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雑誌目次

雑誌文献

生体の科学1巻6号

1950年06月発行

雑誌目次

論述

人體温の周期性並に體温と體質との關係について(第1報)

著者: 崎野滋樹

ページ範囲:P.265 - P.269

 1.人體温の周期的動搖に就いて
 温血動物即鳥類哺乳類及人類の体温は体内に於ける熱発生と周囲に向つての熱放散との関係によつて成生するもので健常状態に於いては生体内の体温調節作用によつて此両要素は平衡を保つて,体温は略々一定に保持せられる.然れども精密に一日の体温経過を観察すると体温は常に一定に止まるものではなく不断の動搖を示し,殊に人体温が稍々一定した周期的動搖を示すことは既に多くの学者によつて認められている.
 が併し此の周期的動搖の原因に関しては從來種々に解釋せられる.要するに未だ一定の説なく学者によつて意見はまちまちである.更に体温以外に健常状態なる限り,意識活動に於ける覚醍,睡眠の交代,循環運動,呼吸運動,消化器,泌尿器の作用等が規則正しい周期を持つていることも今日の常識である.2以下に於いて体温曲線が2週間前後の一定周期を持つた波動現象を呈することを檢討しよう。

糖尿病に関する実驗病理學的研究(糖尿病亞鉛説)

著者: 岡本耕造

ページ範囲:P.270 - P.277

 Ⅲ 實驗的糖尿病よりみた糖尿病の發 生論および實驗的糖尿病の發症要約
 われわれの糖尿病の80%またはそれ以上が膵臓性糖尿病とされていて,このさいラ氏島には(1)島の数の減少および大いさの減少,(2)細胞学的の変化例えば水腫変性,單純性萎縮,硝子変性,硬変等いろいろの変化が認められている.19,22,26,63)しかしこのようなラ氏島の病変が起つた原因すなわち糖尿病の眞の原因が何であるかについては現今まつたく不明である.したがつて糖尿病に対しては煩雜な治療的処置がとられるのみであつて未前にこれを防ぐ予防対策はこれを樹立する根拠に欠けているのである.しかし最近の糖尿病に関する実驗的研究方面の進歩発達はいきおいその根本原因に対し考察を加えるようにわれわれを駆つている現況である.すなわち動物に甚だ容易に糖尿病を発生させたアロキサン,オキシンの如きがわれわれの糖尿病の原因ではなかろうかというのである.
 アロキサンは試驗管内で尿酸を酸化さして容易に作られるものであり,肝臓には酸素の存在で尿酸をジアルール酸に変化させる酵素がありこのものは極めて容易にアロキサンに変化するものであるといわれている.2,7,60)また最近濠洲のGriffiths14)はウサギをメチオニン,シスチン不足飼料で長期間飼育しこれに尿酸を投與するとアロキサン糖尿病とほとんど差のない血糖の変化を來して糖尿病を発することを報告している.

抗ヒスタミン剤に関する研究(第2報)

著者: 中村敬三 ,   木村義民 ,   根岸淸 ,   坂本行男

ページ範囲:P.277 - P.281

 緒言
 既に第1報で述べたように,其後益々海外に於て種々の抗ヒスタミン剤が生産されるようになつたが,しかしそれらの藥剤の性格を檢討すると,その抗ヒスタミン作用と抗アレルギー作用の間には,やはり可成りの縣隔があるように見受けられる.即ち從來発表せられた種々の抗ヒスタミン剤の比較試驗の結果を綜合すると,最新の化合物の抗ヒスタミン作用は著しく増大したにも拘らず,抗アナフイラキシー性には左程の優劣はなく,また臨床試驗の結果にも必ずしも著しい差異が認められていない.この点に就ては,私共は先にBenadrylに関する研究から,種々の疑問を指摘しておいた.然し乍らBenadrylは元來が抗ヒスタミン性と抗アナフイラキシー性の比較的少い藥剤であつて,このことは先きに述べたように,種々の抗ヒスタミン剤の比較試驗の結果から明かにせられた所である.例えばLandanの実驗成績によれば,モルモツトのヒスタミン・シヨツク死(histamine phosphate 0.5mg/kg靜注)を100%予防するには,Benadryl 0.6mg/kgの前処置で充分であるがアナフイラキシー・ショツク死を100%予防するには,5mg/kgのBenadrylの前処置を以てしても,なお且つ完全と称するには至らない.

