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文献詳細

雑誌文献

生体の科学16巻2号

1965年04月発行

文献概要

主題 Polypeptide

論述 核酸に関与しないPolypeptideの合成

著者: 伊藤英治1

所属機関: 1北海道大学理学部化学教室

ページ範囲:P.77 - P.83

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 今日,多数のポリペプチドが生物中に発見されておりそのほとんどすべてが固有の生理的役割や他の生物に対する生理作用をもつている。蛋白質の大きな分子がS-RNAやリボゾームの関与する機構により合成されることが知られ,その各段階の詳細が研究されている。一方で,最も単純なペプチド,グルタチオンが2つの特異的酵素により核酸の関与しない反応で合成されることが知られ,その反応機作がよく調べられている。そこで,中間的な大きさと複雑さをもつたポリペプチドの生合成過程が,蛋白合成のようなRNA依存の反応であるか,グルタチオンのようにアミノ酸が順次添加される反応であるかが興味ある問題となる。この問題の研究は,酵素レベルの研究が緒についた段階にあり,わからないことばかりである反面,近い将来の発展が期待されるので,ここでいくつかの問題点に触れてみたい。
 ポリペプチド合成の研究が困難な理由は,一般に,合成された少量のポリペプチドが,はるかに多量の,しかも同じアミノ酸を含んだ蛋白質により混同され,結果があいまいになることである。この困難を避けることのできるもの,たとえばペプチド抗生物質などが特に好ましい研究材料となる。抗生物質は蛋白質に含まれていない特殊なアミノ酸を含むことが多く,適当な条件でかなり多量に合成され,抗菌作用により感度よく定量される。研究を進める鍵として,各研究者はそれぞれ問題のペプチドを分離する簡便な方法を考案している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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