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巻頭言
学問の境界領域
著者: 岡小天1
所属機関: 1東京都立大学物理学教室
ページ範囲:P.53 - P.53
文献購入ページに移動 学問が進むにつれますます専門化していく傾向のあることは事実である。自然科学関係をみても物理学・天文学・化学・薬学・生物学・医学・農学・工学などとわかれ,さらにその各が多くの細かい専門分野にわかれ,その各分野もまたさらに細かい専門分野にわかれるといった具合である。このようにして,専門家はますます狭い範囲で深く堀り下げていこうとする。この場合,専門分野と専門分野との間にはいつの間にか自然に障壁ができ,これは学門の専門化とともにますます高く,ついには乗り越え難いものとなる。
さて専門分野がその狭い範囲内に止まってしかもどこまでも深く堀り下げていくことができるならば,学門の専門化,分化の現象は誠に喜ぶべきものといわなければならないが,実はここに大変奇妙な現象が現われてくる。それは一つの狭い専門分野の中にだけ立てこもっていたのでは,堀り下げていく速さがしだいににぶり,その専門分野の進歩に限度があるという一事である。このことはいろいろな専門分野についてしだいに明らかになってきた。ある専門分野ではかなり以前から,またある専門分野ではようやく近頃になって,このような状態に達した。逆にいえば,このような飽和状態に早く達した分野ほど,進歩が早かったものといえよう。しかしこれは学問の進歩の一里塚にしかすぎないのであって,実はこれから先の道が問題なのである。
さて専門分野がその狭い範囲内に止まってしかもどこまでも深く堀り下げていくことができるならば,学門の専門化,分化の現象は誠に喜ぶべきものといわなければならないが,実はここに大変奇妙な現象が現われてくる。それは一つの狭い専門分野の中にだけ立てこもっていたのでは,堀り下げていく速さがしだいににぶり,その専門分野の進歩に限度があるという一事である。このことはいろいろな専門分野についてしだいに明らかになってきた。ある専門分野ではかなり以前から,またある専門分野ではようやく近頃になって,このような状態に達した。逆にいえば,このような飽和状態に早く達した分野ほど,進歩が早かったものといえよう。しかしこれは学問の進歩の一里塚にしかすぎないのであって,実はこれから先の道が問題なのである。
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