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雑誌目次

雑誌文献

生体の科学11巻4号

1960年08月発行

雑誌目次

巻頭言

Receptor Specificity

著者:

ページ範囲:P.161 - P.162

 The problems of receptor specificity are of considerable general interest and may be considered from several aspects:From a biophysical or physiological standpoint,specificity implies a differential sensitivity of a receptor to various types of stimuli, i. e.,mechanical, thermal, chemical or light. From a structural aspect morphological differentiation is often considered as an index of specificity. The psychophysical approach considers specificity, particularly in cutaneous sensation, as being concerned with perceived modalities of sensation. It is useful to distinguish these several aspects of the problem.

論述

腎糸球体の電子顕微鏡像

著者: 坂口弘 ,   鈴木康之亮

ページ範囲:P.163 - P.169

 まえがき
 腎臓の電子顕微鏡像については別の機会に数回にわたつて書いた事があり,それ等を簡単に纒めてほしいとの編集よりの依頼があつたので,今回は腎臓の中で糸球体に関する部分のみを記そうと思う。従つて本文に掲載した電顕写真の中には前記論文に使用したものをそのまま転載したもののある事をあらかじめお断わりしておく。詳細な点については下記の論文を参照されたい。
  綜合医学,15(9):672,昭33.
  綜合医学,15(12):870,昭33.
  綜合医学,16(5):541,昭34.
  Keio J. Med.8(3):129,1959.
 腎糸球体は複雑な血管の毬で,輸入血管から入り輸出血管へ出てゆく。そしてこれが発見された当時から血液中の老廃物を濾過して尿を作る部分である事は一般に認められていた。

黒血症の血色素異常

著者: 小原喜重郎 ,   小野繁

ページ範囲:P.170 - P.180

 岩手県の一地方に限局して存在する遺伝性の本症は,血液が特徴ある黒褐色を呈し,昭和10年木村氏により「黒褐色血液を主徴候とせる一遺伝性疾患」として症例報告され,ついで同12年,敷波氏は,「遺伝性アジソン氏病」として発表したのが研究の始まりである。
 その後,本症の地域的な特殊性,患者の精神的苦痛,劣等感等により,系統的な検索は望めない状態であつたが,戦後にいたり,田村氏等により遺伝生物学的に広汎な調査が行われ,本症は140年前に突然変異により発生し,優性遺伝をなす事を確め,遺伝性黒血症Hereditary Black BloodDisease,Nigremia hereditaria,あるいはNigremiaとして報告し,血液学的にも興味深い症例として注目されてきた。

保存赤血球の代謝—赤血球の老化現象とエネルギー代謝

著者: 中尾真 ,   中尾順子

ページ範囲:P.181 - P.192

 I.まえがき
 近来大量の輸血が行われるようになり,血液銀行の組織も発達して,血液を保存した後使用する事が多くなつた。
 輸血の際,血漿のみでなく,細胞成分も受血者の体内で生活し,充分な生命を維持する。しかし保存期間が長くなつた場合は,細胞成分の主要なものである赤血球も,受血者の体内で生存する期間が短くなり,溶血をおこし,Kの増加,ヘモグロビン血症その他の不快な症状を呈するにいたる。

強心配糖体の電解質能動輸送抑制効果—蛙皮における実験を中心として

著者: 中島重広 ,   橋本隆

ページ範囲:P.193 - P.202

 I.緒言
 多くの生体膜の両面には物質の濃度差が存在するが,その原因の或るものは簡単な物理化学的過程によつて説明が出来ない。即ち,生体は代謝エネルギーによつて維持されている,ある種の化学反応により,膜を通して物質を電気化学的ポテンシヤルの低い所から高い所へ移動させることが出来る。この過程を能動輸送と名附ける。(能動輸送の定義に関しては種々議論がある。(Rosenberg38),Ussing49),Linderholm30)等参照)。能動輸送は生体における諸現象,即ち吸収,分泌,排泄,興奮のみならず,広くすべての細胞,組織,生体における内部環境恒常性維持の基礎となつている。この問題に関する報告は同位元素法の導入により最近夥しい数にのぼつている(Murphy32),Shanes41),吉村58)等参照)。
 さてSchatzmann(1953)39)以来,強心配糖体及びaglyconeが,この能動輸送過程を選択的に抑制することが知られて来たが,Hajdu14)等は更に強心配糖体のもつ陽性変力作用(positive inotropic action)の本態は,心筋におけるK,Naの能動輸送阻害にあると云う。即ち心筋細胞内のNa,K量に変化が起り,これが心筋の収縮蛋白に対し陽性変力的に働くと主張している。強心配糖体の能動輸送抑制作用は,この意味でも注目されるべきであろう。現在この方面の研究主題は大きく2つに分れている。

