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酸化還元酵素と不確定性原理
著者: 品川嘉也1 高石泰子1
所属機関: 1京都大学医学部生理
ページ範囲:P.267 - P.268
文献購入ページに移動 酸化還元酵素のうちで直接,電子転移を行う酵素,例えばフラビン酵素やピリジン酵素で目につくことはこれらが何れも補酵素の活性基として芳香環即ちπ電子系をもつていることである。これらの酵素は最終的には水素原子の移動を行うのであるが,実際の反応としては先ず電子のみが受容され,プロトンは水素イオンとして反応液中を移動するものであることに注意しよう。
これらの酵素が電子転移を行うためには,電子を補酵素部分で"捉え"なければならないとされている。電子を空間内のある限局された領域に閉じ込めようとすると,量子力学の不確定性原理によつて,電子の運動量に一定のあいまいさが生じる。酵素が酸化還元反応速度を適当な値に保つ為にはこの運動量の不確定さを一定の範囲におさえなければならない。今,酸化還元酵素が電子を⊿Xの範囲で捉えねばならないとするとこの電子についての不確定性関係は,
これらの酵素が電子転移を行うためには,電子を補酵素部分で"捉え"なければならないとされている。電子を空間内のある限局された領域に閉じ込めようとすると,量子力学の不確定性原理によつて,電子の運動量に一定のあいまいさが生じる。酵素が酸化還元反応速度を適当な値に保つ為にはこの運動量の不確定さを一定の範囲におさえなければならない。今,酸化還元酵素が電子を⊿Xの範囲で捉えねばならないとするとこの電子についての不確定性関係は,
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