的結合を行いながらそれを総括して視能の大小を知るべきである。斯くして眼科学を人間生活に直接的に結びつけることが出来る。然るに従来は此の点を注意しなかつたから,視力検査を以て殆んど眼の働きを全的に表現するかの如く誤解して来たものである。

meniere様症状を伴える特発網膜黄斑部孔形成の一例

著者: 常岡昭 ,   久保田絢子

ページ範囲:P.776 - P.778

 meniere様症状(以下M症状と略記)を反復繰返す毎に漸次視力障碍が進行し,最近一ヵ年前より一眼に変視症と強度の視力低下とを自覚した例に,網膜黄斑部孔形成を発見しその成因に聊か興味を覚えたので追加報告する。

癩性結節性紅斑の眼症状

著者: 日比久子 ,   塩沼英之助

ページ範囲:P.779 - P.782

 結節癩は其の治療経過中に結節或いは浸潤の吸收時に当りその皮膚に屡々癩性結節性紅斑Eryt-hema nodosum leprosumを生ずる。この際,臨床的には発熱,激しい神経痛,関節痛を伴い時に膿疱を形成し急性期には赤血球沈降速度は促進し白血球特に好中球の増加を来す。
 此の癩性結節性紅斑(似下E.N.Lと略称)の眼科領域に於ける変化としては眼瞼皮膚の発赤及び圧痛ある小豆大の隆起物として認め或は上鞏膜炎として認められる事がある。癩性虹彩毛様体炎は通常刺戟症状を欠き慢性のものである。然るにE.N.L発生時に屡々急性虹彩毛様体炎を併発するものであつて之は激痛を以て患者を苦しめ又視力障碍を残し何回も繰返して起る故に失明の重要な一因となつている。両者の関係に就ては既に内田氏等の一部抄録による報告があるが,今回我々は長島愛生園入園中の結節癩患者中,治療により光田氏反応陽転せる者42名及び最近1年間(1953年)に急性虹彩毛様体炎で治療を受けた者72名に就き,特に癩性結節性紅斑と急性虹彩毛様体炎との関係を調査した。

血圧降下剤と網膜中心動脈圧—カリクレイン(附ビール飲用例)

著者: 小島克 ,   服部知己 ,   後藤卓尓 ,   水田喜美子 ,   小島靖郞 ,   築山規子

ページ範囲:P.783 - P.785

 「カリクレイン」は,循環系ホルモンで,その作用は,末梢部の皮膚及び筋肉の毛細血管を拡張し又心臟の冠状血管も,肺脳の血管と同様拡張して,これにより血液循環を改善し,循環障得を除去して,生理的に血圧を調節すると云われる。この点に於て,私共は,バイエル会社製「カリクレイン」注射を,高血圧及び低血圧の患者に用い,全身血圧と網膜中心動脈圧の関係を調べた。参考のため,「ビール」飲用の影響も調べ得たので付記する。

諸種眼疾患に対するアミピロの効果に就いて

著者: 重松典雄 ,   前田泰子

ページ範囲:P.786 - P.787

 先に吾々はイルガピリンが単に鎮痛作用を示すのみならず,炎症性眼疾患に特異なる消炎作用を呈する事を報告した(臨眼7巻12号)。Stenzlによつて1949年創製されたアミノピリンとブタグリヂンの含剤であるイルガピリンはその卓効と共に又強い副作用を呈する事を経験して来た。
 然るに本邦に於て京都大学荻生教授並びに高橋教授等によりピラツオロン系化合物Dimethyl-aminopropyonylaminoantipyrin (アミノプロピロン)が合成せられ,本剤がブタゾリヂンと同様にアミノピリンを高濃度に溶解し,且つ鎮痛作用が強く,毒性がブタゾリヂンの1/4に過ぎないことが証明せられた。

