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特集 第13回日本生理科学連合シンポジウム
物理化学的な膜理論について
著者: 渡辺昭1
所属機関: 1東京医歯大生理学教室
ページ範囲:P.125 - P.135
文献購入ページに移動最近20年間に,細胞膜電位についての知見は,飛躍的な進歩をとげた。その直接の動機となつたのは,Hodgkin & Huxley(1945)9)及びCurtis & Cole(1942)2)による,細胞内電極法の創案である。それまでは,膜電位の測定には,いつも,幾つかの困難が伴つていた。例えば,細胞外液が,測定すべき損傷電位を短絡して,その絶対値を不正確にしてしまうことは,その1つである。細胞内電極法は,この様な困難をとり除いた。その結果,膜電位についての知識の量は,今までと比較にならない程急速に増大していつた。それまで存在していた興奮についての理論は,Nernstにはじまる刺激理論と,Bernsteinの膜説とが主なものであつた。しかし,これらの説では,新しく見出された豊富な実験事実を満足に説明することができなかつた。これらの事実を説明するために提出された理論のうち,最も優れたものは,Hodgkin & Katz(1949)11),及びHodgkin & Huxley(1952)10),によつて発表された理論である。この理論は,活動電位の発生にナトリウムイオンが重要であることを強調するので,一般にSodium theoryと呼ばれ,イカの巨大線維膜に発生する興奮現象について,定量的な説明を与える。
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