文献詳細
文献概要
特集 生体膜その2
抑制性シナプス下膜のイオン透過性
著者: 伊藤正男1
所属機関: 1東京大学医学部生理学教室
ページ範囲:P.224 - P.232
文献購入ページに移動 生物膜を通して水やイオンが移動しその難易に種々の程度が存在する事実は,膜には何らかの形で孔と称すべきものが存在し,イオンの大きさとこの孔の大きさの相対関係がイオン透過の選択性を支配するのではないかとの考えに導く。この様な孔の大きさを測る方法として(1)直接物差で測るか,(2)いろいろな大きさのイオンを通してみるか(3)水の移動に対する摩擦抵抗を測るかの3つをあげることができる。第1の方法は電子顕微鏡によつて可能となるべきであるが,予想される孔の大きさは数オングストロームであり電子顕微鏡の解像力の限界ぎりぎりのところにあるため,まだだれも成功していない。第2の方法に対してSolomonはこまかな段階をもつイオン系列が得難いとして第3の方法を用い,赤血球の孔の測定を行なつて直径3.4〜4.2オングストロームの値を得ている1)。
しかしながら,ここにとりあげる抑制性のシナプス後膜は,特殊な陰イオン透過性を有しており,陰イオンについては段階的に大きさの異なる多数のイオン系列が得られるため第2の方法が有効に適用しうるのである。またこの透過性を検するのにイオンを神経細胞内に電気泳動的に注入し,抑制性シナプス後電位(以下IPSPと略称する)の変化をしらべるという方法が用いられる点ユニークな存在である。
しかしながら,ここにとりあげる抑制性のシナプス後膜は,特殊な陰イオン透過性を有しており,陰イオンについては段階的に大きさの異なる多数のイオン系列が得られるため第2の方法が有効に適用しうるのである。またこの透過性を検するのにイオンを神経細胞内に電気泳動的に注入し,抑制性シナプス後電位(以下IPSPと略称する)の変化をしらべるという方法が用いられる点ユニークな存在である。
掲載誌情報