巻頭

研究の協力と綜合

著者: 杉靖三郞

ページ範囲:P.280 - P.280

 最近の科学的研究の特長は,その発展が孤立した学者によつておこなわれるのではなく,多くの人々の組織的な協力と,科学各分野の成果の綜合によつて推進せられていることである.それは湯川博士の中間子理論の発展が,"素粒子グループ"とよばれる有能な若い物理学者らの力づよい協力によつてなされていることから見ても,自明のことであろう.
 ひるがえつて医学のような具体的な対象をもつものにあつては,医学各分野の協力はもちろん,他の諸科学分野の協力ないしは綜合なくしては,眞の進展はもたらせないのである.このことは,戰前におけるドイツのKaiser Wilhelm Instituteの設立によつて,医学研究の—大進展がもたらされたことや,戰時中にサルファ剤,ペニシリン,DDTなどの研究に長足の進歩がもたらされたことや,さらに戰後のアメリカ医学が,数多くの抗菌剤の発見に,ウィールスの探究に,また癌の研究その他にめざましい進展をとげつゝあることは,ひとえに協力と綜合との美事な成果であり,訓練を積んだ一連の医師たちの緊密な共同作業のたまものなのである.

展望

最近の発生生理学(特にオルガナイザーの問題について)

著者: 藤井隆

ページ範囲:P.282 - P.286

 1.發生生理學の課題
 ここに発生生理学というが,この言葉は從來屡々実驗発生学や実驗形態学と同義に用いられ,発生に際しての形態発現の機構を,形態学の立場から分析する意味に用いられてきたのである.しかし最近7〜8年間に於ける発生学の発展は,ようやく生理学的又は生理化学的の研究方向を示しつつある.しかもその際,注目に値いすると思われることは,方法としては純粋に生理学乃至生理化学的であることは当然としても,上述の実能発生学で得られた貴重な成果の上に立つている点である.
 いうまでもなく,生物は日常,呼吸,運動,同化,筋肉の収縮,神経の興奮等の機能を営んで生活しているわけであるが,これらの変化はすべて比較的短時間に起り,且つ可逆的に繰返し得るものである.しかし一方,生物は一つの細胞である受精卵から出発し,細胞の増殖及び分化により次第に1個の個体に発生するのであるし,更に,個体は遺傅という過程により,1世代から次の世代えと連続する.これらの生物学的変化は長い時間かかつて起るもので,繰返すことのできない1回的なものといえる.從來,生理学は主として,前の方に述べた短時間的な日常の機能を対象としており,発生とか遺傳の現象を問題とすることはなかつた.発生や遺傳の過程はもつぱら,形態の変化として追求され,從つてその学問はながい問記載的であつたのである.

座談会

學會雜誌の現状

著者: 熊谷洋 ,   吉川春壽 ,   杉靖三郞

ページ範囲:P.287 - P.289

 杉 学術雜誌は今どこでも困つているらしいんだが,今日はいろいろ御意見や希望をお聞きしたいんです.藥理学会の方ではどうなんです.
 熊谷 藥理では発行部数は800部くらい,450人の会員に300円の会費を拂つて貰つてやつています.此の収入が大体13万円になる.その他運轉資金が10万円ばかり,それで何んとかやつています.

研究報告

赤血球沈降反應の物理化學的解析〔1〕—等速沈降期に於けるStokesの法則の適用について

著者: 長井良夫

ページ範囲:P.290 - P.295

 緒言
 赤血球沈降(以下赤沈と略称)反應の物理化学的解析については,その沈降速度の示す曲線の形状に依り,先づ最初に加速沈降期があり次いで等速沈降期が現われ,それが更に第三の減速沈降期に移行して終末値に達することは1)2)3)4)5)6)既に本反應の発見当初より注目されて居たのであるが,これらの意義についての研究はその後は些したる進展なく,唯第一期に相当する加速沈降の時期が血球集積(Agglomeration)の時期に相当するものと考えられて居るのみで,これ以上詳しき研究は行われて居なかつた.
 その後宮本,三橋等7)8)は赤沈速度曲線を作図的に解析し赤沈反應の全経週を,第一;血球集積期,第二;等速沈降期,第三;密集沈降期;第四;収縮期の四期に分類することに成功した.

1-(p-Sulfamylphenyl)-semicarbazideの生物学的研究に就て

著者: 武田德晴 ,   岡野光雄 ,   栗塚一男 ,   前島世志子

ページ範囲:P.296 - P.297

 さきに我々はp-Hydrazinophenylsulfonamide塩酸塩の毒性並に血液毒の減退に就て報告1)したが尚若干の毒性を有しているので,これを除去する意味に於いて,さきにP-Glucozonophenylhydrazineを合成2)し,その生物学的作用を檢3)した.即ち毒性は更に減退しているが之が化学療法として結核に及ぼす効果は著しく減退していることを知つた.
 今回はp-Hydrazinophenylsulfonamideに尿素を結合せしめて1-(P-sulfamylphenyl)-semicardazideを自製し,その生物学的作用を檢討することにしたが,その毒性が殆んど見られないので茲に報告したい。

