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綜合医学賞応募論文
白血球,骨髄組織の脂質の消長に関する研究—脂肪髄成立機序に関する一考察
著者: 中尾恿1 長尾重治1
所属機関: 1関東逓信病院内科
ページ範囲:P.303 - P.310
文献購入ページに移動 緒言
再生不良性貧血,抗癌剤による癌の化学療法,あるいは電離放射線曝射などによつて,骨髄は実質細胞をうしない,脂肪化して低形成ないし無形成骨髄を呈するにいたる。ことに再生不良性貧血の大部分は骨髄がまつたく脂肪化するが,なお根治の方法は確立されていない。従来,脂肪髄に関してはもつぱら病理組織学的な分類や検討がなされており,反面,生化学的手法によつた業績に乏しい。したがつて骨髄脂肪化の機序を動的に把握すべき未開発の分野が現状ではなお残されている。
かかる観点から私どもは,まず実験的に脂肪髄を作製して脂質の消長を追つてみた。この成績では中性脂肪と燐脂質の特異な変動が観察された。一方,無形成骨髄における脂質の蓄積は,脂質利用の低下が一因とも考えられるので,白血球の脂肪酸酸化能や白血球への脂肪酸の取り入れを検討し,脂肪酸をめぐつて脂肪髄成立機序を模式的に考察してみた。さらに白血球,骨髄組織の燐脂質代謝とそれに及ぼす体液性因子についても検討を加え,脂肪髄成立機序の上からphosphatidin酸とP-inositideとの関連性に重要な意義を付するにいたつた。
再生不良性貧血,抗癌剤による癌の化学療法,あるいは電離放射線曝射などによつて,骨髄は実質細胞をうしない,脂肪化して低形成ないし無形成骨髄を呈するにいたる。ことに再生不良性貧血の大部分は骨髄がまつたく脂肪化するが,なお根治の方法は確立されていない。従来,脂肪髄に関してはもつぱら病理組織学的な分類や検討がなされており,反面,生化学的手法によつた業績に乏しい。したがつて骨髄脂肪化の機序を動的に把握すべき未開発の分野が現状ではなお残されている。
かかる観点から私どもは,まず実験的に脂肪髄を作製して脂質の消長を追つてみた。この成績では中性脂肪と燐脂質の特異な変動が観察された。一方,無形成骨髄における脂質の蓄積は,脂質利用の低下が一因とも考えられるので,白血球の脂肪酸酸化能や白血球への脂肪酸の取り入れを検討し,脂肪酸をめぐつて脂肪髄成立機序を模式的に考察してみた。さらに白血球,骨髄組織の燐脂質代謝とそれに及ぼす体液性因子についても検討を加え,脂肪髄成立機序の上からphosphatidin酸とP-inositideとの関連性に重要な意義を付するにいたつた。
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