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文献詳細

雑誌文献

生体の科学11巻5号

1960年10月発行

文献概要

報告

神経と筋肉の接合部(筋終板)の電気的性質

著者: 大村裕1 富田忠雄2

所属機関: 1鹿児島大学医学部生理学教室 2九州大学医学部生理学教室

ページ範囲:P.247 - P.255

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 1.筋膜および筋終板におけるイオン透過性
 我々が運動をするときは骨格筋の収縮が起つているが,この時は中枢から末梢へ運動神経線維を伝導して来た興奮が神経と筋の接合部を越えて筋線維に伝達されているわけである。運動神経線維の終末が接合している筋の細胞膜の部分は終板(end-plate)と呼ばれる特殊の構造になつており,他の部分と異つた性質をもつている。この性質を理解するために先ず終板部以外の筋の細胞膜について考えてみよう。イオン説(Hodgkin 1951)によれば,筋線維などの細胞膜は活動していないときは,KおよびClイオンのみを透過しその他のイオンはほとんど透過しない。従つてKおよびClイオンはDonnanの膜平衡の条件に従つて膜の両側に分布している。すなわち,〔K〕i〔Cl〕i=〔K〕o〔Cl〕o(1)の関係が成立する。この式で〔K〕i〔Cl〕iは細胞内の〔K〕o〔Cl〕oは外液中のK,Clイオンの活動度である。筋線維などの細胞内は細胞外よりもKイオンの濃度が高く,Clイオンの濃度が低い。例えばカエルの縫工筋の膜内外におけるイオンの濃度は第1表で示した値であり,これから分るようにほぼDonnanの条件が満されている。
 このように細胞内部は外部よりKイオンの濃度が高く,Clイオンの濃度が低いために,膜の両側に次の式で示される濃淡電位差が形成される。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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