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S電位—そのoriginと色光感曲線
著者: 御手洗玄洋1
所属機関: 1名古屋大学環境医学研究所
ページ範囲:P.294 - P.302
文献購入ページに移動 S電位は1953年Svaetichin14)によつてはじめて発見された特殊な網膜内の電位である。即ち,魚の遊離網膜の視細胞側から微小電極を入れていくと,ある深さで30〜40mVの急激な電位降下がおこり,その時,光刺激に応じて出る大きな負の電位変化として記録された。この反応は−60mVにも達し,光刺激をつづける間,ほぼ一定の振幅を保つDC-potentialで,また刺激強度に応じて増減するいわゆるgraded potentialであつた。急激な電位降下は細胞膜電位と考えられるのに,刺激に対して過分極を示しかつgradedな電位変化は神経細胞のものとは考えられず,むしろ視細胞の光化学変化に対応すると想像されたのでSvaetichinは,この電位を,1コの錐状体から誘導したものと信じcone potentialとして報告した。ついで御手洗,矢ケ崎9)により追試され,暗順応を示す事から,錐状体のみでなく桿状体の性質もある事が指摘された。しかし,後に富田18)が電極の刺入距離を測つて,反応は視細胞層よりもつと中枢側から誘導されている事を明らかにして以来,その正確な所在の決定が望まれる様になつた。
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