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文献詳細

雑誌文献

生体の科学14巻3号

1963年06月発行

文献概要

論述

活動電位の持続と筋張力との関係

著者: 入沢宏1

所属機関: 1広島大学医学部生理学教室

ページ範囲:P.129 - P.138

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 筋組織において,細胞膜の興奮がいかに収縮と関連しているかという問題は,興奮性組織の諸問題を理解する為に最も本質的な問題である。しかしこの問題を一歩深く考察すると未解決の多くの謎があつて,将来の研究が俟たれている分野であることに気付く。
 筋の興奮と収縮との関係については既にEngelmann,Rezius等によつて1800年代から考察されたが,Kuffler23)は痙縮に関連している電気現象を研究し,活動電位なしでも収縮は起りうるが,細胞膜の脱分極が筋収縮現象には不可欠の要素であることを見た。渡辺44)はこの問題を直接法で検討し,細胞内を流れる電流では筋の収縮を起しえないで,膜が脱分極した時のみ収縮が起ることを明らかにした。この事実はさらに,Stenknudsen39)やOrkand29)らによつて確められた。Orkandは甲殻類の筋で単一細胞を刺激して脱分極させると,刺激した細胞のみに張力が発生し,隣接する細胞では膜電位の変化も収縮も起らない事を利用し,膜電位が静止時より約25mV低下すると張力が発生する事をみた。この様に膜電位の減少が筋収縮を起す第一歩となることは疑いない所であるが,膜の現象は細胞膜の表面より数ミリミクロンの所迄しか影響しないと考えられるので,膜よりさらに数10ミリミクロン以上も下層に存在する筋原繊維に興奮を伝えるには何らかの機構を必要とする。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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