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文献詳細

雑誌文献

生体の科学13巻5号

1962年10月発行

文献概要

特集 生物々理—生理学生物々理若手グループ第1回ミーティングから

神経回路

著者: 塚原仲晃1

所属機関: 1東京大学医学部附属脳研究所生理学部門

ページ範囲:P.243 - P.249

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 Ⅰ.情報処理の場所
 脳での情報処理は,シナプスにおけるものと,ネウロン網におけるものに大別できる。シナプスでの情報処理は,主として細胞内導出によるシナプス電位の分析の結果,興奮性,抑制性後シナプス電位の多数決原理に従つていることが明らかにされている。1)また,近年,シナプス前部でTransmitter Substanceの放出量を調節することにより,後シナプス電位の大きさを支配する新しい制御方式が明らかにされた。シナプス前抑制(Presynaptic Inhibition)と呼ばれているこの現象は脊髄の前柱運動ネウロンのシナプスではじめて見出されたが2)3),脳の多くのシナプスで同様の現象がみられる可能性があり,1つの重要な制御方式として注目されている。
 ところで,基本的には上のような原理に従うネウロンまたはシナプスが組合わさつた神経網では,単一のネウロンやシナプスの性質に還元できない幾つかの性質があることが予想され,このいわば回路の特性ともいうべきものが,そこでの機能を決定していると考えられる。このような回路は,色々な組合わさり方で,複雑に錯綜しているが,この構成の多様性が,とりもなおさず,そこでの情報処理の複雑さ,精巧さのもととなつている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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