報告

大脳皮質のDendritic PotentialとAfterdischargeに対するGABAの作用

著者: 岩瀬善彦 ,   溝渕孝雄 ,   池田卓司 ,   漆葉昌延

ページ範囲:P.203 - P.206

 大脳皮質を直接刺激して得られる所謂dendritic potential(DP)はdendrite膜の活動電位1)或いはシナップス電位2)などといわれ未だ定説がない。我々3)はDPの基本的波形である持続5〜10msの陰性電位についていろんな刺激条件(パルス幅,電位,電極配置)のもとに実験を行つてきた。更に継時刺激の実験4)からかかるDPは一定の不応期をもつSpike様電位(Spike)と加重性を有する緩電位(SP)とから成つており,前者の刺激閾値は後者にくらべて高い。勿論SPのみは単独に記録することができるが,刺激を少しずつ強くするとSpikingを起して遂にはSpikeが得られる。かかる実験と嗅球皮質5)の直接刺激で得られた結果からSpikeは表層に密に存在しているapical dendrite膜の活動電位であると云える。併しSPについては加重性を示す電位であると云う以外は発生部位についても分つていない。併しながらChangのrecovery process,或いはGrund festの不完全加重,Bishopの完全加重はSpikeとSPの基本的性質を夫々示すもので,DPに関する従来の諸説を統一的に解釈することが出来た。
 今回はかかるSpikeとSPに対するGABAの作用及び皮質の単一刺激によるAfterdischarge(AD)とrhythmic waveの出現について興味ある所見を得たので報告する。

Distribution of Creatine Phosphokinases among Mammalian Tissues

著者:

ページ範囲:P.207 - P.208

 The content of creatine phosphokinase in various tissues of mammalians were determined.The results showed a specific distribution of the enzyme among tissues, suggesting a biological and clinical significance of the enzyme.

寄書

Note on a Physical Model of Muscular Contraction

著者: ,  

ページ範囲:P.209 - P.210

 Szent Györgyi1) proposed a chemical equilibrium model on muscular contraction on the Varga's2) well-known experiments and concluded for it to be an entropy contraction like rubber elasticity.Such a chemical model is easy to understand but not convenient for physical analysis,so that we tried to extend his model to a physical lattice one.
 He assumed a contraction unit of actomyosin(AM)-ATP complex, autone, which has only two states, contracted(C)and relaxed(R),a equilibrium between them being expressed as follows;(AM-ATP)R⇄(AM-ATP)C(1)

海外だより

Hamilton Hallだより

著者: 重井達朗

ページ範囲:P.211 - P.212

 フツトボールとバスケットボールの強いOhio州立大学は,州庁のあるColumbus市にあります。4月も末となつて広大な美しいcampusはすつかり春になりました。ここに学ぶ男女学生の数は約25,000,日本人留学生も30人ほど居ます。医学部生理学教室はcampus南端のHamilton Hallにあります。数年前,昭和医大の市河教授がDr. Bozlerのところに留学されていました。御多分に漏れず国際色豊かですが,昨年大阪府大農学部の柳谷氏と,私が来た他,タイ,印度からも1人ずつ来て東洋色を加えています。
 ここの生理はなかなか大世帯で,Professor 8人(中1人はProf. Emeritus),Associate Prof. 2人,Assistant Prof. 6人,その研究領域も循環系,筋生理,航空生理,生物物理,内分泌,放射線,脂質代謝,視覚の生理といつた具合に広汎にわたつています。大学院学生21人,実験助手約15人,他に器具管理係,動物飼育係及び電気係計9人がいて,教育,研究を助け,officeには4人の事務員がいます。スタッフ及び16名の顧員の俵給総額が年間約20万ドル,一方Research grantの総額がやはり20万ドル前後とのことです。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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