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動物細胞における膜構造
著者: 安澄権八郎1
所属機関: 1奈良医科大学解剖学教室電子顕微鏡研究室
ページ範囲:P.54 - P.66
文献購入ページに移動電子顕微鏡が生物学的に応用されて20年にもならないが,試料作製技術の向上に伴い,急速な発展をなしつつある。細胞組織の固定,包埋,超薄切片等の方法の発見と電子顕微鏡の分解能の向上と相俟つて,すでに細胞内の10Å大の粒子が見えるようになり1),Watson & Crick2)の模型的DNA分子の存在も架空的でない時代となつた。かくして形態学と化学とは密接に結びつき,分子大から肉眼的大きさまで一連の関連が得られるようになりつつある。
固定方法はpalade3)考案の弱アルカリ性(生体組織に近いpH値)のオスミック酸が蛋白の凝固を防ぎ最良とされていたが,最近Luft4)によるKMnO4もこれに劣らぬ効果があることが証明されている。特にKMnO4は細胞膜並びに膜性細胞小器官の固定によいようである。包埋剤としてパラフィンに代つて合成樹脂の発見5)6),ガラスナイフ7)や超薄切片ミクロトームの考案等は今日の電子顕微鏡細胞学の発展に貢献している。以上の方法によつて得られた構造は,ほとんど生体構造に近いことが,囘折等の他の物理的あるいは光学的方法によつて証明されている8)。
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