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文献詳細

雑誌文献

生体の科学11巻5号

1960年10月発行

文献概要

綜説

分泌の形態学

著者: 市川厚1

所属機関: 1東北大学医学部解剖学教室

ページ範囲:P.228 - P.236

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 超薄切片法による電子顕微鏡的研究の進展にともなつて,細胞の形態学はめざましい発展をとげつつあるが,なかでも細胞内に広く認められる膜系の存在は,細胞の営むいろいろな代謝の過程を知るうえにきわめて重要な意味をもつている。たとえば,腺細胞における分泌の機構について,これらの膜系が果す役割を観察すると,あるいは細胞内における蛋白合成の場として,あるいは代謝産物を細胞体外に運び出す能動輸送の手段として,つねに積極的な役割を演じていることが明らかになつてきた。
 しかしながら,細胞の営む分泌機能とは,細胞が比較的低分子の素材を血中から摂取し,これを一定の高分子物質にまで合成し,分離し,さらに濃縮あるいは貯蔵したのち,細胞体の外に放出するという一連の過程を含んでいる。したがつて,ある種の細胞で分泌機能が営まれているということを形態学的に証明するには,いわゆる分泌サイクルに従つて増減する分泌産物を明瞭な形のうえで把え,さらにこのものが形成される過程と放出される機序について明らかな知見がえられなければならない。こうした意味で,従来もつともしばしば研究の対象にされてきた膵外分泌細胞について考えてみても,分泌顆粒の形成と放出の機序についてはなお多少の疑問が残されており,必らずしも充分に解明されたとは云い難いようである。そこで,これまでの知見をもとに,膜系からみた分泌の機構について2,3の問題を考察してみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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