文献詳細
綜説
文献概要
今から30年程前Fenn & Cobb1)はネズミの筋を長時間反復刺戟すると筋はNaをえて,ほぼ等量のKを失い,刺激した筋を静置しておくと濃度勾配に反してKが血液から筋内に移動し,その代りにNaが筋からでる(……potassium is repeatedly observed migrating from blood to muscle against a steep concentration gradient in exchange for sodium)といふ事実を発見した。彼等は,刺激によつて筋がNaをうることは(同時にNaの代りにKが等量でるということも),筋の活動に伴いNa+に対する透過性が増大するという考えによつて説明することができたが,濃度勾配に反して恢復期にKが筋内に入りNaが筋からでるという事実を説明するのに苦労している。幸にいまではHodgkin等(2)のすぐれた実験に基く学説のおかげで,此の恢復期のNaの排出,Kの吸収という事実を説明するのにNa-Kポンプ機構というものを持ちだすことができる。即ち,第1図のように神経・筋線維の活動に伴い他働的な輸送機構で濃度勾配にしたがいNa+は細胞内へ,K+は細胞外へ移動するが,恢復期には代謝過程よりエナージーの供給をうけて物理化学的勾配に逆いNa+を排出し,Kを吸収する。後者は前者とは全く別の機構に基ずくもので,いわば生細胞の特性であるということができる。
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