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文献詳細

雑誌文献

生体の科学11巻3号

1960年06月発行

文献概要

論述

覚せいアミン中毒

著者: 加藤伸勝1

所属機関: 1松沢病院

ページ範囲:P.130 - P.137

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 Ⅰ.まえがき
 戦後15年,最早戦後ではないという言葉がきかれるようになつてから数年が過ぎた。確かに,現在,戦後のあの無秩序と不安に喘いだ異常な世相は人々の眼前から消え失せてしまつた。しかし,あの混乱が生んだ世相の犠牲者が精神病院の部屋の片隅に,慢性覚せい剤中毒者という姿で残されているのを,わたしたちは毎日この眼に見せつけられて,いまだに苦い思いを味わされている。
 覚せい剤,すなわち覚せいアミンが精神障害をひき起すという最初の記載は1938年にYoung-Scovilleよつてなされている。しかし,その後の諸外国での報告例はいずれも症例数が少なく,症状も一過性のもので,わが国で見られるような長期にわたつて症状の残るものの記載は見られない。この点,わたしたちは貴重な経験をしているわけで,この疾患と真剣に取組まなければならないことを痛切に感ぜさせられているところでもある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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