icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学14巻4号

1963年08月発行

印象記

ロンドンだより

著者: 遠藤実1

所属機関: 1東大医学部薬理学教室

ページ範囲:P.209 - P.210

文献概要

 Robert Browningの詩に,外国にいて故国イギリスの春を想い,その美しさを讃美したものがありますが,たしかに英国の春はすばらしいものです。それまでの冬が余りにも暗く,うつとうしかつただけに対照の妙が発揮されるということもあるのでしよう。とにかく4月になると,冬中はほとんど顔を見せなかつた太陽が惜しげもなく光を降り注ぐ下で,丸ぼうずだつた木々はすつかり新緑でおおわれ,家々の窓や前庭には色とりどりの花が咲いて,一時に目もさめるばかりの状態になります。自分の住んでいる見慣れた平凡な街がこんなにも色彩に富んで美しいものだつたか,とあらためて感心したりしたものでした。それにしても,あの冬の陰鬱さは,寒いとは言え毎日日本晴れのすがすがしい冬しか知らない私には驚きでした。彼らの粘り強さも,こんな冬を毎年辛抱強く過ごして来たところから培われてきたのかも知れません。
 ロンドンに来ての第一印象は,東京よりもむしろ田舎だという感じさえするということでした。タクシーの型の古いのは有名ですが,街を歩いていると,ときどき博物館から出て来たかと思われるような車が堂々と走つているのも見かけます。地下鉄網がよく発達しているのには感心しますが,車体は外見も内部も日本のものの方がずつとスマートですし,こちらのは横揺れがひどく,時には乗つていて気分が悪くなることもあります。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら