文献詳細
文献概要
綜説
細胞膜透過と物質の移動に関する基礎的諸問題
著者: 妹尾左知丸1
所属機関: 1岡山大学医学部病理学教室
ページ範囲:P.110 - P.116
文献購入ページに移動 生命の躍動する世界と静かな死の世界,これを境するものは究極に於て一つの薄い膜である。そしてこの膜を通じて物質の吸収,代謝,分泌が営まれている。この故にこそ細胞膜透過の問題は古くから多くの生理学者の注目を惹いて来た。又現代の細胞学は膜構造そのものがエネルギーの産生,物質の合成その他の機構と密接に関連している事を示している。例えばミトコンドリア,小胞体,視細胞のロッド,植物葉緑体のグラナ,ある種の魚類の発電器管,神経のミエリン鞘等いずれも細胞の重要器官と思われるものは重層した膜から出来ている。従つてこれらの膜の微細構造とその性格を知る事は生命現象の究明に重要な手がかりを与えてくれるにちがいない。膜の透過性の観察は之等の膜の性格を知るために重要な示唆を与えてくれる筈であり,生物学の分野で最も興味ある問題の一つである。
然し残念ながら膜透過に対して吾々は現在尚普遍性妥当性のある理論と云うものをもつに至つていない。この方面の仕事は読めば読む程頭は混乱状態に陥るばかりである。その根本的な原因は仕事の大部分が細胞の微細構造を全く無視して行われていると云うことであつて,従つて吾々はこれまでの多くの仕事に対して細胞形態学の立場から理解するベースをもつていないと云う事である。
然し残念ながら膜透過に対して吾々は現在尚普遍性妥当性のある理論と云うものをもつに至つていない。この方面の仕事は読めば読む程頭は混乱状態に陥るばかりである。その根本的な原因は仕事の大部分が細胞の微細構造を全く無視して行われていると云うことであつて,従つて吾々はこれまでの多くの仕事に対して細胞形態学の立場から理解するベースをもつていないと云う事である。
掲載誌情報