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文献詳細

雑誌文献

生体の科学10巻1号

1959年02月発行

文献概要

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1958年度ノーベル化学賞受賞者 Dr. Frederic Sangerの業績

著者: 成田耕造

所属機関:

ページ範囲:P.51 - P.51

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 1958年度ノーベル化学賞はCambridge大学Medical Research Councilのタンパク質化学者Dr. F. Sangerに贈られた。彼はスイ臓ホルモンの一つであり,51個のアミノ酸からなるインスリンの化学構造を鮮かな手段で決定し,タンパク質の化学構造研究の前面に立ちはだかつていた大きな障壁を打ち壊わし,タンパク質の物理的特性,生理作用を解明する道をひらいた。先ず彼の決定したウシのインスリンの構造を示そう。タンパク質の化学構造,すなわちアミノ酸の配列順序を決定することは甚だ煩雑な仕事であり,十数年前までは殆んど不可能とされていた。Sangerの研究を成功に導いた一つの鍵はDinitrophenyl(DNH)法の考案といえよう。
 1-Fluoro-2,4-dinitrobenzeneを微アルカリ性でタンパク質に室温で作用させると,DNP基が遊離のアミノ基に導入される。DNP墓は酸加水分解では切断されないので,タンパク質のアミノ末端のアミノ酸はDNP誘導体として分離確認しうる。Sangerはインスリンのアミノ末端はそれぞれ1モルのグリンとフエニルフラニンであることを示した。従つてインスリン分子中には2本のポリペプチド鎖が存在し,互にシスチンのS-S結合で結合していることが推定される。Sangerはこの結合を過ぎ酸で酸化切断して2本のペプチド,A鎖およびB鎖を分別単離することに成功した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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