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特集 第9回中枢神経系の生理学シンポジウム
文献概要
脳の一構成要素であるgliaは,その数に於て他の要素であるneuronをはるかに凌駕している。併し,Virchow52)やWeigert53)等の記載以来,neuronの支柱或は其の防御組織,即ち非活動性細胞と考へられたgliaは,脳の機能的観察上ほとんど注意を払はれなかつた。それは,neuron theoryに集中するおびただしい数の研究に較べて,gliaの研究の極めて少い事からも明かである。脳の電気生理にgliaの役割を注目した人もあつたが(Kornmüller)24),その議論は,全く無価値の雑音の如くかへりみられなかつた。とは云へ,gliaは決して非活動性の細胞ではない。何等かの積極的な機能,即ち神経活動の保持の為の機能を持つとの考へが,既にCajal4)5) Held14)等の先達によつて指適されていた。以来,neuron theoryの蔭にgliaへの静かな凝視は続けられていたのである10)。かくて,最近の組織化学や電子顕微鏡の発達に伴い,この長い間の形態学的研究は,gliaの機能的重要性をより強く主張するまでに発展を示した。その著名な例を,1958年に開かれたBiology of Neurogliaのシンポジウム3)で見る事が出来る。
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