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文献詳細

雑誌文献

生体の科学14巻6号

1963年12月発行

論述

爪の構造

著者: 小平英太郎1

所属機関: 1順天堂大学医学部解剖学教室

ページ範囲:P.311 - P.318

文献概要

 ヒトの手の指を縦断し,その断面を実体双眼顕微鏡で検査した。次いで爪のセロイジン包埋材料をチオグリコール酸アンモンに漬けて,5-数10μの組織標本を作り,また従来の方法で5μ以下のパラフイン切片を作つた。更にまた一部は電子顕微鏡で観察し,次のような所見を得た。
 爪半月の前縁から爪根の後縁にわたり,爪板と胚芽層の間に,肉眼的に白く見える薄層(仮にRanvier層と名づける)があり,この層の前縁と爪半月の前縁は位置的に一致する。Ranvier層は成人では厚さ60μ,あるいはそれ以上に達し,ここの細胞はSubstance onychogène(Ranvier, L. 1875)という顆粒状の物質を多量に含み,そのため透過光線では褐色に,落下光線では白く輝いて見える。
 Substance onychogèneは厚さ5μ以下のパラフィン切片では線維状に見え,Heidenhainの鉄ヘマトキシリンで強く染まり,またエオジン,酸性フクシン,オランゲG,Pearse法でも良く染まる。
 電子顕微鏡的にはSubstance onychogèneは直径0.25μ,長径2.5μぐらいの小円柱で,電子密度が大きく,均質に見え,角化張原線維といわれているものに一致する。
 以上の所見から次の結論を得た。
 1)爪半月が白く見えるのはSubstance onychogène(Ranvier, L. 1875)の乱反射にもとづく。
 2)Substance onychogèneは顆粒でなく,角化張原線維である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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