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巻頭言
欧文抄録について
著者: 高木貞敬1
所属機関: 1群馬大学医学部生理学教室
ページ範囲:P.153 - P.153
文献購入ページに移動 近年日本語で書いた論文に欧文抄録(主として英文)をつけることが習慣のようになつています。しかし私はそれについて異論を持つています。
もう大分前のことですがこの巻頭言で東大脳研の時実教授が外国の学者に逢われた時のことを書いておられます。その内容はある生理学者に逢われた折,その学者は「婦人がハイヒールをはいた時,下肢筋がどのように働くかという研究をしている」と云つてその内容を得々と話した。そこで時実教授はそんなことは日本ではすでにもつと精密な方法でやつていると云つてその紹介をされた所,彼は大あわてに色をなしてそれはどの雑誌に発表されているかと尋ね,それが日本語の何々という雑誌だと知るとそれなら安心だといつて,"日本語は国際語でない"から自分の方にPriorityがあると答えたそうです。また別の外国の学者は恰度日本から到着した論文をとり出して英文で書いたもののみを残し,和文で書かれたものは英文抄録がついていたにも拘らず,いらないといつて時実教授にくれたとのことです。これらのことを同教授は大変憤慨して書いておられます(生体の科学,第8巻第1号,1957)。
もう大分前のことですがこの巻頭言で東大脳研の時実教授が外国の学者に逢われた時のことを書いておられます。その内容はある生理学者に逢われた折,その学者は「婦人がハイヒールをはいた時,下肢筋がどのように働くかという研究をしている」と云つてその内容を得々と話した。そこで時実教授はそんなことは日本ではすでにもつと精密な方法でやつていると云つてその紹介をされた所,彼は大あわてに色をなしてそれはどの雑誌に発表されているかと尋ね,それが日本語の何々という雑誌だと知るとそれなら安心だといつて,"日本語は国際語でない"から自分の方にPriorityがあると答えたそうです。また別の外国の学者は恰度日本から到着した論文をとり出して英文で書いたもののみを残し,和文で書かれたものは英文抄録がついていたにも拘らず,いらないといつて時実教授にくれたとのことです。これらのことを同教授は大変憤慨して書いておられます(生体の科学,第8巻第1号,1957)。
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