眼瞼及び結膜淋巴管腫の2例

著者: 呉耀南

ページ範囲:P.788 - P.790

 淋巴管腫は従来稀有な腫瘍に属し,文献上今日に至るもその記載は少ない。Meyerhof (1902)は其の報告の冒頭に於て"Die aus dem Lymph-gefapsystem hervorgehenden Geschwulste ge-horen zweifellos zu den selteneren Neubildun-gen"更に"In der Tat gehoren die Lymphan-giome am Auge zu den allerseltensten Vorko-Inmnissen"と記載している。
 私は最近興味ある2例を経験したので茲に追加報告し,併せてその概略を述べる。

緑内障に対する炭酸脱水酵素阻害剤Diamoxの効果に就いて

著者: 坂上道夫

ページ範囲:P.790 - P.795

Diamoxに就いて
 炭酸脱水酵素阻害物質であるDiamoxは,Sul-fonamideの誘導体であり,その構造は2-Acety-Iamino−1,3,4,-Thiadiazole−5-Sulfonamideである。本製剤はSulfonamideと一連の化合物として,Arnerican Cyanamid CompanyのStanfordLaboratoay Chemothefapy Divisionに於いて合成され,当初は製造番号で表わされ6063と称せられたものである。さて,Sulfonamideの炭酸脱水酵素抑制効果に就いては,1938年頃から注目され特にN(1)非置換SulfonamideであるHomo-sulfamine,Acetyl Sulfanylamideが示す抑制効果に関して研究されて来た。Diamoxもその構造から考えるならばN(1)非置換体であり,炭酸脱水酵素阻害作用は,So2NH2基の存在に依つて裏付けられるものと考えられている。Sulfona-midは周知の事実として,胃腸障碍作用があげられる。故に胃腸障碍を示さない藥剤が研究され,遂にRoblin,Miller等により6063が合成されたのである。しかも本藥剤は今迄のSulfonamid誘導体に比し強力な炭酸脱水酵素阻害作用を示したので,先ず利尿剤としてDiamoxと名付けられ,市販されたのである。

Tetracycline軟膏使用成績

著者: 中沢甫計

ページ範囲:P.795 - P.797

 Aureomycin,Teramycinが発見され,眼科領域に於ても特に感染症に対する治療に広く使用せられ,極めて顕著な効果を認めて居るが,更に之等広範囲抗生剤の基本体はTetracyclineである事が発見せられ,此の新抗生物質がAchromycinの名で発売された。今回此のAchromycinをTrachoma並びに急性カタル性結膜炎等に使用し若干の成績を得たので茲に報告する。

眼内手術後の早期離床に就いて

著者: 呉耀南

ページ範囲:P.799 - P.801

 近来外科や婦人科領域に於て開腹手術後の早期離床が提唱されるが,我眼科領域に於ても従来の晩期離床から早期離床の方向に進んでいることが推察される。1昨年三井助教授はその欧米旅行談に於てアメリカでは現在白内障嚢内手術後に積極的な早期離床が実施されていると発表し,千葉医大の鴻氏も其の具体的な実施方法を考按し,これを試みて良好な成績を得たと報告している。近くは中村教授が渡台なされた際にもその様な主旨の事をお話しされたので,私も本問題を検討する為に特別安静仰臥を必要とする様な手術症例は除外して,普通一般に行われる眼内手術を対象として早期離床を行わせてみた。

