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研究報告
洞房漏斗についての研究
著者: 内山孝一1 石原明1 高平一夫1 赤城德也1 矢部敏雄1 小山薫1 高橋眞治1 田中助一1 石川玄知1 岩本守弘1
所属機関: 1日本大學醫學部・生理學教室
ページ範囲:P.247 - P.251
文献購入ページに移動1) 私どもは心臓の静肱洞について研究してをる 間に,洞と房との境界部にあたつて,私どもの 愛稱する"エスキモーの帽子"をその遊離縁に もつた特殊な輪状筋線維束があることを観た。それは洞房のいづれに屬するか,いづれにも屬 しないかは決定されないけれども,静肱洞のリ ズムを受けてこれを房,それから室へと傳える 経路であり,また静肱洞から切り離しても,洞 とほぼ同様のリズムで運動する牲質をもつてを る。
2)この特殊な輪状筋束の位置と構造とは房室漏 斗のそれに類似である。よつて洞房漏斗と名づ けてよいと思う。
3)洞房漏斗は心臓のその他の部から切り離して もリズムを失うことがないのに反し,房室漏斗 は静詠洞または洞房漏斗からのリズムを受けて おり,もしそれらとの連絡が絶たれると一旦は リズムを失う。そして後には静脉洞のリズムと は全く異るゆつくりしたリズムで時折運動す る。故に機能的には洞房漏斗と房窒漏斗とは異 る。しかしリズムの速さはちがうけれども,と もにリズムをもつているという點では似てを る。故に洞房漏斗は機能的にいえば,静肱洞輪 状筋束または洞房輪状筋束と呼んだ方がよいと 考える。
4)"エスキモーの帽子"は何か,またどのような はたらきをもつかは今のところわからない。そ れは牧縮性をもたない。
5)洞房漏斗はその1/3〜1/4の條片でもリズムを失 はないばかりでなく,房へリズムを傅えること ができる。
以上は私どもがやつてをることの一端であり,しかもそれは研究途上のことであるので.私どもの氣のつかない誤りをしているかもしれないから,この點につき同學諸兄の教えを得たいと存じ,その意昧で以上のようなあらましを述べたようなしだいである。私どもはこの洞房漏斗につき,これからあらゆる方面から研究を突込んでやつて行きたいと思つてをる。その電氣生理學的研究,刺激生理學的研究などはその主要な部分を占めるようになるかと思う。研究の一端を發表するにあたり,これまで特に援助を與えられた慈大の名取教授,東京醤歯大の山極教授,本學部の櫻澤醤學部長に感謝するものである。
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