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文献詳細

雑誌文献

生体の科学11巻4号

1960年08月発行

論述

強心配糖体の電解質能動輸送抑制効果—蛙皮における実験を中心として

著者: 中島重広1 橋本隆2

所属機関: 1東京大学医学部生理学教室 2東京大学医学部栄養学教室

ページ範囲:P.193 - P.202

文献概要

 I.緒言
 多くの生体膜の両面には物質の濃度差が存在するが,その原因の或るものは簡単な物理化学的過程によつて説明が出来ない。即ち,生体は代謝エネルギーによつて維持されている,ある種の化学反応により,膜を通して物質を電気化学的ポテンシヤルの低い所から高い所へ移動させることが出来る。この過程を能動輸送と名附ける。(能動輸送の定義に関しては種々議論がある。(Rosenberg38),Ussing49),Linderholm30)等参照)。能動輸送は生体における諸現象,即ち吸収,分泌,排泄,興奮のみならず,広くすべての細胞,組織,生体における内部環境恒常性維持の基礎となつている。この問題に関する報告は同位元素法の導入により最近夥しい数にのぼつている(Murphy32),Shanes41),吉村58)等参照)。
 さてSchatzmann(1953)39)以来,強心配糖体及びaglyconeが,この能動輸送過程を選択的に抑制することが知られて来たが,Hajdu14)等は更に強心配糖体のもつ陽性変力作用(positive inotropic action)の本態は,心筋におけるK,Naの能動輸送阻害にあると云う。即ち心筋細胞内のNa,K量に変化が起り,これが心筋の収縮蛋白に対し陽性変力的に働くと主張している。強心配糖体の能動輸送抑制作用は,この意味でも注目されるべきであろう。現在この方面の研究主題は大きく2つに分れている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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