ネオシネジンの眼局所応用に就いて

著者: 宮崎茂夫 ,   船本宏 ,   針谷嘉夫

ページ範囲:P.802 - P.803

 吾々眼科医が眼底検査をする場合,特に老人の場合にもう少し瞳孔が大きければと痛感する場合が多々あるが,この目的には点眼して短時間で散瞳する事。散瞳が余り長期間に渉らぬ事,検査が済んだら速かに瞳孔が正常に戻り得る事,散瞳により眼圧の亢進を来さない事等の制約をうけるのである。従来この為にホマトロピン水点眼,或いはアドレナリン液の球結膜下注射が行われ,最近では教室の大木氏は3%アドポン水が散瞳作用を有する事を報告している。然しホマトロピン水点眼の場合,時に眼圧の亢進を見るので緑内障素因を有する人,特に老人には眼圧に注意して使用しなければならなかつた。アドレナリン液の球結膜下注射は散瞳と同時に眼圧を下げるので診断的散瞳の目的には好適なのであるが使用方法に難があり,一般の人に眼に注射等と云おうものなら拒否されてしまうのである。又アドポンは刺戟が強く結膜充血を来す欠点がある。かかる率のない即ち眼圧亢進,刺戟結膜充血を来さず,且つ散瞳作用が速やかに起り然も一過性であり,使用方法が簡単で患者に恐怖の念を起させぬ散瞳藥の出現が望ましいのである。最近興和化学より提供をうけたネオシネジン(以下N-Sと略記)を使用して見た所上記の目的を略其備すると思われるので,その使用成績を報告し,諸家の御批判を仰ぎたいと思う。

クロロマイセチンのトラコーマ集団治療成績について

著者: 星野勇 ,   谷口幸次郞

ページ範囲:P.804 - P.806

 トラコーマ(トと略)治療においてテラマイシン(TM),オーレオマイシン(AM),に依る局所療法は三井氏等の実験に依り確証され今日では普遍化されている。クロロマイセチン(CM)はそのトに対する効果は,三国,土屋氏は適当な濃度を使用する事により,TM,AM同様有効である事を報告された。私共は1%CMでトの集団治療をしたので記載したい。

外転神経麻痺と中頭蓋症候群

著者: 小島克 ,   水野日出夫 ,   夏目智惠子

ページ範囲:P.807 - P.808

 最近頭蓋内疾患と,眼との関係が,重要視され,多くの報告が見られる。所謂中頭蓋症候群と思われる眼症状に就いては,昭和26年長山氏の5例,昭和28年柳田氏の6例を見るに到つた。私共は外転神経麻痺が発来し検査の結果,中頭蓋窩に変化あると思われる2症例に遭遇したので,報告したい。

硝子体内非磁性異物の摘出成功例に就いて

著者: 弓山真弓

ページ範囲:P.809 - P.811

 我々眼科医の切なる願い,それは現在殆んど拱手傍観を余儀なくされ,僅に対症療法のみによつて満足しなければならない状態の網膜,脈絡膜,硝子体疾患の一部に対して直接外科的侵襲を加え得ないものであらうかと云う事である。例えばこれから報告する眼内非磁性異物を始めとして増殖性網膜炎,硝子体動脈遺残,眼内腫瘍及び炎症等に直接且つ安全に外科的手術を加えらるならば,今迄隔靴掻痒の感を以つて治療し脾肉の歎をかこちつつ只空しく経過を観察して一喜一憂していた無能状態に対し,大きな希望の門戸を開く事となり,只に患者のみならず我々眼科医にとつても大きな福音をもたらすものと云うべきであろう。ここに於いて我々はたとえ一歩たりともこの夢の完成に近づきうるならば幸なりとの観点より眼球開壁術と銘うつ手術を追試し,改良研究を重ねつつある次第である。
 今日尚浅く本法の禁忌,適応,術式その他細部に亘る諸点については更に検討を要する点の多々ある事はいなめないのであるが,今後に期待される躍進えの一試金石となり得るならばと愚考し臨床実驗の機会ある毎に敢えて禿筆をかつて発表し諸氏の御批判,御追試を仰ぎたいと存ずる次第である。