炎性浸潤と線維—特に膠原線維の態度に就て

著者: 新井恒人

ページ範囲:P.298 - P.300

 まえがき
 從來線維の生成に就いては,それの細胞原形質から成立を主張する細胞体生成説と,胞体とは直接の連絡無しに,細胞間物質乃至基質内に生成されるとする細胞間質生成説とが対立するが,1)近時後者の見解が廣く行われる傾向があり,2),3),4)我國に於ても特に病理学の領域に其の研究が見られ,3),5),6),7),8)筆者9)も細胞間質生成説の立場から,主として実驗的生成に就いて論じた.此の場合一般に細胞自身は酵素物質を分泌して,間接的に生成に関與するものと考えられて居るが,其の関與する細胞の種類を限定する事は甚だ困難で,例えば線維芽細胞は疑無く其の能力を有すると考えられるが,併し線維芽細胞という名称の中に,如何なる細胞を包含させてよいかは,嚴密に考えれば極めて複雜且困難な問題で,現在の細胞学的見地からは不可能に近いのではなかろうか.筆者は炎症性浸潤に際して,浸潤細胞が既存線維にどのように作用するかを追求し,逆説的に此の点を考察すると共に,滲出液の及ぼす影響にも若干触れる.
 炎症竇に於ける細胞浸潤が一定の基本形式を有する事実は,以前から超生体皮下結合織伸展観察法により詳細に研究されて居り(天野,10)新保,11)),筆者12)も若干研究に從事した.即,炎症竇に於ける浸潤細胞は,時間の経過と共に次々と消長するものであるから,其の時間的の追求によつて,或る浸潤細胞の局所の線維に及ぼす影響を,随時把握する事が可能となるのである.

クロロマイセチンの嫌氣性菌に及ぼす影響

著者: 太田淸彦

ページ範囲:P.300 - P.301

 ChloromycetinはEhrlich, Bartz氏等により中米の土壤中から発見されたStreptomyces venezuelaeから抽出された抗生物質で,融点150.1℃の白色結晶,水に可成り溶解し比較的安定で化学組成はC11H12N2Cl2O5で示されている.
 抗菌性に歳いては種々の研究が行われ,リケツチア,腸チフス,二三のヴィールス,其他のグラム陽性陰性菌に作用し,その発育阻止作用の強力な事が認められている.

頸動脈毬よりの産生物質

著者: 眞鍋茂良

ページ範囲:P.302 - P.304

 緒言
 頸動脈毬の生理的機能に就きてはHering,1)Heymans,2)de Castro, Danielopolu3)氏等の研究報告あるも依然不明の点多し.頸毬の化学受容能に就きては吾人のあまねく認むる処なるも本毬の内分泌性面に就きては從來議論のありし処にして,此れに早くより留意せるはHeller, Stillng氏なり.
 Kohn4)は此れをParaganglionと考え内分泌器官に所属してAdrenalin(以下Adr.)分泌に関係あるものと云えり.又Klug5)氏等の対立意見も存するがFischer6)等は本毬の脱落現象より内分泌腺に関聯を有するものと説き居り,更にde Caetro7)は神経染色より,初めは頸毬神経の遠心性を述べ,Sunderplasmann,8)も本毬は分泌神経の主宰する内分泌器官なりと主張せり.

溶血系に及ぼす正負コロイドイオンの影響について

著者: 宮本晴夫 ,   赤眞淸人 ,   柳田こう

ページ範囲:P.305 - P.308

1.まえがき
 溶菌反應や溶血反應は沈降反應や凝集反應と異つて,抗原と抗体との結合だけでは十分でなく,更に補体を必要とする.その補体の作用機構については色々の観察がなされ,補体中節がProthrombinであるという説1),2)や,補体の第三成分が酵素であり,このものが溶血反應に主役を演じているとする説,或いは—SH基が補体の作用基として重要な役割を有しているとも云われる.また,細菌や血球が感作によつて元來有していた負荷電を著しく減ずるために補体を結合するとする説や,感作細胞表面に集つた補体と細胞内容物との間に生ずる電場の結果,細胞内の滲透圧が変化して溶解反應が起るのであるとも云われる.3),4)一方,補体中節は強い酸性基を有するコロイドによつて,又未節も強酸性コロイド及び強塩基性蛋白質又はコロイドにより不活性され,5)ヘパリン,カロニン硫酸塩も抗補体作用を有することが明かにされている.6)
 そこで吾々は正及び負のコロイドイオンの溶血反應に及ぼす影響を観察し,溶血機構の解明の手がかりを得んとし次のような実驗を行つたところ,負コロイドイオンが溶血反應を阻止し,正コロイドイオンが再びこれを活性化する事実を認めたので此の機構について更に檢討を加えてみた.

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生体の科学 第1巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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