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雑誌文献

生体の科学12巻3号

1961年06月発行

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巻頭言

我が国の欧文誌を守ろう

著者: 江橋節郎

ページ範囲:P.105 - P.105

 ある領域における一国の研究水準を知るには,その国の学術雑誌(定期刊行誌)が,国際的にどの様な評価をうけているかを見ればよいといわれる。たとえば,Journal of Physiology, Journal of Biological Chemistryのもつ権威と内容は,確かに英国及び米国がそれぞれの領域で占める役割にふさわしいものである。では,我が国の現況はどうであろうか。
 我が国の研究水準は,この2・3年,経済の好況,国際的学術交流の活溌化,若手の発言権の増加などの背景のもとに,著しい発展を示しているといわれる。では,この事が,学術誌(ここでは問題を欧文誌に限ることとする)に充分反映されているであろうか?

綜説

細胞内酵素系(その1)

著者: 小川和朗

ページ範囲:P.106 - P.120

 Ⅰ.緒言
 酵素の細胞内微細局在性を知る事は,細胞内諸organellesの機能,引いてはorganelles相互間の機能的役割を追求する上に大切な事である。細胞内諸organellesの,詳細な代謝上の意義が判れば,細胞の発生,分化,或は腫瘍化等の機構解明に資する所,大なるものがある。
 諸酵素の細胞内局在性を検するには,通常,二通りの方法が用いられている。組織のhomogenatesを高速にて諸分画に分画遠沈する方法(differential centrifugation)と,細胞化学的に酵素活性を染色法により検出し,in situに検鏡(光学又は電子顕微鏡)する方法とである。

新チトクロム学説

著者: 奥貫一男

ページ範囲:P.121 - P.129

 Ⅰ.はしがき
 細胞呼吸は微量の青酸や酸化炭素(以下COと記す)などで強く阻害され,COの阻害が光を照射すると回復することから,活性基として鉄化合物をもつ酵素がはたらいていると考えられ,それが古くは呼吸酵素,チトクロムオキシダーゼなどと呼ばれていたのであるが,近頃では自酸化性のあるチトクロムa3というものが同じ意味に用いられている。名称はちがつていても,それらはいずれも細胞呼吸の末端酸化酵素の役割を果しているものを表現しているのであるが,本体は未詳であつた。Warburgはこの酵素のCO錯化合物が吸収する波長の光をあたえた時に効果的に解離して酵素作用をあらわすと仮定して細胞呼吸のCO阻害を回復させる単色光照射実験を行い,590,545をよび430mμ附近でCO阻害回復がみられたことから,呼吸酵素のCO錯化合物の吸収帯は,α,βおよびγがそれぞれ,それらの位置にあるヘムタンパク質であると結論した。しかし,Warburgがノーベル賞受賞記念講演1)で"呼吸酵素は細胞に微量しかふくまれていないから,それを抽出精製して研究することは,あたかも星にある物質を人が手にいれることのように困難である"と述べたように,だれも呼吸酵素を単離し,その性質をあきらかにすることに成功しなかつた。

タンパク質の機能と構造

著者: 今堀和友

ページ範囲:P.130 - P.136

 タンパク質の機能と構造
 タンパク質の名で呼ばれるものには実に多種多様のものが含まれているから,その各々について機能と構造の関係を論ずることは不可能である。生物体内のタンパク質の中,かなりのものはその生物学的機能が明らかでないからでもある。従つて,ここでは機能の比較的明確にされている,酵素及び抗原について,今日迄知られていることを若干まとめてみたいと思う。タンパク質に余りなじみが深くない読者の方の事をも考えて,先ず構造の概念と実験法について説明しよう。

神経筋接合部の生理と薬理

著者: 大塚正徳

ページ範囲:P.137 - P.151

 Ⅰ.緒言
 運動神経線維の末端は骨格筋線維の一部──終板──と相接し,所謂シナプスを形成している。このシナプスを神経筋接合部neuromuscular junction,myoneural junctionと呼び,運動神経からの衝撃はこの部分を通つて筋に伝えられる。
 神経筋接合部が昔から多くの研究者の興味を集めたのは,勿論一つには神経筋接合部それ自体の重要性によるものであるが,その他に特に次の二つの理由を挙げることが出来る。第1に,神経筋接合部をシナプスの一つの原型と見做すことが可能であり,ここで得られた知見が他の実験のもっと困難なシナプス,例えば中枢神経系のシナプス55),自律神経系のシナプス20)60)の性質を知る上に多くの示唆を与えると思われる。事実,神経筋接合部で得られた数々の知見が,例えば脊髄の前角細胞の部分のシナプスに就いても略々当てはまることが知られている55)。第2には,神経筋接合部が研究対象として多くの便宜を有しており,それを用いて実験することが比較的容易なことである。例えば神経筋接合部の位置を顕微鏡下に容易に認めることが出来るし,又神経線維1本が筋線維1本に終つてシナプスを形成している標本を用いて実験することもさほど困難ではない123)。又微小電極を用いた実験の対象としても極めて好適である65)

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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