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文献詳細

雑誌文献

生体の科学14巻6号

1963年12月発行

文献概要

論述

ヘモグロビンのヘム間相互作用と光吸収スペクトルの関係について—職業病にみられるヘモグロビンの変化

著者: 長谷川弘道1 佐藤光男1

所属機関: 1労働省労働衛生研究所

ページ範囲:P.303 - P.310

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 産業医学,とくに職業病の分野ではp-クロロニトロベンゼン中毒,ダイナマイト中毒(ニトログリコール中毒)などのとき,ヘモグロビン(Hb)の酸素親和性が,大幅に変化することが知られている1〜3)。第1表にその一例を示した。これらの労働者のHbの酸素親和性が,変化した原因が,那辺にあるかをたしかめることは,中毒学上非常に必要なことである。
 さてHbと酸素との結合は,Hbの酸素飽和度をY,酸素分圧をpとするとY=Kpn/l+Kpnであらわされ,一般にn=2.8であることが,しられている4)5)。家兎にニトログリコールを与えて,中毒させたとき2),Yとlog pとの関係は,正常Hbの2.8次のシグモイドに比し,n=2.8〜1と減少するが,このnの値の低下は,Hb分子に結合している4コのヘム間の相互作用の切断によるものと考えられるので,問題は相互作用の切断の機構をしらべればよいことになる。ヘム間の相互作用はWyman5)6),Pauling7)或はRiggs8)等によつて論じられているが,現在の段階では,Hbの酸素親和性とヘム間相互作用をむすびつける事実の実験的証明がないため,単に推測的討論に止まつている。しかしこの問題の解明は中毒学的にHbをしらべる場合,焦眉の急である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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