眼圧力脈波に関する研究(第1報)—高血圧者の眼圧力脈波について

著者: 瀨戸山陽

ページ範囲:P.812 - P.816

 眼球は胎生学的には,脳の一部と考えられており,脳疾患に際し,多くの眼症状を現わすことは我々が屡々経驗する所である。又網膜中心動脈の口径は210μ以下であり,脳出血を起す脳血管は多くは口径70〜200μと云われているから,高血圧症の場合,眼底血管の性状を知ることにより脳血管の状態を推察し得るわけである。岩男氏は上膊動脈脈波の機械的刺戟に対する反応を検査しているが,これから直ちに脳血管の状況を推察することは出来ない。何故ならば上膊動脈壁は脳血管壁と組織学的にも,又機能的変化に於いても異るからである。そこで眼圧力脈波の検査を行うことは,脳血管の状況を知る上に於て重要なことである。
 (眼圧力脈波について)1928年Thiel氏は角膜搏動を記録し,角膜脈波を二種類に分けた。即ち,心搏動に一致して眼球内に流入する血液のため,わずかながら,眼球の容量変化が起りそれにより生ずる振動を描写した脈波を容量脈波と名づけ,眼球をプレチスモグラフと考えて,外圧を加え眼内圧を上昇させ,それによる血管圧迫により生ずる脈波を,狭義の圧力脈波と云つている。川嶋氏は容量脈波より,圧力脈波(狭義)に移行する部分で,脈波休止期,又は脈波高が低くなりわずかに振幅する不明瞭期を過ぎて特有の脈波が現われ,その高さが高くなつた時を以て,網膜中心動膜の最小血圧に一致した点としている。

新式眼科診断機械の使用経驗—〔I〕新型ゴールドマン視野計の使用経験,他

著者: 井上正澄

ページ範囲:P.816 - P.820

 最新の設備を持つ欧米の眼科病院では視標を投影し,検査成績を自記する周辺視野計Perimeterを用いている所が多い。此のような精能をもつ視野計にはマギオーレ型,アイマーク型,ゴールドマン型などあるが著者はゴールドマン型を数ヵ月用い,次のような特長を体験したのでここに述べて見よう。
 1.被検眼から凹半球までは他の視野計と同じく30cmである。凹球面の照度と投影する視標の照度との比率を一定にするために投影装置にフイルターをはめ,視野計の横にある小孔を照し,両者の照度を等しく調節する。次にフイルターを外してから視野検査を開始する。狭い薄暗い部屋に本器を置き,特別の照明なしに視野を正確に測定することが出来る。

散瞳藥MAIDRINの臨床応用成績

著者: 川野博隆

ページ範囲:P.820 - P.825

 散瞳藥マイドリンを実験的に家兎眼に点眼した場合,副作用も無く充分其の散瞳目的を達する事を証明した。(眼臨46巻11号783頁)今回は臨床診断用として如何程の価値があるか,現在迄使用した成績に就き茲に報告し,諸賢の御批判を仰ぐ次第である。

Hydrocortisoneによる角,鞏膜疾患の治療成績に就いて

著者: 井後吉久 ,   松田禎純

ページ範囲:P.826 - P.829

 ここ数年間眼科領域に於ても副腎皮質ホルモンの特殊な作用機転が明らかにされ,Cortisone等諸種眼疾患に著明な効果を認め殊に最近Hydro-cortisoneが使用され多くの場合劇的な効果を挙げて従来困難であつた治療法に大きな助けとなつていることは諸種抗生物質の使用と共に意義が深い。
 私共はこれ迄主として角,鞏膜疾患に対してHydrocortisoneを使用し,その治療成績を検討して来たので茲に一括して報告する。

緑内障の眼圧日差に就いて

著者: 須田經宇 ,   緖方鍾 ,   池辺五十雄

ページ範囲:P.829 - P.835

 眼圧は例え健常眼に於ても1日24時間中con-stantなものではなく,多少なりとも動揺することは周知のことで,之を眼圧日差Tagesschwan-kung des intraokulares Druckes, Diurnal variationof intraocular pressureと言う。斯る眼圧日差は健常眼よりも病的眼即ち眼圧の高い緑内障眼は勿論,眼圧の低い低圧眼の方でも大きな価を示すものであるが1),日差がどの位の価を越せば病的か,この問題を解くには正常眼圧眼と,病的眼圧眼の日差を検討比較すれば良い。抑々健眼の日差の価は如何,Hagen3),Thiel4),Sugar5),Mass-lennikoff6)等は2.0〜3.0mmHgであると言い,Feigenbaum7),Duke-Elder8),Lohlein9),Rohr-schneider10)等は5.0mmHg以上を病的だとし,Gradle11)は正常眼でも稀には6mmHg以上のことがあると云い,von Sallmann12)等は健眼の眼圧日差は10mmHgまでであると述べ,Matteucci13)も正常の眼圧日差は約10mmHgであると言う。私共は之に就いて検討するまでには未だ材料が集つていないので今回は之には触れない。他方緑内障の眼圧日差に就いてはその曲線の型は論じられているが14)16),日差の程度に就いては余り検討されていないようである。

