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綜説
摂食の中枢機構
著者: 大村裕1 国吉真2
所属機関: 1金沢大学医学部生理学教室 2鹿児島大学医学部生理学教室
ページ範囲:P.168 - P.190
文献購入ページに移動生体はその生命を維持するために外部からエネルギー源となるものを摂取しなければならない。動物はそれを摂食という一種の情動反応によつて行なつている。したがつて摂食の調節は他のあらゆる生物学的平衡関係の根本をなすものである。摂食反応をおこす原動力となる飢餓感の発現に関しては古くからいろいろ説明されてきたが,大約して次の三通りにわけられる。(ⅰ)まず飢餓感の発現が末梢性に起因するという古い説で,空腹時に胃が収縮し胃粘膜中の飢餓神経を刺激するという考えである。(ⅱ)他方中枢性起因,すなわち血中の飢餓状態に感受性を有する飢餓中枢の存在を信じた昔の学者もある。(ⅲ)また飢餓感の発現が循環血の状態および全身各器管からくる求心性刺激による総合的なものとする考えもある。以上の3説については次に詳述するが,近年多くの研究結果から(ⅱ)と(ⅲ)を総合した説が有力となつてきた。すなわち食物摂取は,中枢神経とくに視床下部によつて調節された視床下部は血糖濃度や血中代謝産物,および身体の特定器管(胃など)から送られる求心性のインパルスによつて反応することが明らかとなつたのである。
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