研究報告
電氣刺激によるバビンスキー反射に就いて
著者:
山本宗三1
眞島英信2
藤崎喬久1
所属機関:
1東京大學醫學部佐々内科教室
2東京大學醫學部生理學教室
ページ範囲:P.107 - P.110
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バビンスキー反射(以下バ反射と略記)は1896年Babinskiが初めて記載したもので,足蹠刺激の際栂趾の背面伸展及趾全部の開扇現象(外偏向)等が病的に現はれる反射であることはよく知られてゐるが,此反射が錐體路障碍に伴ふことが指摘されて以來神經病學上最も重要な反射の一つとして現今尚臨床家に依つて日常診斷に用ひられてゐる反射である。從つてこの反射に對しては驚く程多數の精細な觀察が行はれた(1)のであるが既に50年を經過したにも拘らず實驗的研究は殆ど見るべきものがない。(2)それは刺激として擦過といふ樣な機械刺戟を用ひてゐるために反射諸量の測定は勿論の事刺激の調節も困難であつたといふ理由によるものであらう。我々はこの困難を電氣刺激を用ひることによつて克服し,この反射に關する實驗的研究を行つた結果,從來の觀察によつて豫想されてゐた諸事實を證明し定量化することに成功した。更にバ反射の中樞及本態に關する實驗を行ふことが出來た。
電氣刺激の方法は電源に電燈線をそのまゝ用ひスライダツクによつて適當な電壓として刺激部位に導いた。刺激部位は通常臨床で擦過する部分であるがこれを挿む樣に2極共に足蹠に置かねばならない。電極は2cm×0.8cmの銀板又は直經1cmの銀板をガーゼで包み飽和食鹽水に浸して用ひた。前處置として足を温湯でよく洗ひ足蹠は沃丁かキシロール等を塗布して皮膚の抵抗を成るべく小さくしておく。