白内障全摘出手術を安全,確実且つ容易に実施する爲の術式の檢討(Ⅱ)

著者: 大島勇一

ページ範囲:P.836 - P.838

Ⅱ.白内障全摘出術式に就いて
術式の展望
 白内障全摘出は古くから多くの術者によつて試みられ,従つて十人十色数多くの方法とそれに用うる器械が発表されて居る。しかしそれらを大別すると,大体四つの方法に分けることが出来る。即ち1)圧迫による方法,2)水晶体後方に匙その他を入れて掬い出す方法,3)鑷子,吸引器その他で牽引する方法,4)チン氏帯を直接離断する方法等である。
 1)この方法は最も原始的な方法であつて,Kirbyによれば,英人のSharpeが既に1773年意識して親指で眼球を圧迫して,全摘出を行つたとの事である。しかし後に至つてSmithによつて完成され,同時に偶然に発見された水晶体が足を先にしてデングリ返しで出て来る。従つて虹彩切除の要がなく,又硝子体脱出に対して上縁の未だ切れないチン氏帯が柵を廻らした様にそれを阻止する等,特長のあるデングリ返し法と共に,近代全摘出法の基となつている事は周知であるが,Smithの原法は稍安全確実性を欠くため現在では用いられない。

臨床講義

眼部惡性腫瘍特に眼窩腫瘍の臨牀

著者: 高安晃

ページ範囲:P.839 - P.846

Ⅰ.悪性腫瘍とは
 1.発育が速かであること,2.破壊的浸潤性増殖を示し,3.転移竈形成が多い,4.全身的に消耗の度が強く所謂悪症を示す,5.更に手術治療後再発の傾向が強い(鈴江教授,1948)この5つの条件が揃えば惡性腫瘍と云う事が出来る。
 吾眼科領域に於ける悪性腫瘍特に悪性眼窩腫瘍にも以上の様な条件を示して臨床家の深い関心を招いて居る。

私の経験

白内障手術後に起れる緑内障症例

著者: 瀨戸糾

ページ範囲:P.847 - P.848

(1)角膜切開弁創口への虹彩の嵌鈍に依る緑内障
第1例
塩○○郞,62歳,高度近視,前嚢白内障

談話室

アメリカ便り(第5信)—ワシントンにて

著者: 神鳥文雄

ページ範囲:P.849 - P.851

ウヰルス病院の第6回眼科学会
 ウヰルス病院はブイラデルフイアのSpring Garden街北16丁目にある眼科のみの大病院で,ベツト数200を擁し,この病院で修業して眠科医になつたもの千余名に達し,アメリカ全土に布陣し,会を催すると,同病院の関係者が,東岸から西岸に亘つて参集し,参加者500名余で実に盛会であつた。同会からの招待が1ヶ月前にあつたので,会の前日(18日)よりフイラデルフイアに行つて,ペンシルバニァ大学を始め,ゼフアーソン,テンプル等の諸大学を訪れるよう準備万端を整えていたのに,アメリカ教育委員会から,国務省外事課John B.Phillips氏の主催のフルブライト連の招待会がBlair Lee Houseで18日午後5時30分から開催されるとの通知を前々日に受けた。大学の訪問は後日にゆずつて,同招待会に出席したため,19日朝出発してフイラデルフイアに赴いた。午前中の講演は聞くことが出来なかつたのは遣憾であつた。プログラムの順を追つて会の状況を報告しよう。
 第1日,2月19日,午前8時30分開場,登録。

