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研究室から
Lowryのミクロ生化学—セントルイス便り
著者: 鈴木旺
所属機関:
ページ範囲:P.103 - P.104
文献購入ページに移動 Oliver H.Lowryの薬理教室はKornbergの微生物,Coriの生化学教室とならんで,ここセントルイス,ワシントン大学の生化学を支える柱のひとつになつております。現教室員約60名という—事をもつてしても,その繁栄ぶりをうかがえますが,彼の仕事は日本ではタンパクやリンの定量法をおもいだす人が大部分で,だから彼は地道な分析屋さんぐらいにしか思われていないかもしれません。1953年Cori教授の薬理教室をうけついだ彼は,定量的組織化学(Quantitative Histochemistry)と銘うつた新しいミクロの体系を創りあげることに全力を傾けてきました。具体的には脳細胞のはたらきを組織化学的に研究しようとするものですが,染色して顕微鏡で覗くという定性的なものでなく,切片一個を更に細かく切りわけてその各細片(0.0001ガンマ〜2ガンマ)中の基質の量や,酵素活性を定量し,再編成することによつてもとの組織中での酵素の存在様式を画いてみせるという大変な仕事なのです。昨年スウエーデンから同じ道の大家Caspersonが訪れ,われわれしたしくその討論をきく機会を得ましたが,他の人には手も足も出ない機器を使つたCaspersonの仕事とは対照的に殆んど手製品と頭脳とで間に合わせているLowryの仕事の方にむしろアメリカらしからぬ清潔な香りを感じたのは私ばかりではないようでした。
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