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生体の科学15巻3号

1964年06月発行

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特集 第13回日本生理科学連合シンポジウム

巻頭言 第13回日本生理科学連合シンポジウムの意義について

著者: 内山孝一

ページ範囲:P.101 - P.101

 日本生理科学研究連絡委員会(JUPS)は日本学術会議の中に設けられ,加盟学会は生理学・薬理学・生化学・衛生学・内分泌学・ビタミン学・動物学・植物学・農芸化学および体力医学の10学会である。初代の委員長は久野寧博士で,現在は慶大の加藤元一博士である。JUPSは国際生理科学連合(IUPS)に加盟しており,1964年9月1日〜9日,東京で開催されることに決定している第23回国際生理科学会議(XXⅢ International Congress of Physiological Sciences,ICPS)を実際に動かしている母胎である。現在,学術会議に設けられている組織委員会は主としてJUPSによつて構成されている。
 第13回の学術講演会は1963年11月10日(日),駿河台日本大学病院の新装成つた講堂で開かれ,シンポジウムの一つは,放射線生物学の基礎問題,シンポジウムの他の一つは,細胞の微細構造とその機能という題をえらんだ。ここには第二のシンポジウムの特集をすることになつたとのことで,その意義について幹事役をした私から述べるようにとの依頼を受けた。幹事は私の同僚,森信胤教授(日大医学部生理学)と栖原六郎教授(日大歯学部生理学)の3名であつた。

自律神経系の電気生理学と形態学

著者: 内薗耕二

ページ範囲:P.102 - P.113

 I.はじめに
 紙巾の関係で,ここでは問題を主として自律神経の電気生理学とその微細構造に限りたい。特に最近著者の取扱つて来ている交感神経ニユーロンとシナプスの機能と構造について考察してみることにする。
 体制神経系のニユーロンとシナプスについては過去10数年にわたり,極めて精緻な電気生理学的研究が行われて来た。なかでもJ.C.Ecclesの研究がもつともすぐれており,彼の近著1)によつて我々はこの方面の最も新しい知見にふれることができる。

細胞顆粒,ことにmicrosomeの生化学的機能

著者: 箸本雄吉

ページ範囲:P.114 - P.118

 電子顕微鏡技術の発達にともない,光学顕微鏡では認め得なかつた種々の微小有形成分が細胞内に存在することが明らかにされた。microsomeもこのようにして発見されたものの一つであるが,mitochondriaとならんで細胞質における重要な小器官の一つにあげられている。これは各種細胞内に存在しているが,その量および性状は細胞の種類により,かならずしも一様ではない1)-3)
 microsomeの生化学的研究は電子顕微鏡による形態学的検索を併用することにより進められ,多くのことが次第に明らかにされつつあるが,mitochondriaにおける機能ほどには明らかでない。超遠心法により分離されたmicrosome分画は電子顕微鏡的にはendoplasmic reticulum4)-6)といわれているものであるが,Palade2)はこれをさらにsmooth surfaced microsome(SM)と,rough surfaced microsome(RM)とにわけた。後者はその表面にribosomeを有するために顕微鏡的に粗な感じを与え,前者はribosomeを欠いているために滑らかな感じを与える。この両者は密度こう配分画法7)-9)により分離することができる。第1表はかかる密度こう配分画法の一例で,Fouts7)の方法に改良を加えた私共の分画法10-12)である。

筋原線維の構造と収縮の機序

著者: 名取礼二

ページ範囲:P.119 - P.124

 Ⅰ
 生きている状態を変えないようにして,骨格筋を分割できる最終の単位は筋線維であり,これに傷をつけて分割すれば生きている性質は失われると考えられていた。しかし,流動パラフィンその他油中に筋線維をいれて,形質膜を剥離し,中の筋原線維をとり出すと,いろいろの性質が生きているときとほとんど変わらない標本ができる1)
 そこで,生理的性質を残存するという立場で筋線維の分割の限界を筋原線維の段階までおしすすめられる。

物理化学的な膜理論について

著者: 渡辺昭

ページ範囲:P.125 - P.135

 Ⅰ.序論
 最近20年間に,細胞膜電位についての知見は,飛躍的な進歩をとげた。その直接の動機となつたのは,Hodgkin & Huxley(1945)9)及びCurtis & Cole(1942)2)による,細胞内電極法の創案である。それまでは,膜電位の測定には,いつも,幾つかの困難が伴つていた。例えば,細胞外液が,測定すべき損傷電位を短絡して,その絶対値を不正確にしてしまうことは,その1つである。細胞内電極法は,この様な困難をとり除いた。その結果,膜電位についての知識の量は,今までと比較にならない程急速に増大していつた。それまで存在していた興奮についての理論は,Nernstにはじまる刺激理論と,Bernsteinの膜説とが主なものであつた。しかし,これらの説では,新しく見出された豊富な実験事実を満足に説明することができなかつた。これらの事実を説明するために提出された理論のうち,最も優れたものは,Hodgkin & Katz(1949)11),及びHodgkin & Huxley(1952)10),によつて発表された理論である。この理論は,活動電位の発生にナトリウムイオンが重要であることを強調するので,一般にSodium theoryと呼ばれ,イカの巨大線維膜に発生する興奮現象について,定量的な説明を与える。

論述

電圧—電流—時間特性による生体興奮膜の解析(その2)

著者: 東野庄司

ページ範囲:P.136 - P.145

 Ⅵ.生体興奮膜におけるinductance成分
 HodgkinとFrankenhaeuser(1959)の行なつた実験(Fig. 25)で,Caを減らした液において膜にshort shockを与えたとき,及びGrund fest等の行なつた実験(Fig. 26)で,膜をある程度depolarizeしてからshort shockを与えた場合には,減衰振動が発生する。
 Hodgkinが計算した結果(1952)は,inductanceが約0.39henryで,ColeとBaker(1941)は別にimpedance bridgeによる測定(Fig. 27)から0.2henryという値を出している。このimpedance locusから考えられる等価回路は,抵抗とinductanceの直列になつたものにcondenserが並列に接続されたものである。

報告

Rabbit Ear Chamberによる微細循環動態の研究法について(その2)

著者: 浅野牧茂 ,   吉田敬一 ,   田多井吉之介

ページ範囲:P.146 - P.150

 既報したrabbit ear chamberを用い,mi-crophotoelctric plethysmography(-m;M PPG)をさらに発展させ,微細循環における個々の血管および血流動態を種類別および部位別に誘導記録できるsegmental MPPGを考案し,種々の循環動態を記録し,それが顕微鏡直視下の所見をよく半定量的かつ連続的に誘導していることを確めた。この際,周波数が1分当りほぼ1ないし3サイクルの基本的周期変化の外に,4ないし8サイクルおよび8ないし12サイクルの周期変化が微細循環に明らかに認められ,またplasma skimmingおよび血球流の不連続現象も記録された。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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