第17回国際眼科学会の感想

著者: 佐藤邇

ページ範囲:P.852 - P.853

 私は近視の原因に就いて発表する為国際眼科学会(1954年9月10日から17日)に出席し,帰途,北米,カナダ,アルゼンチン,フランス,英国,ドイツ,スイス,伊太利等へ参りました。飛び廻つた距離では,人後に落ちぬものであります。併し近視のSymposiumをするため,9月3日に出発し,10月17日(45日間)に帰らねばならぬと云う極めて短期間で有りましたから浅薄な知識しか得られませんでした。夫故,感想のみを述べさせて頂き度いと思います。
 外国へ行きますと,常に日本と比較と云う事が念頭に浮びます。此の中で,私が痛感したのは,第一に如何に日本が上記の国々に比べて貧乏で有るかと云う事で有ります。之は兼々聞いて居た事でしたが,我々日本人は貧乏の程度の如何に大であるかと云う事を認識して居ないで遊んだり,仲間げんかをして居るのだと思います。米国は迚も問題になりませんが,一番有名で無い「レバノン」の「ベイルート」(私は茲に一泊する迄,そんな国も町も知らなかつた)をとつて見ても奇麗な15階位の建物が並んで,新式の自動車が鋪裝道路に沢山走つて居ります。又「フランス」は経済状態が悪いと聞いて居ましたが,彼等の衣食住は自動車に乗って,しつかりした家に電気冷蔵庫を持つて,御馳走を食べ,葡萄酒を昼間から飲み,良い着物を着ようとするから苦しいので,我々が生存の最低線を守るのがやつとと云うのとはわけがまるで違います。

集談会物語り

盛新之助先生古稀祝賀記念集談会(第9回徳島眼科集談会)

著者: 福島義一

ページ範囲:P.854 - P.855

 昭和29年12月5日午後1時から,徳大医学部に於て盛新之助先生古稀祝賀記念集談会が行われた。つぎに,当日の大要を記してみよう。
 先ず,つぎの様な学術講演が行われた(演題のみ掲げておく):

欧米旅行記

主要国眼科学会と日眼との連絡

著者: 中村康

ページ範囲:P.856 - P.860

 此は欧米各国の眼科学会の長を訪ね日本眼科学会のメツセーヂを置いて今後の交際を儀礼的に依頼して来ればよいのでありますが,其ではあまり印象が彼等に残らないので私は私の30年の研究の材料をスライド500枚程にして各大学を訪ねた折求めに応じて学問の交流を課題として色々日本の眼科学研究の模様を述べる計画をたてたのであります。其の結果がどうであつたかは解りませんが,良かれ悪しかれ私と話し合つた人々には何か印象された事と思います。米国,カナダは国際眼科学会で多忙の折柄其うした機会に惠まれませんでした。纔かにサンフランシスコでタイゲツソン氏とトラコーマの研究で数時間互に標本を出して話し合うことが出来たゞけでありました。米国及カナダは国際眼科学会で色々の委員会に出席しましたので個々に連絡がとれたように思います。此タイゲツソン氏との対談の為めか現トラコーマ委員々長ビエヅテイ氏(伊)其他のトラコーマ研究者が私の処を訪ねて今後の研究の交換を求めて来る結果を得たのであります。カナダでは眼科学会長マーシヤル博士の晩餐会に招待を受けカナダ眼科学会の人々と親しく交り米国は国際眼科学会長ラムジー氏,副会長ダニングトル氏,事務総長ベネヂクト氏と語り副会長ラムヂー氏の招待を受けてカクテルパーテイに各国の代表者と打ちとけて話をする機会を得,此折,ブラジル,チリー,スペイン等の代表者と親しくなり互の眼科機関雑誌の交換を約束致しました。

欧文抄録

Statistical Observations of Ocular Injuries,他

著者: ,  

ページ範囲:P.861 - P.866

We have made the statistical observations concerning the following items from 1946 till 1950 on the 1088 patients with ocular injuries is the Department of Ophthalmology Nagoya University :
 1) Comparison of ocular injuries with diseases of the eye in general.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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