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端板伝達の促進,抑制についての実験
著者: 竹内虎士1
所属機関: 1東京教育大学体育学部生理学教室
ページ範囲:P.39 - P.49
文献購入ページに移動① 反復刺激の頻度ならびに休息の挿入を変えることによつて,それぞれ一定の型の疲労回復の曲線がえられる。
② この疲労と回復の過程は主として端板部における代謝産物の集積と離散とのバランスによるものと推定される。
③ そこで端板物質であるAchならびに筋収縮により生産される乳酸を端板に作用させてみたところAchでは10−8%(10−10)乳酸では0.006%(6×10−5)のところに臨界濃度があり,これより高濃度では抑制され,低濃度では促進される。
④ したがつてこの疲労と回復の効果は端板におよぼすAch,乳酸などの代謝産物の活用が重要な役割をもつと考えられる。
⑤ 端板毒Curareも,Ach,乳酸と同様の効果があり,10−6%以下の低濃度では促進的に作用するものでいわゆるCurareの端板抑制効果は10−6%濃度以上でのみ,みられる。
⑥ 同様なことはEthylalcohol及びAcetaldehydeによつて見られ,臨界濃度はEthyl-alcoholでは大体0.15% Acetaldehydeでは0.008%であつた。
⑦ 神経遮断剤Banthineはもつぱら抑制的(遮断的)作用のみで,促進作用は認められなかつた。Curareの如き端板毒とは作用機構が異るものである。
以上の成績から,いわゆる筋の疲労曲線は主として端板部における伝達の疲労と回復に由来するもので,端板伝達の促進抑制がその重要な役割を果たすものであり,またこの端板効果は神経筋の代謝産物の濃度によつて大きく影響されると云うことが出来る。
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